OKシードマークを付ける上で必要なこと

 ゲノム編集食品に対して、政府は2019年10月に食品表示義務を課せないとして、表示のない流通を認めてしまいました。それでは食品がゲノム編集であるかどうか、もう知る方法はないのか、というとそうではありません。ゲノム編集された種苗や食品に表示義務がないとしても、ゲノム編集されていない場合に「ゲノム編集でない」という表示をすることは可能だからです。
 ただし、「ゲノム編集でない」という表示をするためには、その根拠となる情報が必要となります。つまり、あなたが表示したいと思っている種苗や食品が本当に「ゲノム編集でない」ことが確認できる書類が必要ということになります。

 難しそうと思われるかもしれませんが、必ずしもそうではありません。
 たとえば、ホームセンターで買ってきたタネには、タネの生産地やどんな品種か書かれています。ゲノム編集であるかないは表示義務がないのですが、その種苗会社に照会することで、そのタネがどんな品種であるか、ゲノム編集されているかどうかは、多くの場合、確認が可能です。確認できた場合、そのタネの袋(またはその写真、コピー)、領収書がその根拠資料となります。

 在来種のタネをずっと自家採種されてきた方の場合は、そのタネをどこから手に入れ、どこで栽培しているかという栽培記録をつけることで、そのタネがゲノム編集されたものではない根拠とすることができます(栽培記録の付け方はこのページ末尾「タネの履歴記録」を付けましょう!をご覧ください)。

 タネの根拠書類があれば当然、その収穫物もまたゲノム編集でない、と表示することが可能になりますし、そうしたものを原料に作られた食品(加工食品)もまたゲノム編集でない、と表示することが可能になります。

 また、もし有機認証や特別栽培を実践される方で、その認証のための書類を作られている方は、その書類をそのまま根拠資料として使うことができます(OKシードマークを付ける上で、有機栽培や特別栽培であるか否かは関係ありませんので、有機栽培や特別栽培でなくても根拠資料があればOKシードマークは付けることができます)。

以下、根拠資料の例です。

野菜・豆類・イモ類などの種苗の根拠資料

  • 元種の品種名の記載がある包装(袋、ラベル等)の現物又は写し(コピー・写真等)、品種名の入った証票、領収書類等。
  • 元種の来歴(入手先、入手経路等)を示す書類(伝票類、記録等)の現物又は写し(コピー・写真等)
  • 元種による栽培から採種までの栽培行程において、他の品種と混ざらないようにした方法(隔離方法)、採種年月日と栽培場所(圃場等)を示す書類(記録等)
  • 採種から販売時点までの調整・保管の行程、及び移動(流通、販売)過程において、他の品種と混ざらないようにした方法を含む管理に関する書類(記録等)

稲(イネ)、麦類、大豆の種苗の根拠資料

 稲(イネ)、麦類、大豆の根拠資料は、上述の野菜、豆類等と同じですが、公的機関が関わることが多いので、次のような書類を根拠資料として使えます。

  • 地方自治体などの公的機関、JA等から提供される品種証明付きの原種から作られた種籾の証票など品種証明関係書類、又は種子の品種証明書類等

「タネの履歴記録」を付けましょう!

 「ゲノム編集でない」種苗であることを示す根拠資料では、上述のように、品種名が明らかであること、そのために来歴(入手先・入手経路等)が明確であり、さらにその種苗を「誰が」「どこで」「いつ」、「どのように」栽培から販売までの過程で他の品種と混ざらないように管理したかを示す資料が必要です。そのためには、記録を付けることが有効です。  ①品種名(商品名を含む)、②来歴(入手先、入手経路等)、③栽培から採種までの栽培行程において、他の品種と混ざらないようにした方法(隔離方法)、④採種年月日と栽培場所(圃場等)などを一覧表にした「種苗の品種名と履歴等の記録」を付けましょう。 これは大変でも、「品種毎」に一枚ずつ。できたら、それらの根拠資料が一元管理できるような一覧表にすることを推奨します。その記録フォーマットを作りました(Excelファイル)。ダウンロードして、記録を残しましょう(ファイルの中に入力の仕方の説明があります)。
様式 種子(たね)の記録票(簡易版).xlsx ダウンロード

在来種を自家採種した時の記録は?

 在来種を自家採種するような場合は、どうしたらよいでしょうか。  これらの種苗についても、「ゲノム編集でない」と表示する際に根拠として基本的に重要なのは、「品種名」が明らかであり、ゲノム編集技術応用作物品種ではないことです。
ア.在来種を自家採種し続けてきた場合:上述のように①品種名、②来歴について詳しく記録し、在来種であること、地域(地域名を記録)に伝えられてきた作目・品種であることを記録する。また、形質などの品種的な特徴も記載しておく。
イ.作目(種類)だけで、品種名がわからない場合:①品種名は不明であることを記載し、②来歴について詳しく記録し、来歴により、ゲノム編集技術応用作物ではないことを記載する。  なお、作目が遺伝子組換え作物(外国産)のある9品目(大豆、とうもろこし、ばれいしょ、なたね、綿実、アルファルファ、てん菜、パパイヤ、からしな)の場合は、遺伝子組み換えの品種ではないことを確認する。

その記録フォーマットを作りました(上記と同じExcelファイルです)。ダウンロードして、記録を残しましょう(ファイルの中に入力の仕方の説明があります)。
様式 種子(たね)の記録票(簡易版).xlsx ダウンロード

コンピューターは持っていない? でもスマホをお持ちなのであれば大丈夫です。最近のスマホではいつ写真を撮ったか、写真を撮った時にどこで撮ったかを示すGPS情報を写真にいっしょに入れることができます。
・ タネを撒く前にスマホでタネの写真を撮りましょう。
・ タネを撒くところをスマホで写真を撮りましょう。
・ 収穫するところ、乾燥するところなどをスマホで写真を撮りましょう。
撮った写真は何のタネの写真かメモをした上で、しっかり保存しましょう。

これらをOKシードマークを使う上で重要な根拠資料とすることができます。

地域に伝わる在来種を大事にしましょう!

 各地に昔からつくられてきた在来種があります。同じような作目でも呼び名の異なるものもあれば、とりたてて品種名のないものもあります。多様な在来種を守り伝えるためにも、記録を付けましょう。在来種として特に品種名のないものには、地域名や農場名を冠して記録しておきましょう。  在来種だけでなく、一般品種についても、自家採種をし続けると、その土地の気候風土や畑になじむものになり、同じ品種でも微妙に違いのみられることがあります。地域名や農場名を冠するのもそのためでもあります。自家採種の行程についての「記録」を保持することを通して、多様な在来種を守り、また、地域や圃場に合った多様な品種をつくり出していきましょう。

信頼されるOKシードマークにしましょう!

 OKシードマークを、何よりも農民・市民消費者に広く信頼されるマークにしていきましょう。そのために、「ゲノム編集でない」ことの根拠となる資料をいつでも提示できるようにマーク表示責任者が保持することは大切なことです。言葉で書かれると煩雑に思えますが、実際上、農家自らがどの「品種」を使うか、知らない農家はありません。ちょっとの一手間で、根拠資料となるはずです。 地域の食と農の文化に根差す在来種などの伝統を伝える多様な品種も積極的に掘り起こし、守りつなげていきましょう。

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