【NEWS!!】ゲノム編集バナナが消費者庁に届け出〜茶色くならないバナナはSDGsなのか?

NEWS!!

英国企業がゲノム編集バナナの届け出

202635日付で、ゲノム編集バナナ(褐色低減)が消費者庁に届け出・受理されました。届け出したのは英国バイオテクノロジー企業のTropic Biosciences UK Ltd.(トロピック・バイオサイエンシズ社)です。2026224日に開催された消費者庁「令和7年度第4回食品衛生基準審議会新開発食品調査部会遺伝子組換え食品等調査会」において非公開で届け出の直前確認が行われましたが、後日公開された資料によると20252月から「事前相談」が行われていたようです。

このゲノム編集バナナ(褐色低減)の届け出によって、日本で届け出されたゲノム編集食品は11品目となりました。海外企業からの届け出は、コルテバ・アグリサイエンス社(ゲノム編集トウモロコシ)、シンプロット社(ゲノム編集ジャガイモ)に続いて3社目。

いずれも現時点では「上市未定」となっているので、日本国内での販売は未定です。

コルテバ・アグリサイエンス社は、日本消費者連盟などからの質問状に対して、「先般届出されました PH1V69 CRISPR-Cas9 ワキシートウモロコシは、研究及び商業化前試験のため米国で栽培されたことはありますが、現時点で商業的な流通・販売はされておりません。」と2023年4月28日付で回答。シンプロット・ジャパン社も「弊社ではJA36を日本で栽培、または商品化する予定はありません。また、透明性を確保し、JA36が意図せずに日本に輸入された場合に備えて、自主的にJA36に関する情報を日本の規制当局に届け出致しました。」と2025年4月23日付で回答しています。

しかし、今回のゲノム編集バナナについては、消費者庁が公開した資料に「本褐変低減バナナ品種の生果実(青バナナ)のみの日本への輸入を目的としている。輸入された生果実は、従来のバナナと同様に食品として販売・消費される。」と記載されているため、近い将来、輸入されて、日本国内で販売される可能性があります。

ゲノム編集で茶色にならないバナナ

12時間経過した従来のバナナ(左)とTropicのバナナ(右) 出典:https://tropic.bio/best-inventions-2025/

今回届け出された「褐変低減バナナ(TRB011002 系統)」とは、どのようなものなのでしょうか。

リンゴやバナナの皮をむいて放置すると茶色く変色(褐変=かっぺん)します。これは果実の中にあるポリフェノールオキシダーゼ(PPO)という酵素の働きで、ポリフェノール類が変質するからです。カットしたリンゴを塩水につけると褐変しないのは、食塩によってPPOの働きが阻害されるからです。

ゲノム編集バナナ(TRB011002 系統)では、CRISPR/Cas9を用いたゲノム編集技術によってバナナのPPO遺伝子を欠失(ノックアウト)しました。このゲノム編集バナナは、果実にPPOができにくくなり、その結果、皮をむいたり、スライスしたり、打撲したりしても褐変しにくくなったのです。

なぜこのような遺伝子操作をするのでしょうか。

トロピック・バイオサイエンシズ社のウェブサイトによると、輸出されたバナナの60%以上が消費者の手に届く前に廃棄されているとあります。そのため、褐変しないゲノム編集バナナによって、食品廃棄物と二酸化炭素排出量を25%以上削減する可能性がある、といいます。

また、スーパーマーケットやコンビニエンスストアではカットフルーツが販売されていますが、バナナをカットすると褐変してしまうため、カット・バナナは見かけることがありません。しかし、このゲノム編集バナナはカットしても12時間ほど褐変しないため、カット・フルーツとしての販売も可能となるでしょう。

どこで栽培されるのか?

前述の資料には「日本への輸入を目的」と書かれていますが、それではこのゲノム編集バナナはどこで栽培されるのでしょうか。

公開された資料には、栽培地や輸入元がどこであるのかの記載はありません。しかし、トロピック・バイオサイエンシズ社は、このゲノム編集バナナについてフィリピン農業省植物産業局(DA-BPI)によって2023年3月15日付で「非遺伝子組み換え生物」であると判断されています。この決定によって、フィリピン国内でこのゲノム編集バナナの自由な輸入や栽培が可能となっています。また、トロピック・バイオサイエンシズ社のウェブサイトの記事では、栽培地は明記されていないものの現在販売されていて、2026年には米国とカナダでの販売を開始する予定であると書かれています。

フィリピンでこのゲノム編集バナナが栽培されているのかどうか、現時点では情報は確認できていません。日本は輸入バナナの8割以上をフィリピンから輸入しています。もしフィリピンでゲノム編集バナナが栽培された場合、日本へ輸入される可能性もあるでしょう。その場合、日本ではゲノム編集食品の表示義務はないので、消費者はゲノム編集食品であると気付かないまま購入するかもしれません。

また、トロピック・バイオサイエンシズ社のプレスリリース(2026年4月10日付)によれば、ブラジルでも承認を取得したとあり、ブラジルでの栽培が可能となりました。このプレスリリースによれば、ブラジルのバナナ生産量は世界の生産量の10%を占めているといいます。ただし、農林水産省の統計では、ブラジルから日本への輸入実績はないようです。

ゲノム編集はSDGsなのか?

米国雑誌TIMEは、毎年、世界でもっとも画期的な発明品を紹介する特集号「Best Inventions」を発行していますが、このゲノム編集バナナ(褐色低減)は、TIME’s Best Inventions 20252025年ベスト・イノベーション)のフード&ドリンク部門に選出されました。

TIMEのウェブサイトでは、次のように紹介されています。

Tropic Non-Browning Banana(トロピック社の茶色くならないバナナ)
世界で最も人気のある果物であるバナナは、茶色く変色して柔らかくなると、その魅力が薄れてしまう。保存期間を延ばし、食品ロスを減らすため、英国のバイオテクノロジー企業Tropicの科学者たちは今年、変色しないバナナを初めて開発した。精密な遺伝子編集技術を用いて作られたこのバナナは、皮をむいてから少なくとも12時間は鮮度を保ち、変色しにくい。CEOのギラッド・ガーション氏によると、同社はさらに、より長く緑色を保ち、アジアからラテンアメリカにかけてのプランテーションで猛威を振るっている真菌病に耐性のあるバナナの開発にも取り組んでいるという。

褐変しにくいバナナは、確かにフードロス削減に役立つのかもしれません。しかし、プランテーション農業でバナナを栽培し、栽培地から遠く離れた消費地へと大量に輸送して消費するというスタイルは、多くの問題をはらんでいます。このような問題点に目をつぶって、見た目の変化が12時間程度伸びることにどれほどのメリットがあるのでしょうか。

SGDsを錦の御旗として、新技術の正当性が謳われることが少なくありません。しかし、ゲノム編集などの新技術にはデメリットもたくさんあり、その副作用が顕在化するまでに相当の時間が必要なことが少なくありません。ゲノム編集食品が私たちに対してどのような功と罪をもたらすのか、慎重に見極める必要があるでしょう。
(原野好正:OKシードプロジェクト副事務局長)

タイトルとURLをコピーしました