たねまきコラム:「学校給食衛生管理基準」見直しの動きに異議あり

たねまきコラム

文部科学省が学校給食法第9条第1項で定めている「学校給食衛生基準」。
これは子どもの健康と学校給食の安全を守るために制定されており、予防原則に沿った内容で、「有害・不必要な食品添加物は給食に使わないように」という指導をしています。

しかし最近、この「学校給食衛生管理基準」に見直しの動きがあるようです。

果たして、この見直しは子どもの健康を第一に考えたものになるのでしょうか。
NPO法人メダカのがっこうの理事長であり、OKシードプロジェクト共同代表の中村陽子からの問題提起です。

「学校給食衛生管理基準」見直しの動きに異議あり/中村陽子

私がオーガニック給食の活動をしている中で、文部科学省が学校給食法第9条第1項で定めている「学校給食衛生基準」がすばらしい!ので、これを遵守するだけで、オーガニック給食がほぼ実現すると称賛していた法律があります。

その法律とは、有害若しくは不必要な着色料、保存料、漂白剤、発色剤その他の食品添加物が添加された食品、又は内容表示、消費期限及び賞味期限並びに製造業者、販売業者等の名称及び所在地、使用原材 料及び保存方法が明らかでない食品については使用しないこと。 また、可能な限り、使用原材料の原産国についての記述がある食品を選定すること。というものです。

最近、この規定の見直しの検討が求められています。その意見の趣旨とは、そもそも食品衛生法に基づいて、安全な食品添加物しか流通していないのだから、「有害若しくは不必要」な食品添加物など存在しないから、これは矛盾しているというものです。有害なものや添加物を使用しないという表現が、食品添加物などへの嫌悪感、反対意見への根拠になっているのではないか、国が安全と定めたことと大きな矛盾が生じていることが長年放置されているというものです。食品安全委員会のモニターから出た声のようです。

◆参考: https://note.com/wakilab/n/n1a44d0249e3d

ですが、この意見が全く違っていることを4点に整理して説明します。

1.そもそもこの基準が制定されたのは、1997年ですが、それ以前から子どもに最高の給食を出そうとしてきた武蔵野市では、1978年から「素性のわかる安全給食」という名の下で、「農薬・添加物は予防原則に従って回避する」という原則が建てられています。ですから、添加物に対する「忌避感」は、基準のせいではありません。私の母などは、1974年朝日新聞連載の「複合汚染」(有吉佐和子)を知ってからは、着色料などの添加物、洗剤を使うことさえせずに私を育ててくれました。
2.たとえ、国が安全と認めた添加物や農薬でも、有害なものはあります。農薬の基準は国によって違っています。日本の農薬残留基準が世界トップレベルで高いので、たとえ国の基準を守っていたとしても、健康が守られるとは限りません。また基準値は成人が対象ですが、子どもはものすごく微量であっても危険な場合があります。学校給食は子どもが対象ですから成人の基準値は通用しません。また、日本で安全だとされている添加物が、EUやアメリカでは禁止されているような例はたくさんあります。このようなリスクがあるからには、予防原則に従って有害かも知れない食品添加物を使用しない、ということは、当然ではないでしょうか。
3.たとえ百歩譲って、店頭販売の食品は見栄えや商品管理のために添加物の使用を必要悪として認めたとしても、学校給食は違います。給食の場合は、調理の日の朝8時までに納入し調理することになっていますし、全く見栄えを気にする必要はないので、添加物は不要です。一番大切なので、新鮮で、安全であることです。
4.子どもの健康を守る日本一の給食を目指している武蔵野市には、食材選定基準というものがあります。内容を紹介すると、食材は、無農薬・有機栽培・低農薬の米と野菜、非遺伝子組み換えの飼料で育てた鶏卵、日本の海水を濃縮し平釜で煮詰めた海塩、有機国産丸大豆と自家製国産米麹と伯方の塩で醸造した無添加の味噌、国産丸大豆と国産小麦と自然塩で醸造した無添加の醤油、無農薬の米と富士山の水で作った無添加の酢、米と麹だけで醸造した無添加のみりん、鹿児島県種子島のさとうきび100%の洗双糖、武蔵野の地粉うどん、国産小麦で作った麺類、化学調味料は使わないという徹底ぶりです。私は、オーガニック給食を広げる活動の中で、この基準を各自治体で導入すればよいと思い全国に紹介しているのですが、武蔵野市の給食・食育振興財団の北原理事長は、「これは、学校給食法第9条第1項の規定にそったものですよ」と教えてくれて、私は学校給食法の存在を知ったのです。この法律に従って決めれば、各自治体が武蔵野市のような食材選定基準を作るのはかなり容易だと思います。オーガニック給食を推進する法律なのです。


今、この学校給食法が後退する方向に見直されようとしている動きは、とても容認できるものではありません。子どもの健康を第一に考えて努力してきた多くの給食関係者の蓄積を、文部科学省は崩すことなく、子どもの健全育成の砦となる覚悟で、更なる高みを目指した見直しをしてもらいたいと思います。

そのために、文部科学省に意見書を出す相談としています。オーガニック給食をすでに進めている自治体、栄養士の方たちが、それぞれ意見書を出すこと、オーガニック給食を広げようと活動している市民団体は連名で出すことを考えています。もし、ご協力いただけるようでしたら、NPO法人メダカのがっこうまで、ご連絡ください。

メダカのがっこう 問い合わせフォーム

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