たねBOXが再び熊本へ!今回のたねまきコラムでは、OKシードプロジェクトの「たねBOX」を携えて、今年も2026年3月に熊本から大分へとバトンを繋いだ「toko-tokoたねのゆりかごプロジェクト」國本聡子さんからのレポートをお届けします。
法改正によってタネと食をめぐる環境や、私たちの「選ぶ権利」が根底から揺らぐ今だからこそ、手から手へ、想いをともにタネを繋いでいくことの大切さを痛感します。静岡の富士山麓シードバンクを出発したタネBOXが、はるばる九州へ到着し、遠く富山や関東、そして九州など、全国各地で大切に紡がれてきたタネが混ざり合い、また新たな土地に根を張る—。いのちの循環を感じる、「春の旅」の記録をぜひご覧ください。
旅する「たねBOX」ー 春の旅/ 國本聡子(OKシードプロジェクト運営委員)
OKシードプロジェクトの「たねBOX」で、毎年タネの交換会を企画している「toko-tokoたねのゆりかごプロジェクト」が、今年もタネの交換会を開催しました。
2026年3月13日:「上色見で農と食と環境を勉強修する会」@上色見交流センター(熊本県高森町)
宮城、東京に続いて、OKシードプロジェクトのたねBOXは静岡の富士宮から熊本へ。
上色見プロジェクトと種の会(高森)が共催する「知っておきたい種子のこと、食べ物のこと」講演会・タネ交換会に参加。この日は、高森町上色見地域だけでなく、熊本県内各地や県境を越えて来た人と出会ったよ。

大分大学経済学部の小山敬晴さんの講演の前、先ず昼食会で交流。みんなの菜園プロジェクトのメンバーが準備した昼食メニューのメインは、椎茸・ごぼう・人参等に加え、地元で継がれてきた鶴の子芋とつんきり団子(ダゴ)を入れて作る団子汁。味付けに「みさを大豆」で作った味噌風味。「みさを大豆」は、大正時代に地元の井上みさをさんが固定した小さめで扁平の味豊かな地大豆。この味噌を使った大根・人参の味噌漬け、野良高菜漬などをおかずに、ご飯は富山県南砺市から参加した種蒔くキャラバンマーケットが仲間達と限界集落「小院瀬見」で育てた自然栽培玄米。参加者で一緒に食事しながら順に自己紹介や参加動機を語って知り合うと、タネ交換会が一段と楽しみになった。
タネ交換の前に、小山先生から種(タネ)についての大事なお話し。種に関する法律のことを分かりやすく話してもらい勉強した。遺伝子操作技術を使う新品種開発がどんどん進んでいることや、日本のタネの法律が変えられて、日本は、食べることの権利(主権)をみんなで守っていかないとおかしな方向へ進んでいってしまうことがわかった。種の法律「種子法」が廃止された影響や「種苗法」が変えられたことで、種を自家採種する権利が危うくなっている。それに遺伝子操作技術の1つ、「ゲノム編集」された食べものに「ゲノム編集された」と表示しなくてもいいと法律に書いてあるから、みんなが種や苗や食べものを買う時、どれがゲノム編集作物なのか分からなかったり避けるのが難しい。今は、種や食べものを選択する権利が大事にされていない。法律の話しはちょっと難しいところもあったけど聞いて良かった。
種の交換会は、種を持ってきた人が種についてどんな種か、育て方食べ方など説明してから、参加者が育ててみたい種を選ぶのだけど、まだ交換する種がなく持ち帰りから始める人もいる。初めての人も、自分でも育ててみたいと思うと、種がどんな風に育つのかどう育てたらいいか熱心に聞いたり話すので、みんな知り合いが増えてよかったね。
それから、熊本の水俣のことをたくさん書いている石牟礼道子さんの本『食べごしらえ おままごと』の中から“つみ草”の章の朗読を聴いた。人間は、自分が生きる世界について感じたり知ったりしたことを、言葉で現して互いに伝え合うことができる生き物だね。いのちを食べて生きる人間は、やっぱり自然の循環の中のひとつだってことでは、種(タネ)と同じ。特別でもなんでもない。
2026年3月14日・15日:種まくキャラバンマーケット@有機生活(熊本市東区)
熊本市内にある「畑まるごとマーケット『有機生活』」は、食で進める健康づくりを目指しているお店。ミニマルシェに「種まくキャラバンマーケット(種キャラ)」が出展。種の駅も開設するのに参加した。種キャラは、富山県南砺市小院瀬見地区(戸数3軒)にある田んぼで仲間達と自然栽培のお米づくりや、西洋蜜蜂の養蜂もしている。富山で種の駅を始め、種は交換か、または、持ち帰えりから育てて種が採れたら誰かとシェアするのもOKというルールで活動している。
2月に関東の旅での種の駅で交換した種と、富山の種とが一緒に九州にやって来た。OKシードプロジェクトの「たねBOX」も、日本各地域で自家採種された種が入っているので、立ち寄った人たちが初めて見る品種も多く「このタネはどんな野菜になるのかな? どんな味?」と想像しながらあれこれおしゃべりするのを聞くのは楽しかった。
来られた方のなかには、昔、アメリカで始まったばかりの遺伝子組み換え反対運動をしていた、と詳しい人がおられ、当時体験されたという、遺伝子組み換えナタネの交雑被害を受けたカナダの有機ナタネ農家シュマイザーさんのことを一緒に話すことができた。遺伝子組み換え企業から裁判を起こされ大変な苦労をしたシュマイザーさんの事件から、自家採種のタネを守る活動は大事だと強く思ったと。
その日は交換する種を持ってないので明日持ってくるからと言って帰られ、次の日、大事にしている種を持って交換しに来てくれた。その人から、昔ながらの暮らしを守る人達「アーミッシュ」が大切に継いできた種のことを教わった。また、庭で育てているオオアザミ(マリアシスル)が人の背丈を超えるほど大きくなり、葉の下にガマガエルが必ず来ると言われて「たねBOX」に種を入れてくれた。
この2日間の種の駅では、お母さんが大切にしていた柑橘の木が、亡くなった後初めて実って種ができたからと持参して種BOXに入れてくれた人、交換の種代わりにサツマイモ(食べる芋)を持ってきてくれた人もいた。野菜作りを始めたばかりという人も多く寄ってくれた。種をシェアする人も、OKシードマークも、どんどん広がると良いね。
2026年3月20日・21日:種まくキャラバンマーケット/大分パフォーマンスチーム共催@大分市戸次・藤川金物店
昭和5(1930)年、『藤川金物農機具販売店』として創業した異空間が会場の、パフォーマンスとミニマルシェで開設された『種の駅』に参加。
来場者は演劇、演奏パフォーマンスを楽しむため来ているため、「種交換」や「Seed Share」の言葉は初めて聞いたという人がほとんど。種は買うもの、と思っている人も多く、飲み物片手に恐る恐る近づいてきて「おいくらですか?」と尋ねる人に、活動目的や種を持ち帰ってからどうしたらいいのかを説明するところから会話のキャッチボールが始まることも。
話すと、庭の手入れが趣味のお母さんに持って帰りたいという人、子どもと相談して育てたい野菜のタネを探す人、ずっと育ててみたかったタネがあったと喜ぶ人など。OKシードカードやパンフレットといっしょに選んだ種を持ち帰ってもらう。
仕事帰りに芝居を観に来た若い女性たちは、種を分け合ったり交換して繋げる取り組みに、しきりと感心していた。もちろん、遺伝子組み換えやゲノム編集のことに詳しく、自分で調べて活動しているという若い人もきてくれて、頑張っている話しを聞くことができた。
さて大分パフォーマンスチームの舞台、アフリカや南米の旅先で出会って連れ帰ってきたというたくさんの楽器も使った演奏が、自然の万物に向け祈るように空間に響く声、楽器の音とのコラボレーションの波動を受けているうちに、なんだかとっても気分良く発芽の日が迎えられそうな気持ちになった。
こうして春の旅を終えたOKシードプロジェクトの「たねBOX」は、新しい仲間をいっぱい連れてSeedおじさんの待つ静岡へ帰っていった。そして、いろいろな人の手に抱えられて新しい旅に出掛けたタネたち、そこここの土地で芽を出し根を張って、その地に合ったタネになり、元気にどんどんふえることを祈ってる。
toko-tokoたねのゆりかごプロジェクト(國本)
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