たねまきコラム:日本三景天橋立の海と命を守りたい!ムギフネ奮闘の軌跡

ゲノム編集魚問題
2月21日、「ゲノム編集魚は安全でサステナブルなのか? 〜リージョナルフィッシュ社への公的支援のあり方を問う院内集会〜」が開催されました。
ゲノム編集魚で揺れる京都府宮津市から駆けつけてくださった「麦のね宙ふねっとわーく」の共同代表である井口Nocoさんと矢野めぐみさんのお二人からのお話に、衝撃を受けた方も多いと思います。◆動画はコチラから https://youtu.be/XI2bEn22lew?t=1205(宮津∞⻨のね宙ふねっとワークの活動と SLAPP レター)

今回のたねまきコラムでは、お二人の元に届いた、リージョナルフィッシュ社からのSLAPPレターとその背景について、そして、宮津市で今起きていることを井口NOCOさんが綴ってくださいました。


”貴団体は 、当社に対し、名誉毀損行為、信用毀損行為、及び偽計業務妨害行為を行っており、また著作権侵害行為を行っています。万が一 今後も誤った事実認識に基づく情報の発信を続けられる場合は、 誠に遺憾ではございますが、法的措置を検討せざるを得ません”ー

ショッキングな出だしに驚かれた方もいらっしゃるかもしれません
え!ムギフネってそんな過激なグループなの?と誤解を生むかもしれないけれど、最後まで読んでいただけたら嬉しいです。
私たちに起こった出来事をありのままに、お伝えします。

一昨年の12月24日。夜に友人家族の子供達がたくさん集まるクリスマスパーティがありいそいそとケーキや料理の準備をしていた時に届いた一通のお手紙
毎年クリスマスカードをくれる友人かな?にしては 愛想のない無機質な封書に配達証明のはんこ。
送付元は 京都大学内の法律事務所、弁護士名義から。
こんな日になにごとやら〜?と中を開いて、冒頭の文字が目に飛び込んできました。

手がプルプルと震える。
恐怖と共に、一筋の光が見えました。

これでどれだけの魚が苦しんで死んでしまったのか、数字として公表される。
ゲノム編集技術の安全性についての問題点についても議論できる。
誰しもが平等に聞けることで、消費者の皆さんに判断してもらえる。

とうとう、今まで何度お願いしても叶わなかったリージョナルフィッシュ社と対話ができる!
されどさすがにこのようなことは初めての経験。
お金もないし、無料で相談に乗ってくださる弁護士さんや、経験豊富な方からの話をじっくりと聞いて、”ぜひ、対話の機会を設けて公の場で 話し合いましょう”とご返答しました。

しかしその後も3通の封書が届き、代理人からの文章はさらに過激さを増し、”刑事上の犯罪行為、民事責任、損害賠償、告訴を検討。
私のやっている釣りも、魚に対する拷問?
津波で被災した建物に不法侵入したとする建造物侵入罪。
これが本当なら、何度も能登へ炊き出しボランティアに行っている私たちは相当な悪人ですね。

まるで私たちが罪人であるかのように書かれ、対話に応じられない理由として、”最低限の社会通念と考えている事項すら理解いただけない” ”事業者としての遵法精神の欠如”

….静かな怒りの気持ちとともに、卑怯者!という言葉がこぼれました。

最初に結論を書かせていただくと、この文を書いている2月18日現在 正式な訴状は届いていません。

では、1年間に渡り届いたリージュナルフィッシュ社代理人弁護士からのお手紙は、何が目的だったのでしょうか。

私は日本三景 天橋立のある自然豊かな漁場に囲まれた京都府宮津市で、釣り船と釣宿、釣った魚を食べられる小さな飲食店を営んでいます。
お客さんは主に子どもたちや釣りの初心者さん。
船酔いがちょっと心配だけど、子どもに船釣りの体験をさせてあげたい!
魚も自分で捌けるようになって欲しい!という 食育に熱心な親御さん、孫と一緒にのんびり釣りしたい!というおじいちゃんおばあちゃんにも喜んでいただいています。
沖まで出なくても穏やかな宮津湾には多種多様な小さな魚が釣れますし、地元の商店でも新鮮な魚介類が手に入るし、直接港で漁師さんから魚を買うこともできる浜売りもあり、釣りや魚が大好きな人には天国のような場所。

私は子供の頃から釣りや素潜りが大好きで、日本やアジアの島々を旅しながら住処を探していたところ、丹後、宮津の海で釣って食べた魚の美味いことよ!
潜れば透き通るイカやキラキラのアジの大群にスッカリ魅了され、ここの海が世界一!と、10年前移住を決めました。
古民家の改装をボチボチやりながら数拠点で何年か過ごし、長年の夢だった釣り船の船長として待望の海と共に生きる暮らしが始まった、2021年の冬の日。
平穏な宮津の暮らしと自然を脅かす 暗雲が立ち込める出来事が起こりました。

以前から食の安全の第一人者として信頼をおいていたOKシードプロジェクト事務局長 印鑰智哉さんのSNSで、”宮津市でゲノム編集トラフグがふるさと納税返礼品に!”という、目を疑うような投稿を見ました。

販売しているのは、京都大学発のリージョナルフィッシュ=地魚 というベンチャー企業です。
宮津の関西電力エネルギー研究所の跡地内に施設ができたのは2019年、ふるさと納税返礼品が出される2年も前でした。宮津でトラフグは滅多に漁獲もないし、他に天然の美味しい地魚が沢山獲れます。
この豊かな海で陸上養殖?しかも世界でどこもやっていない、ゲノム編集をわざわざ返礼品に、なぜ、どうしてという思いが駆け巡りました。
遺伝子を操作して、太らせて新生物を作る?通常の養殖とは違う。
これは絶対やったらあかんことやん!と、海で生きるものの勘が私を突き動かし、そこから長い長い闘いが始まりました。
”争いではなく 闘い”
それはリージョナルフィッシュ社でも宮津市でもなく 自分自身との闘いの始まりでした。

印鑰さんのコメント内で知り合ったOKシードプロジェクトサポーターの宮津市民の方と市役所に駆け込み、まず企業誘致した担当者さんを訪ねました。
聞けば担当者さんは近所に住んでる方で、ニコニコしながら”国が安全と言ってるから大丈夫”
次に尋ねたふるさと納税担当者さんは、SDGsのバッジを誇らしげに胸につけ、”地場産品の基準を満たしている”
なかなか会ってくれない市長さんをどこでも市長室という制度を利用し、ようやく対話にこぎつけましたが、市の長である人のその発言には心から落胆しました。
”京都大学だし、応援している企業も有名だから大丈夫”
”発展途上国の人が肉を食べ出したらタンパク質が足らなくなる。食糧難を救うすごい技術だ!”
市長さんは穏やかで優しそうな人柄。
企業の宣伝文句をそのままに…良いことばかり聞かされたのでしょう。

一緒に市役所を訪ねた矢野さんは、無農薬で野菜やお米を作っていて、私と同じく音楽や楽しいことが大好き!子供の放課後見守りなどもされていて、地域とともに丁寧な暮らしをされているとっても素敵な女性で、すぐに仲良くなりました。1人だと怖いけれど。。。この人となら頑張れそう!
ふたりで小さな市民グループを作り、中島みゆきさんの麦の唄、宙船から拝借して命名。
無宗教、無党派の麦のね宙ふねっとワーク 通称ムギフネ
農のムギ、海のフネ として、草の根麦の根の活動を始めました。
なんの力も持たない私達だけど、このまま何もせずにはいられなかったのです。

そこからのふるさと納税返礼品から取り下げを求める署名集めや請願、参考人招致や 地魚ツアー、記者会見 等々、以前にもニュースレターなどで書かせていただいたとおりです。
(参考:https://v3.okseed.jp/gefood/fish

ゲノム編集した魚は、今どんな形なのでしょうか?

最初の届出で安全性を審査したと言っていたのは2世代 たった3匹だけです。
友人が食の安全を守る人々と言うドキュメンタリー映画が東京であることを教えてくれて、思い切って東京に行き山田正彦さんに直談判、宮津に来てください!と、講演と上映会を開きました。
映画の中で出てくる、遺伝子組み換えのとうもろこしからバラのようなトゲが出て来た話に心からゾッとしました。
ゲノム編集は遺伝子組み換えと違い、遺伝子を切るだけだから品種改良と同じ、というのが国の見解だけど、複雑に構成されている遺伝子を操作している事に変わりはなく、同等の、組み換えよりも危険性があるという専門家さんもいます。
魚も同じく遺伝子のエラーは数代後に出てくる可能性が高いのではないでしょうか。
出荷される前の姿や生存率なども出して欲しいとお願いしても、公表していただけません。
請願の審査で、数人の宮津市議会議員が陸上養殖施設の見学をしたけれど、成魚は見せませんでした。ゲノム編集された稚魚が健康に育って出荷されているなら、なぜ数を公表せず姿も見せないのでしょう。
この技術自体がまだ研究段階であり、消費者もまだどんな問題があるのか知らないうちに、表示もなく販売流通をしてしまうのは時期尚早すぎます。
せめて、100歩譲って”ゲノム編集””遺伝子操作”の食品表示をしてくれれば、消費者は選ぶこともできますが、食べたくないと思う消費者さんや、子供には食べさせたくないというお母さんなどもいる中で どんどん事業は拡大し、トラフグ、マダイに続いてヒラメを届出、国は受理しました。

私たちは1万人を超える反対署名を市長に提出したにも関わらず、なんと宮津市はふるさと納税返礼品にマダイまでも出品。
宮津で真鯛は多くの漁獲があり、遠くに見える神の島 冠島は、大きな天然マダイが釣れる釣り人の聖地です。マダイの里という保護区もあり、稚魚を放流したり禁漁期間を設けて大切に育てています。
安価で安全な天然のマダイがあるのに、わざわざ高価なゲノム編集マダイが果たして売れるのでしょうか。刺身ではどうも美味しくない、と開発した研究者からも証言が出ています。そもそも、本当に宮津で作られているのかどうかも確認する術もありません。

私は子供の頃から魚も虫もとにかく生き物が好きで、今も猫や犬と家族のように暮らしています。
筋肉の増強を抑える遺伝子をカットしてムキムキになり、骨の成長が追いつかず形が歪になったマダイ。満腹中枢の遺伝子をカットし餌を食べ続けることで大きくしたトラフグやヒラメを作り出すゲノム編集にアニマルウェルフェアの観点からも私は反対です。
人間の欲望は際限なく、野菜から魚へ、動物へ、人へ。
鳴かない犬や、大きくならない猫。
親の思い通りの容姿や優秀な、デザイナーベビーのいっちょうあがり!
痛みを感じることなく倒れるまで戦う人間兵器も作り出すことも出来る、神の領域に近づいたと言われる革新的な技術、ゲノム編集。

だからこそ、ここで立ち止まり、ざまざまな立場や分野の方々と、議論を重ねていくべきです。
命の尊さも、食も誰しも関わりのない方はいない、生きていく為の根源であり、誰しもが選べる権利があるはずです。

一貫してこのことを伝えて来て、少しづつ一緒に声を上げる人が増えてきた中で、届いた冒頭の手紙。

共同代表の矢野さんには、私に加担すれば同じく告訴する、と分断を狙ったような内容を送っています。
関わりたくない、ほとんどの人がそう思うでしょうし、矢野さんも、もう一緒にやっていくのはいやだろうなと思っていたら。。。

「なんかこのまま言われっぱなしは悔しいじゃない?」
さすが、踏まれて強くなる、一歩もひかないムギさん!

そうだよね。だってこの数年間、どれだけ踏まれて踏まれてきたか。
その度に立ち上がってきたし、その度に新しい仲間が出来た。
フネだって、お前が消えて喜ぶものに オールをまかせるな!

2025年3月8日 リージョナルフィッシュ社が事務所を置くクロスワークセンターMIYAZUにて記者会見を開催することにしました。
現在スラップ訴訟などに関心の高い弁護士さんと相談中ですので、ここで詳細な内容を公開することはできませんが、明らかに言論封殺を狙ったもの、内容には事実でないこともや誤認も多く含まれており、企業が一市民の活動を萎縮させるため、また日常生活を脅かすようなスラップ行為は看過できない重大な問題だと捉えています。

 

記者会見にはOKシードプロジェクト事務局長 印鑰智哉氏、有志の弁護士さんにもご同席いただき、2025年2月21日に開催した院内集会のご報告とともに、送付された内容証明文の全文を公開いたします。
オンラインでも参加出来ます。リージョナルフィッシュ社さんにも、招待状をお送りします。
ずっと私たちは、”どなたでもお越しください”というスタンスでやって来ましたから。

二度と私たちのような苦しい思いをする人たちが出ないように。
声を上げようとする人を封じ込めるようなことも、よく調べずにデマだとして批判したり、誹謗中傷したりすることのないように。

2月21日院内集会で遺伝子の問題に長く取り組んでいる河田昌東先生からいただいたこの言葉を、多くの方々に、後世に伝えていってほしいです。

ーゲノム編集や合成生物学による生命操作は進化の歴史を否定し、地球の生態系破壊につながる恐れがある事を自覚すべきである。

「生命」は人類だけのものではない。ー

日本三景の天橋立の美しい景色

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