【NEWS!!】地域がつながれば、失われたものが取り戻せる! 〜ローカリゼーションディ日本2025〜

NEWS!!

ローカリゼーションディとは

「ローカリゼーション」という言葉をご存じでしょうか。

冷戦終結後、自由貿易の進展や多国籍企業の台頭、インターネットの普及などによって、世界の国々の経済的・文化的つながりが強くなっていきました。これがグローバリゼーション(globalization)です。グローバリゼーションによって、工業製品だけでなく農作物の流通販路が広がり、都市に住む人びとは安価な商品を手に入れやすくなりました。その一方で、経済格差は拡大し、文化の画一化によって地域の特性が希薄になり、輸送距離の延長に伴って環境負荷が増大するなどの弊害も生じています。

その解決策の1つが、「ローカリゼーション(localization)」です。地域のつながりを再生することで地域経済を活性化し、環境負荷が少なく、多様性を尊重した社会を取り戻すムーブメントです。国際NGOローカル・フューチャーズは、「グローバルからローカルへ」を合い言葉に、毎年、世界各国でローカリゼーションを祝うイベント「ローカリゼーションデー」の開催を呼びかけています。

日本でも、辻信一さん(環境=文化NGO「ナマケモノ倶楽部」代表)の呼びかけで「ローカリゼーションディ日本」が行われています。今年(2025年)は、68日に「ローカリゼーションディ日本2025」がオンラインで開催され、場開きの音楽、基調トーク、アジアからの連帯メッセージのほか、9つの分科会が生配信されました。その一環として、OKシードプロジェクトも分科会「たねのローカリゼーション〜ゆるやかにつながる未来会議〜」を企画・主催しました。

ローカリゼーションディ日本2025のレポートをお届けします。
(当日の録画はウェブサイトで公開されています。)

基調トーク「面識経済とローカリゼーション」

基調トークは、コミュニティーデザイナーの山﨑亮さんによる「面識経済とローカリゼーション」。

“面識経済”とは聞き慣れない言葉ですが、これは山﨑さんの造語。現代社会の市場経済では、だれがつくったのかわからない製品がやりとりされるのが一般的です。たとえばわたしたちが毎日使っているスマートフォンは、どこで、だれがつくったものなのかわかりません。一方で、近所のパン屋さんの場合は、パンを作る職人さんや店頭で販売する店員さんとはフェイス・トゥー・フェイスの関係をつくることが可能です。こうした“面識”、つまり人と人との顔の見える関係性に基づいて成り立つ経済活動を、“面識経済”と呼ぶそうです。

面識経済のメリットの1つは、信用が担保されやすいことです。顔の見える相手を対象としているため、製造・販売する側もなるべくよいものを適正価格で販売しようという気持ちが強くなります。さらに、単なる売り手と買い手という関係性を超えた信頼関係が生まれ、それが生きやすさにもつながるといいます。

現代社会において、面識経済だけで生活を成り立たせることは不可能ですが、それでも面識経済の比率を少しでも高くすることは可能である、と山﨑さんは主張します。面識経済率の高い生活を目指すと、自分の生活する地域コミュニティーとのつながりが強くなることも、面識経済の利点の1つです。無理のない範囲で、少しずつ面識経済を取り入れていくことは、わたしたちにも可能でしょう。

戦時下の統制で失われたコメの品種を取り戻す

「アジアからの連帯メッセージ」では、韓国とタイからリアルタイムでの報告がありました。

とくに印象的だったのが、韓国での失われた在来種のイネを復活する取り組みのことです。

日本は1910年に大韓帝国を併合し、朝鮮半島を日本の領土としました。いわゆる「日韓併合」です。そのころ、日本政府は朝鮮半島で栽培されているイネの品種を調査し、1,451種のイネが記録されたそうです。この多様な品種のイネから採られたコメは主食として食されるだけでなく、飴に加工されたり、お酒(マッコリ)がつくられたりしていました。各地にあったチュマクと呼ばれる食堂では、その地域の在来種でつくったマッコリが提供されていました。

しかし日本政府は、日本本土へのコメの安定供給を図るために、1920年ごろから朝鮮半島で栽培するイネの品種を3種類だけに指定しました。その結果、1940年代には朝鮮全土で栽培されるイネの90%以上が、日本政府が指定した改良品種となりました。その後、終戦によって日本政府の支配は終わりましたが、戦後の混乱や朝鮮戦争の動乱などで、かつて栽培されていた在来種が復活することはありませんでした。

2011年から、1人の農家の取り組みによって、国の遺伝子センターに保管されていた在来種のコメの復活がはじまります。遺伝子センターから提供された種籾を少しずつ増やすことで、韓国の在来種のコメが復活していきました。そして、昨年(2024年)、ようやく遺伝子センターに保管されていた約460種すべての復活ができたそうです。

たった1人の行動から、長らく失われていた地域独自の文化を取り戻すことができるのですね。

分科会「たねのローカリゼーション〜ゆるやかにつながる未来会議〜」

分科会の時間帯は、Zoomのアウトブレイクルームという機能を活用して、3つのグループが同時進行でプログラムを進めます。参加者は希望する分科会を視聴することができるのです。

OKシードプロジェクトは、「たねのローカリゼーション〜ゆるやかにつながる未来会議」というテーマの分科会を主催しました。

コーディネーターは、富士山麓有機農家シードバンクSeedおじさん(鈴木一正さん)。

最初に印鑰智哉さん(OKシードプロジェクト事務局長)から、「種子主権とは?」というテーマで問題提起がありました。本来、種子(タネ)は農民のものです。各地の農家は、先祖代々受け継がれてきたタネを播いて、作物を収穫し、品種改良を加えながら次の世代へとタネを伝えてきました。しかし、近年、多国籍アグリ企業が種子の独占を進めた結果、地域に根付いていた種苗会社がどんどん減っていき、タネの多様性も失われていきました。いま、日本で販売されているタネのほとんどは、海外の農地で採種されたものです。一方、国連では小農(家族農業)の重要性を再確認し、種子の権利・農民の権利を守ろうとしています。しかし日本では、地域のタネを守る法律はまだありません。だからこそ、みんなでタネを蒔いて、タネをつないでいくことが大切なのです。

その後、米国在住の植物研究者ウィーバー・カナさんから、シードライブラリーについての報告がありました。種子主権を守り、失われつつある在来種を守るために、世界各地でタネを守る活動が拡がりつつあります。それがシードライブラリー(タネの図書館)やコミュニティーシードバンクと呼ばれるもので、タネを共有(シェア)するシステムです。そこでは、タネを交換するだけでなく、育て方や料理など、文化の伝承も行われています。カナさんたちは、世界各地のシードバンクを記録したシードマップを作成しています。

カナさんの報告に続いて、日本の各地でタネを守る活動をしている4人のゲストから、地域での活動のようすがシェアされました。そして最後には、Seedおじさんから、タネを守るための「ゆるやかなつながり」への参加が呼びかけられました。


【おまけ】
ローカリゼーションディ日本2024とリンクして開催された全国ツアー「希望のキャラバン」のドキュメンタリー映画の予告編が公開されています。

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