【NEWS!!】IFOAM公開書簡を受けて情勢が急展開! 〜「あきたこまちを守る会」が秋田県知事に質問書を提出〜

NEWS!!

 みなさんご存じのように、2025年11月下旬、IFOAM(国際有機農業運動連盟)という世界的に権威のある有機農業団体が、農林水産大臣と秋田県知事らに宛てて「『あきたこまちR』には多くの問題があるので政策を見直すように」という勧告(公開書簡)を送ってきました。

 このニュースを聞いた時、私は「えっ、そんなことがあり得るの?」としばらく口がきけないくらい驚きました。なぜって、それまで「あきたこまちR」の問題は、全面切替を強行した秋田県に対して、県内・県外の消費者団体や市民団体が反対の声を上げ続けていましたが、大きな進展はなく、いわば「にらみ合い」が続いていたわけです。

 それが県を飛び越し、国を飛び越し、権威ある有機農業の国際NGO(非政府組織)であるIFOAMが、「あきたこまちR」を真っ向から批判する手紙を秋田県知事と農林大臣に送ってくれたのです。海の向こうから百万の援軍がやってきたような喜びでした。

 IFOAMの手紙をよく読むと、「あきたこまちR」全面切替の内情を詳しく調査してくれたことがわかりました。そのうえで、わざわざ秋田県知事に名指しの手紙を送ってきたということは、「『あきたこまちR』全面切替」という政策が国際的に見てもいかに問題の多いものかということがわかります。

 ただし、この手紙に対して農林大臣や知事が返事を出す義務はありませんので、下手をすると無視されて終わってしまう心配もあります。そこで、2026年1月20日に「あきたこまちを守る会」(生産者と消費者の選択の権利を守るために「あきたこまちR」全面切替に反対している市民運動)と「秋田県有機農業推進協議会」(秋田県で有機農業を広げる運動をしている生産者と消費者の団体)が連名で知事に9項目の質問書を提出しました。

 以下に質問書の全文を紹介します。枠で囲んだ個所はIFOAMの手紙の該当箇所です。回答の締め切りは2026年2月28日です。回答が返ってきたらまたご報告します。

谷口吉光(秋田県立大学名誉教授/あきたこまちを守る会世話人)

IFOAM(国際有機農業運動連盟)の勧告に基づく質問書[PDF]
IFOAMからの公開書簡20251125(日本語訳)秋田県知事提出用[PDF]


IFOAM(国際有機農業運動連盟)の勧告に基づく質問書

2026年1月20日

秋田県知事
鈴木 健太 様

あきたこまちを守る会
代表世話人  田口 則芳
秋田県有機農業推進協議会
代表 相馬 喜久男

 秋田県における農林水産業の発展に向けたご努力に敬意を表します。
 さて、昨年11月25日付で、IFOAM(国際有機農業運動連盟)から秋田県知事に宛てて、別紙のような勧告が届いていると思います。
 この勧告において、IFOAMは「あきたこまちRを有機JAS認証の対象とすることを断固として拒否します」と明言しているほか、こまちRの根本的な問題について多くの指摘をしています。
 IFOAMが世界的に最も権威ある有機農業団体であることを考えると、この勧告は非常な重みを持つものと考えます。
 そこで、私たち「あきたこまちを守る会」と「秋田県有機農業推進協議会」は、IFOAMの勧告に基づいて、質問書をお送りすることにいたしました。2月28日までに文書でご回答いただきますようお願いいたします。なお、いただいた回答は、英語に翻訳した上でIFOAMに送付するほか、全国の関心ある農業者・消費者・流通関係者に公開いたします。

1.こまちRにはマンガン吸収能力が低く、劣性遺伝という品種として重大な欠点がある。

 勧告の2ページの下線①には、こまちRにはマンガン吸収能力が低く、かつ劣勢遺伝であるという品種として重大な欠点があることが指摘されていますが、これについてどのように考えますか。

(下線部①)この新品種の実験室分析から得られた実証的証拠は、少なくとも一つの重大な悪影響、すなわち作物、家畜、そして人間の健康に不可欠な微量栄養素であるマンガンの吸収率低下を示しています。さらに、「あきたこまちR」に行われた遺伝子改変(重イオンビーム照射によるOsNramp5-2遺伝子の1塩基対の破壊)は潜性(遺伝学的に劣性)です。これは「近交弱勢」(近親弱勢)を引き起こし、品種の維持を困難にする可能性があり、他の品種との交雑によっても望ましい形質が失われます。その結果、期待に応えられない作物が生まれ、農家にとっての価値が失われるだけでなく、消費者の期待にも応えられない可能性があります。

2.「こまちRは従来のあきたこまちと同等である」という県の主張は成り立たない。

 これまで、秋田県は「食味や栽培特性の点で、こまちRは従来のあきたこまちと同等である」と主張してきましたが、IFOAMが下線部①で「こまちRは品種として重大な欠点がある」と指摘していることを考えると、「こまちRは従来のあきたこまちと同等である」という主張はもはや成り立たないと思いますが、どう考えますか。

3.こまちR全面切替の手続きに、デメリットに対する認識が欠けていたのではないか。

 勧告の2ページの下線②には、こまちRのデメリットが非常に大きいことを考えると、全面切替を決定する前に、もっと綿密な調査を行うべきだったと書かれています。秋田県は、全面切替を行う前に、こまちRのデメリットについてどのような調査を行ったのでしょうか。また、そのような調査に基づいて、こまちRのデメリットについて、どのような認識を持っていましたか。

(下線部②)「あきたこまちR」の農業上のデメリットが、当初想定されていたメリットを上回る可能性が非常に高いので、このような大規模な環境放出を承認する前に、より綿密な調査を行うべきであったと、申し上げます。生化学的プロファイルがもたらす意図しない悪影響(その詳細は未だ部分的にしか解明されていません)を考慮すると、このような大規模な環境放出と市場への投入を許可する前に、「リスク評価プロトコル」を完全に適用する方が賢明であったでしょう。

4.こまちRを「あきたこまち」と表示することは消費者の選択の権利を奪う。

 こまちRは小売り段階では「あきたこまち」と表示してよいとされている点について、私たちはかねてから「消費者の選択の権利を奪う」と批判していましたが、IFOAMの勧告の下線部③にも同じことが書かれています。消費者の選択の権利は消費者基本法第二条にも明記されています。これについて、秋田県の考えをもう一度、お聞かせ下さい。

(下線部③)「あきたこまちR」が遺伝子操作された品種であることを示す表示や、その移動経路の追跡が義務付けられていないことについても、非常に懸念しています。これは、消費者が非遺伝子操作を選択するという基本的な権利を奪い、農林水産省が更なる規制が必要と判断した場合の可能性を弱めるものです。

5.こまちRを有機JAS認証の対象とすることを断固として拒否する。

 農水省はこまちRを有機JAS認証の対象とすると決めましたが、勧告の下線部④では、IFOAMはこの決定を断固拒否すると言っています。IFOAMがコーデックス委員会に強い影響力を持つことを考えると、こまちRで有機JAS認証を取得することは難しくなったと思いますが、秋田県はどう考えますか。

(下線部④)農水省が「あきたこまちR」を有機JAS認証の対象となると認めたことについても懸念しています。種子を含む有機認証製品における遺伝子操作は厳格に禁止されているという原則に基づき、「あきたこまちR」を有機JAS認証の対象とすることを断固として拒否します。そして、農水省がこの点に関する立場を変更するよう強く勧告します。

6.秋田県はみどりの食料システム戦略の「有機農業の面積25%」をどう達成するのか。

 下線部④に関連して、こまちRで有機JAS認証取得が難しくなれば、みどりの食料システム戦略に掲げられた「有機農業の面積を農地面積の25%に拡大する」という目標を達成することは不可能だと思われますが、秋田県はどのように目標を達成するお考えですか。
 また、秋田県内の有機農家に対しては従来の「あきたこまち」の種子提供を再開すべきだと思いますが、どうお考えですか。

7.こまちRの海外輸出は非常に厳しくなったのではないか。

 下線部⑤を見ると、こまちRを輸出しようとすれば、それは「日本の有機食品の評判と輸出市場は損なわれ、有機同等性協定への疑問や貿易の混乱につながる可能性があります」と、国際的に大きな問題を引き起こすだろうと書かれています。これは有機食品について書かれていますが、慣行栽培米でもこまちRを輸出すれば、国際的に秋田県の評判を落とすことになりかねないと懸念されます。
IFOAMがコーデックス委員会に強い影響力を持つことを考えると、こまちRの有機栽培米はもちろん慣行栽培米も、海外への輸出は非常に難しくなったと考えますが、秋田県はどう考えますか。

(下線部⑤)「あきたこまちR」をはじめとする、今後登場する可能性のある他の品種も含め、有機農業に非適合品種(訳注・有機農業の原則に適合しない方法・技術で作出した品種)を含めることは、有機農業コミュニティから強く反対されています。もし非適合品種を許容すれば、IFOAM有機生産・加工規範の原則及び要件との重大な矛盾が生じ、IFOAMは有機JAS規格と国際基準の整合性を再評価せざるを得なくなります。また、日本の有機食品の評判と輸出市場は損なわれ、有機同等性協定への疑問や貿易の混乱につながる可能性があります。日本の消費者の有機食品への信頼は大きく揺るがされ、日本及び海外における有機食品市場の成長を著しく阻害する可能性があります。

8.重イオンビーム技術はこれまでの品種改良の技術とは異なる「人為突然変異」である。

 こまちRは重イオンビームを使った放射線育種技術で作られました。秋田県は、重イオンビーム育種はこれまでの品種改良の延長にある主張してきましたが、IFOAMは下線部⑥で、明確にそれを否定し、有機農業としては禁止すべきと明言しています。秋田県もこれを受けて、これまでの見解を修正すべきだと思いますが、どう考えますか。

(下線部⑥) 国際的な連合体として私たちは、「遺伝子工学および育種技術に関するポジションペーパー」に記載されている通り、有機農業から新ゲノム技術(および従来の遺伝子工学)の使用を引き続き排除します。「あきたこまちR」の作出に使用されたイオンビーム技術は、前述のポジションペーパーに記載されている有機農業の原則に反するため、明らかにその禁止カテゴリーに該当します。

9.重イオンビーム以外のカドミウム対策に取り組むべきである。

 IFOAMは下線部⑦で、重イオンビームに代わるカドミウム対策として、有機農業やアグロエコロジーなど、農家の生計を支えながら、レジリアンス、生産性、生物多様性を高める対策を勧めています。秋田県は、今後こうした対策に取り組む考えはありませんか。

(下線部⑦)遺伝子工学に代わる効果的な代替手段としては、有機農業やアグロエコロジーなど、十分に裏付けられた実証済みの方法があります。これらは、農家の生計を支えながら、リジリエンス(回復力)、生産性、生物多様性を高めることが実証されています。遺伝子操作(GMO、NGTなど、呼び方は様々ですが)は広範囲にわたる技術ですが、決して万能薬と考えるべきではありません。現状では、その成果は、いわゆる持続可能性の実現という目標を全く達成していません。より包括的な解決策が必要です。

 以上です。ご回答よろしくお願いいたします。

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