【NEWS!!】自治体との関係を深めるゲノム編集魚ベンチャー企業「リージョナルフィッシュ」

NEWS!!

南伊勢町との「水産物の種苗開発」とは?

2025年9月5日付の伊勢新聞に「水産物の品種改良で連携 南伊勢町とリージョナルフィッシュ協定 三重」という記事が掲載されました。

記事によると、三重県度会郡南伊勢町は、町の産業活性化対策の一環としてリージョナルフィッシュ社と「水産物の種苗開発に関する連携協定」を締結したとあり、町の種苗センターを活用してアワビや二枚貝の品種改良に取り組むとあります。また。リージョナルフィッシュ社が三重県内の自治体とこのような協定を結ぶのは初めてのことだといいます。しかし、この「種苗開発」がどのようなものなのか、具体的な記述はありません。記事では、リージョナルフィッシュ社について「同社は、遺伝子を効率よく改変する「ゲノム編集」の技術を使った最先端の品種改良の研究・開発などに取り組んでいて、これまで肉付きのいいマダイや成長の早いトラフグなどを開発している」と紹介していることから、育種(品種改良)にゲノム編集技術が用いられるのではないかとの懸念も生じます。

ネットで関連情報を検索しましたが、伊勢新聞の記事以外はヒットしません。南伊勢町の公式サイトにも発表はなく、リージョナルフィッシュ社のサイトにも「三重県南伊勢町と『水産物の種苗開発に関する連携協定』を締結しました。」とたった1行のお知らせがあるだけです。

伊勢新聞は三重県津市に本社を置く新聞社で、三重県全域で日刊紙10万部を発行していますが、この記事を目にする読者は極めて少ないのではないでしょうか。つまり、ゲノム編集食品に関心のある市民の多くがこの事実を知らないまま、「水産物の種苗開発」が進められることになります。

そしてもう1つの疑問は、南伊勢町の町議会や行政関係者、漁業関係者の方々は、この連携協定の詳しい内容をどの程度知っていたのでしょうか。

南伊勢町ではゲノム編集技術は用いない

日本消費者連盟と遺伝子組み換え食品いらない!キャンペーンは20255月29日付で、南伊勢町にリージョナルフィッシュ社との連携協定について質問状を送付しました。

質問の内容は、①水産物の種苗開発に関する連携協定の具体的な内容について、②協定を締結するにあたって町議会などでどのような議論が行われたのか。また、漁協や漁業関係者との意見交換は行ったのか、③具体的にどのような技術を用いて品種改良を行うのか、ゲノム編集技術を用いる可能性があるのか、④町はゲノム編集技術に関する問題点を議論しているのか、というものです。

南伊勢町からは回答期限内に、次のような回答が届きました。要約すると下記のようになります。

  • 連携協定の目的は、南伊勢町の産業・経済の活性化で、水産物の種苗開発及び育成、生産物の流通、生産・流通活動における雇用促進、生産地・生産物等の認知度向上等に関して取り組んでいくこと。
  • 町議会議員、町長以下執行部(副町長・教育長・各課長)が参加した「全員協議会」において、町から協定内容について説明している。
  • 漁協に対しても、本協定を締結する前に担当課から協定の内容やリージョナルフィッシュ株式会社について説明しており、漁協も陸上養殖を推進していく方向にある。
  • アコヤ、マガキ、アワビについて、選抜育種技術など従来の品種改良に取り組んでおり、ゲノム編集技術を用いた品種改良は予定していない。
  • 連携協定について、当町として十分に話し合い、またリージョナルフィッシュ株式会社へ質疑を重ね、質問状で指摘されている内容についても理解していて、リージョナルフィッシュ株式会社がゲノム編集技術を活用した品種改良に取り組んできたことは承知している。また、町から町議会や漁協に説明する際にも、リージョナルフィッシュ株式会社がゲノム編集技術を用いた品種改良に取り組んできた企業であることを説明している。

南伊勢町での育種では、ゲノム編集技術を用いない予定であることは確認が取れました。育種の対象はアコヤガイ、マガキ、アワビで、「選抜育種技術」で品種改良をするようです。アコヤガイとは、真珠をつくる母貝として用いられる二枚貝で、南伊勢町を含む伊勢志摩地域は日本でも有数のアコヤガイ養殖地の1つです。また、町議会関係者や漁協に対して、連携協定の内容やリージョナルフィッシュ社についても十分に説明しているとのことです。

この回答で明らかになったことは、漁協としても陸上養殖の推進を検討していることです。育種を陸上の施設で行うことは珍しくありませんが、アコヤガイやマガキ、アワビの養殖は海面養殖が主流です。海面養殖は低コストで、大量の養殖が可能です。しかし、台風や赤潮などによる被害に加え、近年は海水温上昇による生育不良など、問題点があることも事実です。この問題解決の方法の1つとして、陸上養殖があります。しかし、施設建設には費用がかかり、水質管理には高度な技術が必要なだけでなく、莫大なエネルギーコストもかかります。つまり、陸上養殖の導入が、必ずしも海面養殖の問題解決となるかどうかは未知数なのです。

南伊勢町や同町の漁業関係者が、今度、どのような選択をするのか、注視していきたいと思います。

リージョナルフィッシュ社と自治体とのつながり

年月 自治体 事柄
2021年12月 京都府宮津市 ふるさと納税返礼品にゲノム編集トラフグ指定
2022年4月 島根県 次世代育種推進連携協定
2023年10月 福井県など 産産事業共同研究協定
2024年3月 鹿児島県阿久根市 栽培漁業センターを無償譲渡
2024年9月 三重県南伊勢町 水産物種苗開発連携協定
2025年7月 福井県など 高水温耐性マサバを開発
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