■青果、ピューレーに続いてドライトマトが製品化
ゲノム編集トマトを販売するサナテックシード社(旧・パイオニアエコサイエンス社)は、2025年4月17日付で「新商品『ハイギャバ®ドライトマト』発売のお知らせ」という記事をリリースしました。このゲノム編集トマトの製品は、青果、ピューレーに続いて3つ目の製品となります。
ゲノム編集食品「ハイギャバドライトマト」は、サナテックシード社のオンラインショップで販売されているほか、都内スーパーマーケットでの販売も確認されています。また、機能性表示食品としても届け出されていて、血圧高めの成人が1日あたり2.5g(約4ピース)摂取するとよいと書かれています。1袋15g入りなので、1袋で6日分です。
パッケージのオモテ面には機能性表示食品であることや血圧を下げる機能があると大きく書かれていますが、原材料がゲノム編集トマトであることは書かれていません。ただし、ウラ面には下記のようにゲノム編集食品であることが書かれています。
このハイギャバ®ドライトマトに使用しているトマトは、最先端の品種改良技術【ゲノム編集】を活用し、筑波大学の研究者により改良されました。これにより誕生したGABAを多く含む品種を、低温乾燥でドライトマトに仕上げました。」
サナテックシード社はこの「ハイギャバドライトマト」を健康食品として、サプリメントのように毎日食べることを勧めているのです。
さて、ゲノム編集トマト「シシリアンルージュハイギャバ」とそれを原料とした製品にはどのようなものがあるのでしょうか。
■国内初のゲノム編集食品「シシリアンルージュハイギャバ」
ゲノム編集トマト「シシリアンルージュハイギャバ」は、ゲノム編集によってGABA(γ–アミノ酪酸)というアミノ酸が多く含まれるように遺伝子操作されたミニトマトです。2020年12月に国内初のゲノム編集食品として届け出されました。生鮮食品として食べるゲノム編集食品として、世界で初めてのものでした。
しかし、届け出当初は生産体制が確立されていなかったようで、すぐに販売がはじまることはありませんでした。そのかわりに、家庭菜園用に苗の無償配布を行うとして、2020年12月からよく2021年3月にかけて栽培モニターを募集し、2021年5月から全国4,000人に苗が配布されました。
2021年9月15日からは「シシリアンルージュハイギャバ」の青果の販売が、パイオニアエコサイエンス社(現・サナテックシード社)のオンラインショップではじまりました。その頃は1箱2kgで6,048円(送料・税込み)とかなり高額でした(現在は税込み5,106円:2025/05/18現在)。
2022年5月からは、加工食品「シシリアンルージュハイギャバピューレー」の販売がはじまりました。この「シシリアンルージュハイギャバピューレー」は1袋が15g(大さじ1杯)で、そのなかにGABAが25mg含まれていると表示されています。一般的にトマトピューレーは、カレーやシチュー、ミネストローネなどの煮込み料理やトマトソースを作るときの食材として使用されます。しかし、「シシリアンルージュハイギャバピューレー」は健康食品として、乳酸菌飲料のように毎日飲むとよいと宣伝されています。
■機能性表示食品として届け出
ゲノム編集トマト「シシリアンルージュハイギャバ」は2022年11月20日に、機能性表示食品としての届け出が消費者庁によって受理されました。届け出された書類には、下記のように記載されています。
表示しようとする機能性
本品にはGABAが含まれます。GABAを12.3㎎摂取すると血圧が高めの方の血圧を下げる機能が、28㎎摂取すると仕事や勉強による一時的な精神的ストレスを緩和する機能が、100㎎摂取すると睡眠の質(眠りの深さ、すっきりとした目覚め)の向上に役立つ機能、及び肌の乾燥が気になる方の肌の弾力を維持し、肌の健康を守るのを助ける機能があることが報告されています。本品13g(1個)で機能性が報告されている1日あたりの血圧が高めの方への機能性関与成分、30g(2個)で一時的な精神的ストレスへの機能性関与成分、106g(5-7個)で睡眠の質と肌の健康を守るのを助ける機能性関与成分を摂取できます。当該製品が想定する主な対象者
高めの血圧(血圧が正常高値)、仕事や勉強による一時的な精神的ストレス、睡眠の質、肌の乾燥が気になる日本人男女(疾病に罹患している者、未成年、妊産婦(妊娠を計画している者を含む。)及び授乳婦を除く。)一日当たりの摂取目安量
高めの血圧が気になる方は13g(1個)、仕事や勉強による一時的な精神的ストレスが気になる方は30g(2個)、睡眠の質、肌の乾燥が気になる方は106g(5~7個)をそのままお召し上がりください。
つまり、「シシリアンルージュハイギャバ」にはGABAが含まれているため、一定量を定期的に摂取するとその摂取量に応じて、血圧を下げたり、精神的ストレスを緩和したり、睡眠の質を向上させたり、肌の健康を維持する効果があるというのです。しかし、このようなGABAの効果について科学的な根拠が乏しいのではないかとの指摘もあります。
機能性表示食品について、消費者庁は下記のように説明しています。
機能性表示食品制度とは、国の定めるルールに基づき、事業者が食品の安全性と機能性に関する科学的根拠などの必要な事項を、販売前に消費者庁長官に届け出れば、機能性を表示することができる制度です。
特定保健用食品(トクホ)と異なり、国が審査を行いませんので、事業者は自らの責任において、科学的根拠を基に適正な表示を行う必要があります。
つまり、企業が届け出した「機能性」の効果については、国としての審査は行われていないのです。
その後、2023年4月6日には「シシリアンルージュハイギャバピューレー」も機能性表示食品として届け出が行われています。また、2024年5月14日には「ハイギャバトマトピューレー」という商品も機能性表示食品の届け出が行われていますが、これは「シシリアンルージュハイギャバピューレー」とほぼ同じもので、商品名だけ変更したもののようです。
そして今回、ゲノム編集トマト「シシリアンルージュハイギャバ」を原料とした「ハイギャバドライトマト」が機能性表示食品として販売がはじまったのです。
厚生労働省の調査では、高血圧性疾患で治療を受けている日本人は約1,609万人(2023年度)で年々増加傾向にあります。たしかに高血圧症に悩んでいる人は決して少なくはありません。しかし、効果がはっきりしていない機能性表示食品に頼ることが、よい解決策といえるのでしょうか。そして、それがゲノム編集食品であるならばなおさらです。「血圧を下げる」の宣伝文句に踊らされないように注意が必要でしょう。
原野好正(OKシードプロジェクト副事務局長)
[参照]
ゲノム編集トマト
https://v3.okseed.jp/gefood/tomato
ゲノム編集トマトの販売実態調査にご協力を!
OKシードプロジェクトでは、ゲノム編集トマトの販売状況の調査を行っています。
もしゲノム編集トマトの販売を見かけたら、その情報を下記のフォームからお知らせください。
また、その際、パッケージに表示されている「産地」や、販売棚のプライスカードやポップに「ゲノム編集」であることがわかるように書かれていたかどうかもご確認ください。
情報提供フォーム:ゲノム編集トマト商品の販売状況調査