たねまきコラム:希望のたねを蒔こう! 〜Sow the Future〜

お知らせ

「世界中の誰もがたねを蒔いたら、どれだけ平和な星になるだろう」――。
今回の【たねまきコラム】は、富士山麓シードバンクの「Seedおじさん」こと、鈴木一正さんの登場です!
法改正や不穏な情勢など、タネを取り巻く環境が激変するなかで見えてくる「いのちの本質」。食の多重危機に直面する今こそ、一粒のタネを蒔くことが未来への大きな希望となります。

希望のたねを蒔こう! 〜Sow the Future〜

こんにちは、たねの星から来たSeedおじさんです。
この原稿を書いている今は、春のたね蒔きシーズン真っ只中です。
畑に行きたくてウズウズしていますよ〜。

Seedおじさんには夢があります。
世界中の誰もがたねを持ち、たねを蒔いたら、どれだけ豊かで平和な星になるのだろうか。
争いや、奪い合いや支配など、その言葉自体忘れ去る世界がそこにはあるのではないかと。

Seedおじさんには希望があります。
今の資本主義経済システムが、たねを中心とした幸せな経済システムに、人類の意識の進化と共に移行していくと良いなと。
すべての繋がりがある地球と自分自身が繋がると、本来の心と景色が見えてきて、循環や分かち合いを大切にできるようになるのではないかしら。

Seedおじさんには役目があります。
たねを大切にする生き方と在り方を伝え、みんなでたねを繋ぎ、増やし、たねから持続可能な未来へ繋げること。

しかし最近、Seedおじさんは困っています。
それは、多様性を失ったたねが、未来を変えようとしていること。
そのことをこの星のみんなが知らないこと、自分には関係ないと思って関心を持てない状況にあること。

「たね」ってみなさんにとってどんな存在ですか?
毎日何気なく食べている食事が、何からできているか辿ってみてください。

「たね」に辿り着く食べ物がほとんどだと思います。たねからできたものを食べているのに、そのことにまったく気づいていない人が大半だと思います。忙しすぎて、そのことに意識を向ける、ちょっと考えてみる、そういう余裕すらないのかも知れません。

たねは昔から、農民や自給農の方々が、コツコツと時間をかけて繋いできてくれました。そして、その中から、美味しいもの、その地に合うもの、実り豊かなもの、などを選抜し続けてきてくれたおかげで、豊かな食と食文化ができあがりました。

それぞれの地域のそれぞれの環境で繋いできたことによって、多種多様な遺伝資源が存在していたのです。たねは豊かな多様性を保っていました。

しかし、さまざまな理由によりそのたねが、企業の手によって繋がれるようになったのです。

企業は利益を追求しますから、効率性と生産性が重視されるようになります。多様性はむしろ無駄ですね。その結果、現在のシステムにマッチするように上手に改良された優等生の交配種(F1)のたねが主流になり、流通する野菜のたねの約90%が海外採種の輸入品という現状になりました。産地が国内でも、そのほとんどが輸入のたねということです。

日本は、多くの野菜の採種時期に多湿ですし、小さな畑が隣接して交雑しやすい、など企業にとって採種がしづらい環境でもあり、広大で採種に安定している気候の土地に着目するわけですね。

ホームセンターに行くことがありましたら、たねの販売コーナーに行ってみてください。

たねの袋には裏側に、どこで採種されたか表記されています。

スーパーで買って普段食べている野菜のたねが、どこの国出身かわかり、驚くと思います。京都の在来種である九条ネギが例えばイタリアで採種されていたりします。

和食はユネスコ無形文化遺産に登録されていますが、伝統的な和食を食べたいとイタリア人が京都に行ったけど、出てきたネギは実はイタリア生まれだった、というのを知ったら、あれっ?ってことになりますね(むしろたねがイタリア産だということに喜ぶイタリアの方は多いかも知れませんけどね)。

今この瞬間にも、次々と固定種や在来種のたねは消滅していっています。
どうして? 農家さんがたねを採って持っているのではないの?と思いますよね。

今は、農家さんもたねを買う時代です。農家さんも、企業と同じように、効率性と生産性と流通を重視しないと「生活が成り立たない」状況なのです。だから企業が上手に改良した優秀(?)なたねを買い、お互いに支え合っているともいえます。それ故、スーパーに交配種(F1)特有の、姿形が妙に揃った野菜が並ぶことが可能になるのです。

Seedおじさんは、今のグローバルな資本主義システムが、たねの環境の本質(私たちの命の本質)を変えたと思っています。その結果、私たちの食のシステムも変わり、昔から繋がれていた固定種や在来種から切り離され、いつのまにかたね達が姿を消しているのです。一度絶滅したたねはもう二度と戻ることはありません。

 

今や、国の政策までもが、このグローバル資本主義システムのために動いているようにしか、Seedおじさんにはみえません。国民の国民による国民のための政治、そのための政策が、企業の企業による企業のための政治と政策にいつの間にか置き換わってしまっているのではないでしょうか?

新たな農業政策もたねの政策も、農民不在で企業のための内容になっていることに驚きます。ここでは詳しくは書きませんが、従来の遺伝子組み換えとは違う技術を用いて遺伝子操作されたたねから作られた作物が、ずらりと食卓に並ぶ未来がすぐそこに来ています。私たちの命のたねも企業のものに置き換わりはじめています。企業は、意識的か無意識的かに関わらず、たねの自由を、たねの多様性を奪っていきます。

余談ですが、かつては農民がタネに向き合い、今は企業がカネに向き合う時代です。根本的に違うのですね。

さて、遺伝的な多様性を失うことがどれほど危険なことか、みなさんお分かりでしょうか?

近年世界規模で気候変動が大きな問題となっていますが、想像してみてください。日本で、もし急激にさらに気候が変動したら? 6月にまさかの霜が降りるぐらい気温が下がったら? 梅雨が4ヶ月続くようになったら? 夏に2ヶ月雨がまったく降らなくなったら? 100年に1度のはずの異常気象が頻発するような時代ですから、こういうのも今やありえない話ではないですよね。

このような状況になったとき、遺伝的な多様性を失ったたねから作られた作物は非常に脆弱です。実りが得られなくなります。そもそも、人の手によって品種改良や遺伝子操作された作物は、生物としての力は当然に弱くなっています。だから、急激に劇的な変化が起きた時にはサバイバルできません。多様性があれば、干ばつや長雨や気温の急上昇急下降、さまざまな栽培条件の変化に、どれかの品種は対応できる確率が高まります。投資と同じです。1つの投資商品にすべての資金を投下しないですよね。多様性があるということは、リスクが分散できるということです。これは、歴史も証明していることですね。かつてヨーロッパで発生したジャガイモの疫病。たくさん取れる品種だからと1種類だけのジャガイモを植えまくった結果、病気が広がって、実りがまったく得られなくなり、飢饉となって相当数の死者が出た歴史がありましたね。

また、たねの輸入が止まったらどうなるでしょうか? 「そんなこと起きないでしょう」とはいえないです。今や、リスクは予測不能です。たねを取る地域でも気候変動の影響はありますから、同時多発的に干ばつや洪水に見舞われる可能性もありますね。未知のウイルスが種子を汚染する可能性もあるでしょう。そうなったら当然、輸入は禁止になるでしょう。その他戦争などの軍事的な有事、物流のストップ、などなど、たねが入って来なくなる状況に陥るというのはあり得ない話ではないのです。

国は、有事の時のために、農家に生産を指示してコントロールできるような体制を整えようとしているようですが、肝心なたねがないんじゃどうしようもないですよね。あるいは、たねあります!ただ多様性失ってますけど!、ということでもリスクは高いままですよね。

そもそも、100人中ほぼ1人しかいない農家の平均年齢は68歳を超える状態です。80歳を超える現役農家の方々も多いですよね。その方々に、「100人分作れ」と命令しても、ちょっと無理じゃないですかね。

国が最重要視することは、企業優位の農業政策を作ることでも、防衛費を上げてミサイルを配備強化することでもなくて、たねを自国で自給することなのではないかなぁとSeedおじさんは思います。それが本当の意味の「国防」ではないかなぁと。「草の根の国防」ね。そして、国民一人ひとりが、たねを蒔いて食べ物を作る知恵を取り戻すこと。石油資源に頼らないで作物を作る知恵がいいですね。戦争による石油資源の危機と直面している現在ですが、それはすでにコロナの頃から問題として浮上してきていたことですからね。

 

国内でのたねの自給、ここで固定種と在来種、特に世代を超えて受け継がれてきた在来種のたねの登場です。このたねたちは、昔からの伝統的農法を知っていて、そのDNAに記憶を残しています。近代育種のたねは、化学肥料や農薬などの資材が前提の環境で育種されていますし、先述したように、生き物としての生命力は弱いのです。どちらが強いか想像できますよね。

Seedおじさんの畑は、不耕起栽培で無肥料ですが、交配種は上手く育たず、固定種・在来種は元気に育ってくれています。

そして、自家採種はとても大切です。植物は毎年強く生きて、その命を未来へ繋ぐために、たねに育った環境を記憶させます。毎年同じ環境同じ農法でたねを採ると、年々たくましくなり美味しくなっていくのです。

気候変動に対応していくには、たねを採ることと、遺伝的な多様性を確保することです。

そして、地域のたねと共に、農薬や化学肥料に依存することのない伝統的農法を上手に活用すれば、温暖化の進行も止める効果があります。そうすると、国がいっている「遺伝子操作技術で革新的品種を作り温暖化に対応する」ことに頼らなくてもすむ未来がありそうですよね。

 

Seedおじさんは、自分の役目のなかで、3つの取り組みを始めました。

1つ目は、2024年から始まった「たねBOX」です。

さまざまな地域のたねが詰まった箱が、全国を旅する取り組みです。

これは、OKシードプロジェクトが参加している、ローカリゼーションデイ日本のイベント「たねの行進」をきっかけに始まったのですが、今でも「たねBOX」は日本各地を旅しています。そして、さまざまなたねたちが、さまざまな方々の愛で育てられ、繋げられています。「たねBOX」が日本各地を旅してSeedおじさんの元に戻ってくるたびに、多くのたねが、育った環境とは違う新たな土地で蒔かれるためにBOXから旅立っていったこと、そして新しいたねがBOXに仲間入りしたことを知って、とても感動します。箱を開けるたびにドキドキします。

まさに「旅するたね」なのです。たねは旅をしながら、それぞれの地域で形質を変え、やがてその地域の文化と共に在来種となっていくかも知れません。かつて江戸時代に、長野県の健命寺の住職が関西の天王寺蕪のたねを持ち帰って育てたが、環境の違いでカブにならず葉と茎が大きく育つ種類となった現在の野沢菜みたいに、地域に根ざすたねになるかも知れません。ちなみに今でもそのたねは健命寺の寺種として繋がれています。なんとも素敵なお話じゃありませんか。たねは人と人、人と地域を繋ぎ、人と旅をしながら変化していくのですね。

 

2つ目は、2025年から始まった農学校「富士山ホリスティック農学校」です。

この農学校の目的は、農業者の育成ではなく、「たねから始まる自給農」です。

石油資源に頼らず、不耕起栽培を中心にして、自らの手で自らの食べ物を育て、自らの命のたねを手にする知恵を身につける場です。現在10名の受講生が参加してくれていて、毎月気づきを得てくれているようです。このようなタイプの農学校はこれからさらに必要となってくるでしょう。

 

3つ目は、2026年3月から始めた、国内で採種された、「固定種/在来種、種子消毒なし」に限定したたねの販売です。SeedBankのたねだけではどうしても偏りがありますし、家庭菜園では限界も出てきます。そして、国内の採種農家も減り、希少な固定種・在来種が姿を消していく中、「たね屋さんと協力し合い、国内のたねを増やしていく必要がある」という考えに行き着いたからです。

幸いにも、Seedおじさんが住む静岡県に、固定種・在来種のたねを中心に扱うたね屋さん「光郷城 畑懐(こうごうせい はふう)」さんがあり、その代表の中村訓さんに協力していただくことができました。そしてSeedおじさんが拠点にしている富士宮市内のSeedCafeのSeedBankのコーナーで販売を開始しました。「たねを売ること」を目的とせず、「なぜこれが必要なのかを伝えること」を目的としたおかげで、大変多くの方がお店に足を運んでくれて、たねを自宅に連れて帰ってくれました。

昨今、ローカリゼーション、リジェネラティブ、ネイチャーポジティブ、トランジション、プラネタリーヘルス、オーガニックビレッジ、エコビレッジ、と地球軸の言葉とその実践が世界各地で進行しています。Seedおじさんもそれらの活動に参加していますが、すべてに共通して必要なのは「たね」なのです。

Seedおじさんは、ローカルなたねが地域の命を繋ぎ、地域の循環を生み、しあわせな地域経済につながり、地球環境を豊かにし、多様性ある未来へと繋げてくれると信じています。

たねが健全になれば地球環境も私たちも幸せになるのだと信じています。

 

さあ、命のたねを手にしましょう、一粒でいいから、畑のない人はプランターでいいから、命のたねをあなたの手でそっと土におろしましょう! すべてを変えるその一歩を、踏み出しませんか!

たねから持続可能な地域づくりを一緒に始めましょう!

(Seedおじさん=鈴木一正:富士山麓有機農家シードバンク/OKシードプロジェクト運営委員)

富士山麓有機農家シードバンク https://www.facebook.com/fujinomiyaseedbank/

 

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