【NEWS!!】市民セクターの国際連帯で「遺伝子操作食品のないアジア」をつくる 〜GMOフリーゾーン運動20周年記念アジア大会&アジアフォーラム〜

NEWS!!

GMOのない世界を広げるためにアジアから連帯を

202637日にGMOフリーゾーン運動20周年記念アジア大会が、翌38日にはアジアフォーラムが日本教育館(東京都千代田区)で開催されました。OKシードプロジェクトは、実行委員会の一員として企画段階から参画してきました。

「GMOフリーゾーン運動」とは、GMO(遺伝子操作作物)の作付けを拒否する地域(フリーゾーン)を拡げる取り組みのことで、1980年代にイタリアから始まりました。日本でも2005年から毎年「GMOフリーゾーン運動全国交流会」が開催されてきました。

今回は20回目の記念すべき大会であるため、アジアの各地でGMO反対運動に取り組んでいる市民団体のメンバーを招聘して、「GMOのない世界を広げるためにアジアから連帯を」をテーマに各国での取り組みの現状と課題の共有と、GMOフリーゾーンをアジア全域へと拡げるために何ができるのかを検討しました。

今回来日した3名の海外ゲストの報告を中心にレポートします。

韓国におけるGMO反対運動の流れ〜ここ10年の「GMO反対全国行動」の活動を中心に イ・セウ(利世雨)さん(韓国:GMO反対全国行動)

 「GMO反対全国行動」は、2016年に韓国内の市民・農民・生活協同組合・教育団体など44団体が集まって結成された運動団体です。GM食品完全表示制度やGMOフリー学校給食、GM作物の商業栽培阻止などのほか、最近はゲノム編集を含む新しい遺伝子操作技術に対する規制緩和法案の成立阻止運動に取り組んでいます。

GMO米開発事業団の解体

韓国ではコメだけは高い自給率を誇っていましたが、政府が主導してGMコメの開発が行われることになりました。主食のコメのGMO化に対して国民の怒りは大きく、農民と消費者団体が連帯して反対しました。私も、試験栽培をする栽培地の前にテントを張って、200日以上も反対運動をしました。

その結果、GMO米事業団は解体され、農民と政府が共同で農生命委員会が発足されました。その後、韓国ではGMOの開発・栽培は、許可なく行うことができなくなりました。

GMO汚染の除去へ

農生命委員会の発足以降、韓国内でのGMO栽培は行われていませんが、GMO輸入問題が残っています。

2017年の“ナタネ祭り”用に、観賞用としてGMナタネの種子が大量に輸入され、地域が汚染されました。それに対して抜き取り活動を行いました。その後も、GM綿花の汚染事故がありましたが、政府にも管理義務としてモニタリングを行い、市民団体とも毎年、対策を話し合っています。

また、未承認のGMズッキーニが長年流通していたことが明らかになりました。政府の検疫管理が杜撰だったためです。栽培農家への補償対策や、検疫体制の根本的な対策を要求しました。

GMO完全表示制

韓国でのGM食品表示は、日本と同じように醤油・味噌・食用油などにはGMOの表示義務はありませんでした。しかし、市民はEUと同等の表示制度を求めて、20万筆の署名を集め、声を大統領に届け続けてきました。その間、民主系の大統領候補は、GM完全表示制度を公約に掲げていました。イ・ジェミョン氏が大統領となり、202512月にGMO完全表示制法案が議会を通過し、今年2月には法制化が正式に決定しました。

2026年は醤油の表示が、そして2027年には油、糖類の表示が義務化される予定です。

ゲノム編集食品の表示制度を求める

今後の課題は、ゲノム編集食品の問題です。ゲノム編集など新しい育種技術については、市民はまだよく知りません。毎年、モンサント・バイエルに対してGMO反対市民行進を行ってきましたが、この運動を通してゲノム編集も国民的問題にしていきたいと考えています。

日本、台湾、そしてヨーロッパのみなさんといっしょに、取り組んで行きたいと思います。

 

台湾の遺伝子組換え食品をめぐる市民運動〜1997年から2026年にかけた制度化の過程と新興技術への対応 チェン・ジュウェイさん(台湾:台湾無基改推進連盟)

台湾ではGM作物の栽培には政府の許可が必要ですが、現時点では許可はゼロ。つまり商業栽培は、認められていません。

一方で、GMO食品原料に関しては、健康リスク審査などが必要ですが、現在、大豆、トウモロコシ、綿実、ナタネ、テンサイなど173項目が許可されています。

また、ゲノム編集食品関しては、トウモロコシ、テンサイ、大豆、ジャガイモ、パパイヤなどの輸入申請が2017年から出されていますが、現時点では許可が下りていません。ゲノム編集パパイヤは台湾の大学で開発されたものですが、台湾国内では栽培が許可されていないため米国で栽培されたものを輸入しようとしていますが、許可が下りていないのです。

輸入に依存する大豆

大豆の精算量は低く、自給率はわずか0.2%です。

輸入大豆は食用油、飼料、加工食品原料として使用されています。2025年の輸入量は274万トンで、非GM大豆は9.7万トンです。

台湾での反GMO運動は、1997年に生協団体である主婦連盟がはじめました。非GM大豆を自主輸入して、非GM豆腐を製造・販売したのです。

2008年には「台湾非遺伝子組み換え推進連盟」が設立されました。また、GMOフリーゾーンも始まり、2011年には農地にGMOフリーゾーンの看板を掲げました。

消費者とのコミュニケーション戦略として、パンフレットの制作や、ドキュメンタリー映画の上映、講演会、関連書籍の出版などを手掛けています。

学校給食を非GMに

2014年の地方選挙を機に、保護者たちが「非GM学教給食」の提唱活動を開始しました。候補者もそれを公約に掲げ、その結果、2015年には「学校給食法」が改正されて、GM食材の使用が禁止されました。

しかし、2016年以降、米国からは、輸入GMOが学校給食に使えないのは貿易障壁であると圧力をかけられています。

食品安全衛生管理法改正と表示制度

GM食品の表示義務については、2015年から2016年にかけて段階的に改正されました。表示と検査登録、トレーサビリティが行われています。

原料にGMOが使用されている場合は表示が必要で、食用油、醤油、コーンスターチなどにも表示義務があります。また、レストランなどでもメニューに表示をしなければなりません。

新しい局面へ

ボランティアの育成や、タネの保存、自家採種活動にも取り組んでいます。また、養鶏でも非GM飼料を用いるように、活動を拡げています。

一方で、ゲノム編集という新しい問題もあります。
政策はゲノム編集のことを「新興精密育種」という呼称を用いて、従来の育種との類似性を強調しています。そのため、消費者の認知は低く、なかにはすばらしい技術だと誤解をしている消費者もいます。

2020年に行われた意識調査では、ゲノム編集食品に懸念を持つ市民は26%で、GMOの半分程度しかありません。

GMOについては表示制度が実現し、給食でもGMOが禁止されたことで市民は安心し、かえって関心が低下しています。今後は、食に関する認知度をさらに高めることが課題です。

草の根から立ち上がる〜MASIPAGメットワークとフィリピン農民のGMO反対運動 カイル・バーバーさん(フィリピン:MASIPAG アシスタントコーディネーター)

MASIPAG(マジパグ)の活動は大地からの活動であり、農民自身が取り組んできた活動です。

「食を制するものがすべてを制する」といわれますが、フィリピンでは一握りの巨大アグリビジネス企業に、食と農の決定権が集中して行くという状況が進んでいます。地元エリート層はこのような企業を支援していて、権力の集中が、私たちが何を食べ、何を育てるのかを決めている状況にあります。

土地やタネから遺伝資源まで、かつては共有財産だったもの、農民が何世代にもわたって培ってきたものが、いまは少数の権力者によって私有化され、支配されています

工業的農業は農の営みを単純化してしまいますが、このような過度の単純化された農業では、単一栽培が採用され、大量の化学肥料や農薬、GMOが使われます。そして、複雑な生態系や農民の知識、地域固有の状況にた農法が無視されてしまいます。その結果、土壌や水の劣化、生物多様性の劣化を招いてしまうのです。

フィリピンは自然資源に恵まれた国ですが、農村ではいまも貧困に直面しています。農民の10人に7人は土地を持たず、3,780万人は安定した食料入手が困難でこれはアジア1位です。また、世界最大のコメ輸入国であり、世界でもっとも災害に脆弱な国でもあります。

フィリピンにおける「緑の革命」

フィリピンの農村がいまだに貧困から抜け出せない理由の1つが、「緑の革命」による影響です。

緑の革命は、国際稲研究所(IRRI)と国家プロジェクト「マサガナ99」を通じて推奨され、化学資材パッケージと高収量品種が導入されました。伝統的な在来品種や農民が実践してきた地域に根ざした農業は、トップダウンの政策に取って代わられました。農民が持っていた知識やコメの品種は、貸し付けと、化学物質と、外部者の管理というテクノロジーに置き換えられ、多くの農民が借金を抱え、外部資材に依存し、生態系の損失を招いてしまったのです。

農民のボトムアップから生まれたMASIPAG

1985年に農民、科学者、市民団体が参加して「ビガス会議」が開催されました。緑の革命の負の側面を問題提起して、フィリピンの農民が直面した問題を正面から突きつけたのです。

ビガス会議を契機に、真の人びとのプロジェクトとしてMASIPAGが発足しました。MASIPAGは、ボトムアップの農村開発から生まれた農民主体の運動です。MASIPAGは持続可能で調和のとれた、人に優しい、公正な社会を目指し、資源の少ない農民の生活の質の向上を目標としています。

MASIPAGは農民が主導するネットワークで、農民自身が課題を決めて、それを科学者が支援します。NGOは農民と科学者をつなぎ、組織化、リーダーの育成を図ることを担っています。「農民について調査する」研究ではなく、農民とともに農民が主導する研究であり、農民が農民自身の決定権を取り戻すエンパワーメントのための活動なのです。
 

科学を民主化する「農民科学」の追求

農民は伝統に固執するのではなく、観察し、実験し、イノベーションしています。地域の人びとが学び、共有することを大切にしています。外部の資金に依存し、企業が決定権を持つ研究とは違うのです。

このような民主的な科学を追究した結果、「農民科学」が生まれました。人びとによる、人びとのための科学です。決定権を農民に取り戻し、持続可能な開発を実現するものです。

MASIPAGの活動は、フィリピンのほぼすべての島に広がっています。何を食べ、何を育てるのかを決めるのは企業や市場マーケットではなく、農民や消費者である、という食料主権を確立していきたいと考えています。

MASIPAGでは、食べものを育てるさまざまな資源を、自分たちの手に取り戻すことからはじめています。私たちは、アグロエコロジーに適した品種を育てています。だからGMOはいらないのです。

干ばつに強い品種、塩害に強い品種、暴風雨に強い品種、害虫に強い品種などが、フィリピンの島々に存在しています。多様なタネが、気候変動への保険となっています。農民とそれを支援する科学者とともに技術を高めているのです。

ゴールデンライス裁判

2024年4月、フィリピンの裁判所がゴールデンライスに関する画期的な判決を出しました。

憲法が保障する、自然と調和しバランスの取れた健全な生態系のなかで生きる権利を守るための司法救済手続きです。この権利を守るために、裁判所はGMナスとGMイネの栽培停止を命じました。

この裁判で私たちは、遺伝子の汚染は制御不可能であると訴えました。受粉やタネの交配、輸送などで汚染は広がるのです。GMOの混入や汚染による環境汚染は、一度起これば取り返しがつきません。

私たちは、GMOは生態系に安全とした政府の責任を追及しました。その結果、裁判所は「予防原則」を採用することになりました。安全性を証明する義務はGMOを推進する側にあって、危険にさらされる農民や地域の人びとではないという判決です。科学的に未知でありリスクの高い技術よりも、生命と環境が優先されなければなりません。遺伝子操作技術は技術の確立が充分ではなく、生物多様性や農民の収入に危機的な影響を与える危険性があるのです。

ゴールデンライスは、IRRIとフィリピン農業研究所が開発したもので、ビタミンAの元になる物質を多く含みます。そのため、ビタミンA欠乏症の防止に役立つとして開発されました。しかし、ゴールデンライスで摂取できるビタミンAは、地域で採れる野菜と比べるとわずかなものです。栄養不足や飢餓、食糧不足を解決するためには、農地があることが重要です。それは農民や科学者、市民幅広く連携することで実現できるものです。食糧の安定的供給は、企業がもたらしてくれるものでないのです。

原野好正(OKシードプロジェクト副事務局長)

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