会場、オンラインでたくさんの方にご参加いただき、本当にありがとうございました!
集会では大変重要な質疑が行われ、従来の「あきたこまち」と「あきたこまちR」を同じ品種として表示することがいかにおかしなことか、多角的かつ明確に指摘されたと感じます。
会場の都合上時間が限られており、駆け足での進行となりましたが、ひとつひとつの問題を各省庁と共有でき、大きな意義のある場となりました。
集会で出された問題について、「あきたこまちR」を生産しようとしている方も含め、生産者、消費者問わずしっかりと情報を拡げ、知っていただく必要があります。
そして、今後も各関係省庁のみなさまと交渉を重ね、ひとつずつ、少しずつ、協力関係を築いていきたいと思います。
引き続き、全国から一緒に声を上げていきましょう!
OKシードプロジェクト共同代表の久保田裕子が、集会の報告をまとめましたので、ぜひお読みください!
集会報告 消費者庁に「あきたこまちR」の不当表示を防ぐ措置を42団体が申し入れ―6月14日、市民が院内集会
6月14日、「『あきたこまちR』の不当表示問題を消費者庁へ要請する市民集会―2025年産『あきたこまち』の品種は何なの?―」が参議院議員会館で開催され、会場及びオンラインで約200名が参加するなか、全国各地の消費者団体、環境市民団体、農業関係団体等42団体*が賛同する「要請書」が消費者庁の担当官に手渡されました。
消費者の知る権利・選択する権利を守る措置を要求
この要請書は、先の「『あきたこまち』をどう守る?東京集会」(2024年3月29日)での集会アピールを踏まえたもので、特に表示問題に焦点を合わせたものです。秋田県は、2025年産米から従来の「あきたこまち」を新品種「あきたこまちR」に切り替える計画に伴い、「あきたこまちR」という品種名を伏せて従来からの「あきたこまち」として表示して販売するとしています。しかし、これでは消費者は従来からの「あきたこまち」か、それとも重イオンビーム放射線育種由来の「あきたこまちR」なのか、知ることができなくなります。消費者の知る権利・選ぶ権利を侵害することになります。
食品表示に関わる法律には景品表示法(不当景品類及び不当表示防止法)や食品表示法がありますが、このような表示は景品表示法で規定されている「誤認」を招く「不当な表示」や「食品表示法」の「適正」でない表示に当たると考えられることから、こうした事態を未然に防ぐよう、これらの法律を所轄する消費者庁に速やかな措置を求めるという申し入れです。
集会では、要請書の内容について事前に通告した質疑8項目について消費者庁(表示対策課、食品表示課計3名)、農林水産省(農産安全管理課、穀物課、農林水産技術事務局研究企画課等計10名)が対応し、問題点は短い時間ながらも明らかになりましたが、責任ある姿勢は残念ながら示されませんでした。
景品表示法も食品表示法も消費者の権利を守る法律
この市民集会の焦点は、「あきたこまちR」の虚偽表示の側面からの問題点を浮き彫りにするすることでした。今年は、消費者基本法の制定から20年(1968年の消費者保護基本法を改定し、消費者の8つの権利を明記)、消費者庁設置から15年の節目の年です。そうした消費者基本法でも、食品表示法でも、「自主的で合理的な選択」の必要性が法律の条文で規定されています。
今回明らかにされたことで、特に重要なことは、景品表示法は、食品表示法よりも、さらにまた農産物検査法による「農産物検査に関する基本要領」にも優先される法律であることが明確に指摘されたことです。消費者の権利が高らかに謳われている現在、景品表示法の運用が農産物検査法などの規定によって阻害されてはならないのです。これら両法に抵触するようなケースは、それを未然に防ぐために消費者庁が行政調整によって退けるべきだということです。
従来の「あきたこまち」と大きく異なる新品種「あきたこまちR」
また、農産物検査法において、異なる品種を同じ銘柄とする場合には、それらが同じ品種群に属すとみなす「品種群設定」が必要になります。この集会で、農林水産省穀物課は、品種群に設定する「要領」の規定は、農産物検査を目で見て鑑定する目視を前提とした規定であることを明らかにしました。目視では確認できない遺伝子レベル、その他の品種の開発方法の違い、安全性、栄養学的な違いなどの重要な要素が存在していることは明らかであるにも拘わらず、それらの違いが「品種群の設定」の要件に加味されないまま、そうした違いが無視されて、同じであることにされていることが明らかになりました。もっとも、上述のように、景品表示法の規定はこの品種群設定に優先するため、たとえこの品種群の設定の問題に目をつぶるとしても、このような表示は景品表示法に基づき、許されないことになります。つまり、「あきたこまちR」を「あきたこまち」と表示することは二重におかしいことが明白になりました。
穀物から4割を摂取している必須微量元素マンガン
さらに、同じ表示にするのであれば、それが同等の性質を持つことが必要ですが、成分から見ても、これは同じとは言えないマンガンの問題があります。というのも「コシヒカリ環1号」と同様にマンガンの吸収を司る遺伝子を欠失させているため、「あきたこまちR」は従来の「あきたこまち」に比べ、コメ中に含まれるマンガンが3分の1未満になっているのです。
農水省は米のマンガンが少なくても、他の食品から摂ればいいので大きな影響はないと言うのですが、原英二さん(日本消費者連盟)は、東京都健康安全研究センターによる調査で日本の住民のマンガンの摂取は穀物からの摂取が約4割を占めていることを指摘しました(円グラフ参照)。
ヒトにとってマンガンは栄養学でいう必須微量元素(ミネラル)であり、多くの酵素の働きに関係し、欠乏すると骨代謝、糖脂質代謝(糖尿病や脂肪性肥満)、運動機能、皮膚代謝に影響を及ぼす可能性があります。そのため、主食の米のマンガンが3分の1未満になる「あきたこまちR」を「あきたこまち」と同等ということには強い疑問のあることが明らかにされました。
特定遺伝子一つの破壊が様々な影響を及ぼす
また、河田昌東さん(分子生物学者、遺伝子操作を考える中部の会)は、「あきたこまちR」と同じOsNramp5遺伝子の第9塩基を破壊された稲は、開花期が高温で、低マンガンの環境では大幅に収量が低下することを指摘する論文がNatureなどの複数の科学雑誌に掲載されていることを指摘しました。その論文について農水省がどのように認識しているのかを問い質しましたが、農水省の返答はとてもあいまいなものでした。さらに、農家に大きな被害を与えることになった時の責任の所在を質しましたが、栽培方法の情報を知らせているので責任は生産者にあると繰り返すだけで、責任を認める回答は得られませんでした。
全国規模で推進される重イオンビーム放射線育種米
なお、書面で回答を求めていた質問には、次のような回答がありました。前から言われているように、この問題は秋田県だけの問題ではなく、全国規模の問題です。
2022年度の時点で、カドミウム低吸収性イネ品種を用いたカドミウム及びヒ素濃度の同時低減技術の実証を実施した府県は、2022年度の時点で、以下のとおりという回答がありました。
宮城県、秋田県、新潟県、滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、島根県、山口県、宮崎県。
実証に用いられた出願済のカドミウム低吸収性イネ品種は以下のとおり。
あきたこまちR、キヌヒカリ環1号、きぬむすめ環1号、コシヒカリ環1号、にこまる環1号。
「あきたこまちR」表示問題に引き続き注目を!
集会の最後は、中村陽子さん(OKシードプロジェクト共同代表)から、「夢のような話になりますが、消費者庁が私たち消費者のことを考えてくれる消費者庁になり、私たちがそういう消費者庁を応援できるような、そういう良い関係になったらいいなという夢を語って、閉じましょう」という言葉で市民集会は終了しました。
このように、この集会では、「あきたこまちR」を「あきたこまち」として表示することの問題に対し、要請書を手渡すと同時にこれらの問題点を明らかにしました。私たちからの質疑に対する消費者庁・農水省のこの時点での返答は何ともこころもとないものでしたが、この要請書の提出はスタートに過ぎません。今後も継続して追及していきます。ぜひ、ご注目ください。
*42団体 50音順
NPO法人 赤とんぼ、秋田県有機農業推進協議会、「あきたこまちR」をみんなで考える会、秋田ミネラルオーガニック給食をすすめる会、NPO法人 アクシス委員会連合、遺伝子組み換え食品いらない!キャンペーン、遺伝子操作食品を考える中部の会、愛媛有機農産生活協同組合、OKシードプロジェクト、海陽町オーガニックス、関西よつ葉連絡会、北九州オーガニックプロジェクト、NPO法人 熊本県有機農業研究会、こうち食と農をまもる連絡会、香南市オーガニック給食をすすめる会、生活協同組合コープ自然派おおさか、生活協同組合コープ自然派京都、生活協同組合連合会コープ自然派事業連合、生活協同組合コープ自然派しこく、生活協同組合コープ自然派奈良、生活協働組合コープ自然派兵庫、市民ネットワーク千葉県、種子を守る会香川、食政策センター・ビジョン21、食と環境の未来ネット、NPO法人 食と農の未来をつくるネットワーク、食と農を守る会徳島、公益社団法人 全国愛農会、全日本農民組合連合会、食べもの変えたいママプロジェクトみやぎ、使い捨て時代を考える会、NPO法人 日本消費者連盟、(有)日本の稲作を守る会、NPO法人 日本有機農業研究会、農民運動全国連合会、バイオダイバーシティ・インフォメーション・ボックス、NPO法人兵庫県有機農業研究会HOAS、NPO法人 みやざき有機農業協会、NPO法人 民間稲作研究所、NPO法人 メダカのがっこう、NPO法人 有機農業推進協会、NPO法人 和歌山有機認証協会
=========================6月27日追記
《長周新聞が詳細な記事と要請文全文を掲載してくださいました!》
◎「あきたこまちR」は安全か? 秋田県で来年から在来品種と全量切り替え 食と農42団体が要請書提出 表示統一で区別できず
https://www.chosyu-journal.jp/shakai/30957
◎「あきたこまちR」を「あきたこまち」と表示する不適正で虚偽の不当な表示に対する措置の要請【全文】
https://www.chosyu-journal.jp/shakai/30967
長周新聞のみなさん、ありがとうございました!