[NEWS!!]ゲノム編集魚はサスティブルでない! 〜院内集会でその実態が明らかに 原野好正(OKシードプロジェクト副事務局長)

NEWS!!

2025年2月21日、衆議院第一議員会館で「ゲノム編集魚は安全でサステナブルなのか? 〜リージョナルフィッシュ社への公的支援のあり方を問う院内集会〜」が、遺伝子組み換え食品いらない!キャンペーンとOKシードプロジェクト、日本消費者連盟の主催で開催されました。
定員66名の会場は満席で、オンラインでも約200名がリアルタイムで参加。行政側からも、農林水産省、水産庁、環境省、経済産業省、中小企業庁、消費者庁の担当者が参加しました。また、主催者団体が事前にこの集会への団体賛同を募りましたが、募集期間が2か月弱という短期間にもかかわらず、全国68団体から賛同表明がありました。これは多くの市民団体が、ゲノム編集魚やそれを開発・生産・販売している企業に対して,強い不安や疑問を抱いていることの表れといえるでしょう。

集会では、市民側からの問題提起として「リージョナルフィッシュ社への公的資⾦の問題点」「宮津∞⻨のね宙ふねっとワークの活動とSLAPPレター」「ゲノム編集⿂の科学的問題点」についての報告があり、続いて関係省庁との意見交換が行われました

桁外れな公的資金投入で急成長するゲノム編集魚

印鑰智哉さん(OKシードプロジェクト事務局長)は、ゲノム編集魚の開発・生産・販売をしているベンチャー企業・リージョナルフィッシュ社に対する公的資金投入に関する問題提起が行われました。


リージョナルフィッシュ社に対しては、経済産業省や農林水産省などから推定37億円を超える資金投入が行われていると指摘。一方で、リージョナルフィッシュ社が生産・販売するゲノム編集魚(マダイ・トラフグ・ヒラメ)は、同社のECサイト(オンラインショップ)で細々と販売されているだけで、さほど利益を上げているとは考えられません。にもかかわらず企業として急成長を遂げているのは、こうした多額の公的資金が投入されているからではないかと推察されます。
米国では、遺伝子組み換えサーモンを生産していたアクアバウンティー社が経営破綻しています。アクアバウンティー社にも多額の公的資金が投入されていましたが、すべてムダになりました。リージョナルフィッシュ社に対する公的資金投入も、同様の末路をたどる可能性があります。
また、陸上養殖事業は、海上養殖とは違い、水産庁への届出だけで事業展開が可能です。地元の漁業関係者への配慮も不要で、資金力さえあればだれでも参入できます。一方で、排水基準などの法整備も整っていない現状を見ると、陸上養殖そのものにも問題がるといえるでしょう。

市民団体を恫喝するリージョナルフィッシュ社

宮津∞麦のね宙ふねっとワーク共同代表井口さんと矢野さん

宮津∞麦のね宙ふねっとワーク共同代表井口さん(左)と矢野さん(右)

京都府宮津市で活動する市民団体「宮津∞麦のね宙ふねっとワーク(ムギフネ)」の共同代表、井口NOCOさんと矢野めぐみさんからは、ムギフネの活動とリージョナルフィッシュ社からふたりに届いた書簡についての報告がありました。
リージョナルフィッシュ社は、2019年に京都府からの助成を受けて宮津市内に参入。京都府農林水産技術センター海洋センターに隣接して、ゲノム編集魚の養殖場を開設しました。すると、2021年には宮津市が、リージョナルフィッシュ社のゲノム編集トラフグの製品をふるさと納税返礼品として指定しました。
かねてよりゲノム編編集食品に疑問を持っていた井口さんたちは、自分たちが住む街でゲノム編集魚が養殖されていること、そしてふるさと納税返礼品に指定されていることに大きなショックを受けました。そこで意見をともにする仲間たちと「宮津∞麦のね宙ふねっとワーク」を設立。宮津市に対してふるさと納税返礼品からゲノム編集魚を取り下げることを要望し、市議会に請願も提出しました。その一方で、リージョナルフィッシュ社に対しても意見交換を求めてきました。
リージョナルフィッシュ社は井口さんたちからの意見交換に応じることはなく、それどころか、2023年12月から4回にわたって同社の代理人弁護士事務所から書簡が届くようになりました。その書簡には、「名誉毀損行為」「信用毀損行為」「偽計業務妨害行為」「営業妨害行為」などの理由で、井口さんたちに対して法的処置を検討しているとの記述がありました。しかし、この書簡でリージョナルフィッシュ社が指摘する「行為」は事実誤認に基づくもので、ほとんど“言いがかり”といえるものでした。
市民からの批判や反対活動を封じ込めるために行われる「SLAPP(スラップ)訴訟」というものがあります。SLAPPはStrategic Lawsuit Against Public Participationの略で、直訳すると「市民参加に対する戦略的訴訟」という意味で、威圧訴訟、恫喝訴訟、嫌がらせ訴訟などとも呼ばれます。リージョナルフィッシュ社からの書簡は、正にSLAPP訴訟をちらつかせることで、ムギフネを萎縮させ、活動を阻害することが目的のものだといえます。

弁護士上林惠理子さん

弁護士の上林惠理子さん

このような恫喝書簡への対応などについて、複数の弁護士がアドバイスを行っています。そのなかの1人、上林惠理子さんもこの院内集会に参加し、意見を述べました。上林さんは、「身近な安全や、食、環境について声を上げ、議論する、みんなで意見を出してルールを作っていくことは、民主的な社会のために非常に重要なプロセス」であり、さらに「いちばん怖いのは萎縮すること」であると指摘します。そして、市民がよりよい社会を目指して自分たちの自由や権利のために闘い、不断の努力をすることは憲法12条でも定められている市民の責務であるのだから、自信を持って発言してほしいと訴えました。

科学的安全性が確認されていないゲノム編集魚

分子生物学者の河田昌東さん

分子生物学者の河田昌東さん

分子生物学者の河田昌東さんからは、ゲノム編集魚の科学的問題点について、いくつかの重要な示唆がありました。
まず、ゲノム編集マダイ。ゲノム編集マダイは、ミオスタチン遺伝子がゲノム編集技術によって破壊されています。ミオスタチン遺伝子は筋肉の成長を抑制する遺伝子ですが、この遺伝子が破壊されることで筋肉が過剰に発達します。その結果、肉厚のマダイに成長するのです。しかし、ミオスタチン遺伝子が破壊されたことで、IGF-1(インスリン様成長遺伝子-1)が過剰生産される可能性があるといいます。IGF-1には発がん性がありますが、ゲノム編集マダイにおけるIGF-1について言及されている論文が見当たらない、と河田さんは指摘します。IGF-1が過剰生産されていないのか、もし過剰生産されている場合にはどのような影響があるのか解明すべきでしょう。
また、ゲノム編集トラフグ、ゲノム編集ヒラメは、レプチン受容体遺伝子が破壊されています。レプチンとは、脂肪細胞でつくられるホルモンの1種で、食事をすると分泌され、視床下部にある満腹中枢に作用して食欲を抑える働きがあります。しかしレプチン受容体遺伝子が破壊されると、レプチンが生産されてもそれを受け取ることができず、満腹感を感じることができません。ゲノム編集トラフグやゲノム編集ヒラメは、満腹感を感じないために餌を過剰摂取して、その結果、大きく育ちます。しかし、レプチン受容体遺伝子の破壊はほかにもさまざまな作用があり、人為的な自律神経失調症を引き起こしてしまいます。その結果、生殖能力や記憶力、運動能力などなまざまな障がいが飽きている可能性があるのです。
もしこのような問題をはらんだゲノム編集魚が環境中に逃げ出した場合、どのような影響が起こるのか、まったく予想もつきません。

ゲノム編集魚は安全ではなく、サステナブルでもない!

集会に先立ち、関係省庁に対して7項目にわたる質問状を提出していました。集会の後半では各省庁担当者からこれらの質問に対する回答が述べられ、参加者との意見交換が行われました。しかし、省庁からの回答はおざなりなもので、ときには的外れな同弁が相次ぎました(その詳細は、別稿にて報告予定)。

遺伝子組み換え食品いらない!キャンペーン代表天笠啓祐さん

遺伝子組み換え食品いらない!キャンペーン代表天笠啓祐さん

集会の最後に、天笠啓祐さん(遺伝子組み換え食品いらない!キャンペーン代表/ジャーナリスト)からは、「今日の集会で、ゲノム編集魚が安全でなく、サステナブルでもないことがはっきりとしました。そのようなものに、公的支援を続けることは辞めるべきです」との発言がありました。そして、現在進められているバイオテクノロジーは“荒っぽい技術”であるため、国としても施策を見直すべきであり、また、企業も社会的責任を踏まえた活動をするべきであるとの指摘がありました。
この集会で明らかになったように、ゲノム編集魚に関しては安全性が確認されていないことも多く、養殖時や運搬時の環境影響対策なども不充分です。また、リージョナルフィッシュ社に投入された多額の公的資金の使途も公開されておらず、その効果も検証されているとはいえません。今後、このような税金の無駄遣いが野放しにされることのないようなシステムの構築が望まれます。
院内集会の様子
(文章・写真ともに原野好正)

参照:
[長周新聞]ゲノム編集魚流通に膨大な公的支援 安全性未確認のまま全国展開 恫喝するリージョナルフィッシュ社 市民が院内集会で訴え

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