【NEWS!!】第4のゲノム編集トマトが届け出される

NEWS!!

ゲノム編集で糖度を高めた甘いトマト

20251030日付で、新しいゲノム編集食品が消費者庁に届け出されました。

届け出されたのはゲノム編集トマト「高糖度トマト GG-T1」で、トマトとしては4つ目の品種。届け出をしたのは、グランドグリーン株式会社という名古屋大学発のベンチャー企業です。この届け出が受理されたことで、日本で届け出されたゲノム編集食品は10品目となりました。

このゲノム編集トマトは、GG-TLという品種の中玉系トマトにCRISPR/Cas9(クリスパー・キャスナイン)という酵素を用いてゲノム編集を行って、一部の遺伝子の機能を欠損させました。その結果、果実の糖度が上昇したといいます。

消費者庁や農林水産省に提出された書類によると、ゲノム編集を行う際には外来遺伝子を挿入していますが、その後、戻し交配を行うことで外来遺伝子は残っていなかったため、日本の法律では「遺伝子組み換え作物(GMO)」には該当しないとのことです。

ちなみにこのゲノム編集トマト「高糖度トマト GG-T1」は日本の消費者庁への届け出に先立って、米国農務省(USDA)の動植物検疫局(APHIS)に「Am I Regulated?(AIR)」照会を申し立て、規制対象外であることが確認されています(2025年6月27日)。米国の植物保護法に基づいた規制の1つである「バイオテクノロジー規制サービス(BRS)」では、植物に害虫リスクをもたらす可能性のある遺伝子組み換え生物の導入を規制しています。「AIR照会」とは、「私は規制対象ですか?(Am I Regulated?)」と問い合わせるシステムで、「規制対象」と指定された場合は輸入・州間移動・環境放出などを行うことができます。ただし、実際に販売する場合には、米国食品医薬品局(FDA)での食品としての安全性審査も必要となりますが、ゲノム編集トマト「高糖度トマト GG-T1」はFDAの確認は取っていないようです。

※「ゲノム編集高糖度トマト、米国で規制対象外に」グランドグリーン

市場に出回るのはいつ?

気になるのは、このゲノム編集トマト「高糖度トマト GG-T1」は、市場に流通するのかどうかということです。いままでに届け出されたゲノム編集食品でも、トウモロコシやジャガイモなどのように「上市未定」、つまり販売予定が決まっていないものもいくつかあります。

消費者庁のウェブサイト「ゲノム編集技術応用食品及び添加物の食品衛生上の取扱要領に基づき届出された食品及び添加物一覧」をみると、ゲノム編集トマト「高糖度トマト GG-T1」は「上市未定」と記載されています(20251119日現在)。

「やれやれ、まだ発売する予定はないのだな」と胸をなで下ろしましたが、農林水産省のウェブサイト「情報提供書が提出された農林水産物の一覧」には、「販売開始予定年月=令和81月」とあります。また、同じく農林水産省には、20251118日付で「ゲノム編集飼料」としても届け出が行われました(届出されたゲノム編集飼料及び飼料添加物一覧)。

また、2023年12月21日付の日本経済新聞の記事には、「名古屋大学発スタートアップのグランドグリーン(名古屋市)は2025年、ゲノム(全遺伝情報)編集で糖度を高めて甘くしたトマトを発売する」、「国内の農業法人に委託し、24年内に中玉サイズのトマトの栽培を始める。25年春から夏にかけて収穫した数百キログラムのトマトを、インターネットを通じて販売する。地域の食品スーパーなどへの供給も検討する」などの記載があります。

つまり、この記事よりは少し予定が遅れたものの、販売に向けた準備が進められている可能性が高いようです。グランドグリーン社が種苗メーカーや食品メーカー向けに開催したセミナーは、その準備の一環であると思われます。

ゲノム編集トマト「シシリアンルージュハイギャバ」はシンガポールでも承認

これまでに届け出されたゲノム編集トマトは、サナテックライフサイエンス社(旧社名:サナテックシード社)が開発した3品目があり、いずれも果実中にGABA(γアミノ酪酸)というアミノ酸の成分が多く含まれるように遺伝子を操作したトマトでした。このうちの1つ、「シシリアンルージュハイギャバ」という品種名のミニトマトは日本で初めて届け出が行われたゲノム編集食品(20201211日)で、オンライン販売だけでなく関東圏のスーパーでも販売されています。

このゲノム編集トマト「シシリアンルージュハイギャバ」は、2020年8月12日付でUSDAのAIRプロセスを完了(規制対象であると確認)していて、フィリピン農務省でも規制対象外であることが確認されていました(202452日付)。さらにシンガポール食品庁(SFA)でも、規制対象外であると確認されました(20251030日)。

これはゲノム編集トマト「シシリアンルージュハイギャバ」が、フィリピンやシンガポールでも販売される可能性があるということです。いまや、日本はゲノム編集食品先進国となってしまいましたが、日本初のゲノム編集食品がアジアへと拡がる可能性があります。今後も注意が必要です。
(原野好正:OKシードプロジェクト副事務局長)

■参照

[消費者庁]ゲノム編集技術応用食品及び添加物の食品衛生上の取扱要領に基づき届出された食品及び添加物一覧https://www.caa.go.jp/policies/policy/standards_evaluation/bio/genome_edited_food/list

 [農林水産省]情報提供書が提出された農林水産物の一覧https://www.maff.go.jp/j/syouan/nouan/carta/tetuduki/nbt_tetuzuki.html#flow03

 [農林水産省]届出されたゲノム編集飼料及び飼料添加物一覧https://www.maff.go.jp/j/syouan/tikusui/siryo/ge_todokede.html

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