【NEWS!!】節水型乾田直播の問題点を市民が次々に指摘 〜節水型乾田直播問題を考える院内集会〜

NEWS!!

2026224日、衆議院第二議員会館で「節水型乾田直播問題を考える院内集会」が開催されました。主催は節⽔型乾⽥直播問題を考える実⾏委員会(事務局:OKシードプロジェクト)で、会場には約120人が、オンラインでも約340人が参加しました。

節水型乾田直播には、さまざまな問題点が指摘されています。しかし、昨今の令和の米騒動以降、節水型乾田直播が米不足解消の有効な解決策であるかのような報道が目立ちます。農林水産省も「田植え不要の米づくりコンソーシアム」を立ち上げて大規模な講演会を開催し、節水型乾田直播のメリットを強調しています。

今回の院内集会では、節水型乾田直播に懸念を抱いている農家や研究者、消費者が、その疑問を農林水産省の担当者に直接問うために開催されました。農林水産省からは、米政策やみどりの食料システム戦略の担当者や農林水産技術会議事務局ら7人が参加して、主催者側からの質問に答えました。

当日の録画はこちらから

■農林水産省は「普及はしていない」!?

院内集会の冒頭で実行委員会の下山久信さん(有機農業推進協議会 理事長)は、「水田稲作は日本の歴史、文化、風景であり、生命のゆりかごである」としたうえで、農業政策の問題点を指摘しました。現政権は植物工場やフードテック推進を掲げていますが、そこには人(農業従事者)と農地の問題が抜け落ちています。コストカットや生産性の向上だけを重視しても、それでは食料自給率の向上も図れないし、食料主権を保つことはできません。また、みどりの食料システム戦略では有機農業の推進を謳っていますが、節水型乾田直播は有機農業とは相容れないものです。小規模家族農業を切り捨てるのではなく、いかにすれば農業従事者を増やすことができるのか、農村のコミュニティを維持するには何が必要なのかを視野に入れた議論が必要なのです。

この院内集会開催に先立って、農林水産省には3つの質問を投げかけています。まずは、農林水産省からその回答が読み上げられました。

《農林水産省への事前質問》

1.農水省は節水型乾田直播に関して、その普及およびそれに伴う環境の保全のためにどれだけの関連予算を概算要求しているのか、節水型乾田直播に関わる概算要求した金額の総額を問う。
2
.一農家が節水型乾田直播を採用して大規模化を図る際に、どれだけの補助金を得ることが可能なのか?
3
.節水型乾田直播関連、大規模化整備に関する予算を合わせると、農家戸別所得補償に必要な予算額をはるかに上回ると考えられるが、大規模化のみを推進し、小規模を支援しないことになってしまえば、農村人口が激減して、農村のインフラ維持にも困難を来すことが考えられる。農水省として小規模農家の離農を防ぐために、取り組む政策を問う。

農林水産省:節水型乾田直播については、検証が必要な新技術であると整理しています。技術か確立したものに使う「普及」という言葉は使っていません。したがって、技術の確立前に、各県の普及センターなどで普及していただくことは想定していません。

この技術の確立のために予算請求をしていますが、研究開発予算として2025(令和7)年度補正予算で17,000万円の内数、2026(令和8)年度予算に51,400万円の内数を計上しています。

また、技術の検証が必要な新技術であるため、節水型乾田直播を行うことで農家が補助金などをもらえることは現時点では想定していません。

3問目についてですが、大規模化のみ推進して小規模農家を支援しないということであれば、農家人口が激減して農村のインフラ維持にも困難をきたすと考えられます。規模の大小、個人・法人にかかわらず幅広い支援を講じています。多面的機能支払交付金や中山間地等直接支払金に加え、農地の基盤整備、スマート農業技術の開発など、農業で稼ぐための施策を講じることであらゆる農地が営農できるように努めています。

■市民からの質問と農林水産省の回答

農林水産省の回答に続いて、有機農家や研究者、消費者などさまざまな視点からの質問がありました。そのいくつかを抜粋します。

舘野廣幸さん(民間稲作研究所 理事長)の「メダカやフナ、トンボ、カエルなどは、何百年も日本の稲作を支えてきた仲間です。カエルたちの声を代弁して、私たちの田んぼから水を奪わないでください」との発言に対して、農林水産省からは「湛水してから田植えをする従来型の移植水稲を否定するものではなく、個人の農業者が規模を拡大するときに移植と直播を組み合わせるのではないか」と回答しました。

伊藤俊彦さん(株式会社ジェイラップ 代表取締役)からの、「乾田では農薬散布が増えることでコストも増える。手間を省くことで米の白度が上がらず、食味や収量も低下する」との指摘には、「収量が落ちることは把握しています。研究受託者を募集中で、デメリットも含めて検証していきたい」と回答しました。

魚住道郎さん(日本有機農業研究会 理事長)からは「メタンガス発生の抑制のためとして、中干し延長にJクレジットで誘導していますが、これは産業界のツケを農業に押しつけているではないでしょうか。節水型乾田直播でもメタンガスの発生が抑制されるといわれていますが、メタンガスと一酸化二窒素はトレードオフの関係にあります。乾田化によって温室効果ガスの発生が増えるのではないか」との指摘には、「現時点では節水型乾田直播にJクレジットを導入する予定はなく、温室効果ガスの発生に関しても検証していきたい」との回答がありました。

池上甲一さん(西日本アグロエコロジー協会 共同代表)さんからは、「節水型であっても、水利システムが機能するためには、中小農家や土地持ち非農家からなる農村コミュニティが必要です。田んぼは単なる米の生産施設ではなく、景観や水管理、洪水防止などお金にならない役割を担っていることを認識すべきだ」との指摘には、「水田の洪水防止機能や水質浄化機能、河川流量安定機能、文化の継承などさまざまな機能を持っていることをしっかり評価しながら、施策を講じていきたい」と回答しました。

河田昌東さん(遺伝子操作食品を考える中部の会 代表)からは、「節水型乾田直播では雑草対策が大きな課題になりますが、ゲノム編集や遺伝子組み換えなどによる除草剤耐性イネの導入が懸念される」との指摘には、「遺伝子組み換えなどについては、日本の法規制に従って進めることになる」として、除草剤耐性イネの導入を否定することはありませんでした。

金井裕さん(ラムサール・ネットワーク日本 共同代表)からは、「ラムサール条約や生物多様性条約では“水田決議”が採択されています。水田決議とは、水田は農業生産の場でありながら非常に多くの生きものが生活できる場所で、それが何百年も同じ場所で維持されていることは希有なことであるから、生物多様性の観点から水田を未来にのこしていこうというものです。農林水産省が行う検証には、生物多様性への影響も含まれているのでしょうか」との問いがありました。これに対しては、「乾田にすることで生物相が大きく変わる可能性があり、生物多様性についても研究をしていきたいと考えています。そして、問題なくできるものに関してはマニュアルを作成しますが、何か問題がある場合はマニュアルは作れませんが、現時点ではどうなるかまだ決まっていません」と回答しました。

松尾由美さん(生活協同組合コープ自然派事業連合 顧問)からは、除草剤グリホサートの安全性について「昨年、安全性の根拠となっていた論文が撤回され、グリホサートの安全性が根底から揺らいでいます。節水型乾田直播では、グリホサートの散布を大前提にしていますが、どのような見解でしょうか」との問いに、「農薬全般について、現場でのリスクベースで評価をすることになっていて、グリホサートに関しても使用法を守っている限り発がん性・毒性などは認められないと結論づけています。しかし科学は進歩するもので、今後行われる食品安全委員会委での再評価で、適切にリスク評価が行われると期待しています」との回答がありました。

安田節子さん(食政策センター ビジョン21 代表)からは、「水田を減らせという圧力があるのではないかと懸念しています。ダボス会議でもバイエルのCEOが、水田はメタンを発生させるから地球温暖化に悪いと発言しているし、米国からも日本の水田を減らしてアメリカ産の安い米を買うような圧力があるのではないか」との指摘には、国際交渉については対象者がいないので一般論だかとの前置きのもと「事業者にヒアリングすると、米国産カルロースを使用するのは安いからだということです」と回答するに止まりました。

天笠啓祐さん(遺伝子組み換え食品いらない!キャンペーン 共同代表)から、「水田には地下水涵養機能がありますが、乾田化するとその機能が失われます」との指摘に、「現段階での検証内容に、水田の貯水機能については念頭にありません」と回答しました。

■今日がスタート!

予定よりも大幅に延長して行われた農林水産省との意見交換。農林水産省が「節水型乾田直播は検証すべき新技術であって、普及はしていない」と発言したことは驚きでしたが、さまざまな視点からの問題点が明らかになりました。

農林水産省担当者の退席後、印鑰智哉(OKシードプロジェクト事務局長)が、「今日はたくさんの農家の方々も参加していただき、農家の現場からの声を出していただけたことがなによりだった」と評価したうえで、節水型乾田直播は根の深い問題であると指摘。今後も継続的に農林水産省との意見交換をして、圧力をかけていく必要があるため、今後もいっしょに声を上げることを呼びかけました。

原野好正(OKシードプロジェクト副事務局長)

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