【Voice!】2025年8月18日:「培養ウナギ」でウナギを絶滅の危機から救えるの?

お知らせ

今回の「Voice!」では、「ウナギ」をテーマに、小学校4年生のお子さんのお父さんにお話しを伺いました。

今年も夏のスーパー店頭には「土用の鰻」の文字が並んでいて、それを見た息子が「ぼくはウナギ、もう食べないって決めてるからね!」と言い出したんです。理由をきくと、「ウナギは絶滅危惧種だから食べちゃダメなんだよ」と。

実は、同じ理由からそもそも我が家は基本的にウナギを食べませんが、付き合いでたまに食べることもありました。息子はテレビ番組でウナギの絶滅の危機について知ったそうです。

ー 絶滅危惧種というけれど、店頭にはウナギがたくさん売られていますよね。そして夏の土用が近づくと、ウナギ食べていいの?ダメなの?という話題が毎年出てきます。ちなみに私も同じ理由で、ウナギは食べません。

「絶滅危惧種なのに、なんでみんなウナギ食べるの? なんで食べてもいいってなってるの?」この調子で質問攻めになりましたが、勉強不足で私も答えられませんでした。そこで親子でウナギについて調べました。

ー それは・・・夏休みの自由研究ですね!

そうなんです、本当に自由研究のテーマにもってこいでした。

・日本に生息する二ホンウナギは環境省や国際自然保護連合(IUCN)で絶滅危惧種に区分されている。
・ニホンウナギだけでなく、ヨーロッパウナギやアメリカウナギも同様に、世界中でウナギは絶滅の危機が危惧されている。
・ニホンウナギは天然ウナギも養殖ウナギも、マリアナ諸島西方の産卵場に集まって卵を生み、稚魚のシラスウナギが日本に戻ってきて成長する。養殖のウナギもこの稚魚を捕らえて養殖場で育てるため、もともとは野生の個体である。
・現在国内で養殖されているウナギのうち、半分以上が密漁や不適切な流通を経ていると考えられている。
・完全養殖の技術はコストが高くて商業化が難しく、天然のシラスウナギの漁獲量を抑制することは困難であると考えられている。
・養殖に用いるシラスウナギの量が制限されているものの、上限量が過剰な値で設定されているので消費を削減する効果は期待できない。

など、初めて知ることばかりで勉強になりました。また、食文化や伝統、食料システムや過剰消費について、そして長く議論されているクジラやマグロについても同様に考えさせられました。

ー絶滅危惧種のウナギを食べていいかどうかという疑問に、結論は出たんですか?

明確に、「食べちゃダメですよ」とか、逆に「食べてOK」とかって、そういう答えは見つかりませんでした。でも、消費の速度が生物が殖える速度を上回っているから、ウナギが絶滅の危機にあるということは事実です。

それで、息子が出した結論は「消費を減らさないといけない」というものでした。環境汚染などもウナギが減っている理由のひとつではあるようですが、やはり過剰な消費が問題です。これを削減するということは、即効性を期待できるようです。

今年の秋に開催されるワシントン条約COP(締約国会議)では、ニホンウナギを含むすべてのウナギ属を規制対象にする方向で議論が進んでいるそうですね。
ところで、ウナギといえば「培養ウナギ」ってご存じですか?イスラエルの細胞培養魚肉を手がけるスタートアップ企業が、「培養ウナギ」で日本進出を狙っているそうです。

「ウナギを絶滅の危機から救う!」などの見出しで、いくつか記事を読みました。正直、「培養ウナギ」がウナギの絶滅危機の解決策になるとは思えませんし、こうして培養細胞企業から日本食が狙われているのではという危機感の方が大きいです。

そして少し驚いたというか意外だったのが、どの記事も好意的に書かれていたことです。新しい食の技術について、安全や倫理的な観点から多くのリスクがあると思いますが、私が読んだ限り、そういう点にはあまり触れられていませんでした。

ヨーロッパウナギやニホンウナギから採取した細胞を培養液に浸して増殖させ、塊に増殖して、実際のウナギに近い色や形、味付けを整えて完成させるという、この「培養ウナギ」。
食べてみたいと思いますか?

私も息子に同じことを聞いてみましたが、苦い顔をして首を横に振りましたね。
「ウナギを絶滅から救えるならいいことかなと思ったけど、これは食べたくないかな」と。私も同じ考えだと伝えました。そして、これで本当にウナギを絶滅の危機から救えるのだろうか?という疑問や違和感について二人であれこれ話しました。

ー 「未来のため」、「サスティナブルだ」と大義名分を掲げて、ゲノム編集魚も日本で流通していますが、生物倫理的にも問題があることが指摘されています。このイスラエルの企業がなぜ「ウナギ」なのかというと、絶滅危惧種または絶滅寸前の魚種だけをターゲットにするという企業戦略なのだそうです。

絶滅危惧種がブルーオーシャン(戦略)だからということですよね、日本で儲かるぞ、と。しかし「培養ウナギ」にせよゲノム編集魚にせよ、それって本当に未来のためなんでしょうか。

未来の食卓を想像してみても、自分や子どもたちがゲノム編集魚や細胞培養肉を食べる姿なんて、まったくイメージできませんし、倫理的にも強い抵抗があります。

もちろんテクノロジーがすべて悪いとは思いませんよ。テクノロジーによって課題解決につながったり、それによって自然と共生できる可能性もあるでしょう。だけど、テクノロジーや企業が儲かるために、食の安全安心や倫理感が二の次になることがあってはならないはずですよね。

ーこうしたフードテックは消費者に非常に見えにくいものになっていて、急速に技術が進むほど、消費者の不安は増すばかりですね。

食はいのちの循環だといいますし、人間も私もその循環の一部であるはずですが、今、本当にそうなっているのかなと。人間がその循環から外れているだけでなく、循環を破壊していないだろうかと不安に思います。

未来の食をイメージするなら、循環する豊かな自然環境、そして生物多様性があってこそだと思います。「サスティナブル」と最近よく言われていますが、“フードテック”は持続可能なのかどうかということ、私はすごく疑問に思っています。

【8月のオンライン学習会のお知らせ】
人間社会にとって本質的な食。でもその食のあり方が急速に変えられてしまおうとしています。
本来、健康や環境、社会への影響を考えて慎重な検討が必要なのに、ほとんど市民が知らないうちにその変化が進んでしまいかねません。そこで、この間、進みつつある食の新しい技術がどんなものであるか、知るための基礎講座を開催します。
講師は事務局長の印鑰智哉が務めます!この問題をつぶさに見つめ、変化の波の中でも流されず、思考を止めることなく、今わたしたちが守るべきものは何かをみなさんと考えていきたいと思います。

【8月のオンライン学習会のお知らせ】
「急激に変わる食 ー ゲノム編集・細胞培養・合成生物学」

日時:2025年8月19日(火)午後8時〜9時30分
講師:印鑰(いんやく)智哉(OKシードプロジェクト事務局長)

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