【NEWS!!】回転寿司&海鮮系居酒屋チェーンはゲノム編集魚・培養魚肉を利用するのか?

NEWS!!

ネットで拡散した誤情報

回転寿司チェーンのくら寿司株式会社は、2025年5月1日に自社の公式X(旧Twitter)に下記のような投稿をしました。

《ゲノム編集魚に関する情報について》
一部のサイトやSNS等で、当社がゲノム編集を施した魚を取り扱っている、または使用を試みようとしているという誤った内容の投稿が広まっており、当社にもお問い合わせを頂戴しております。

日頃ご利用いただいておりますお客様にはご心配をおかけし大変申し訳ございません。

当社では、ゲノム編集魚を一切使用しておらず、今後もその予定はございません。また、そのような誤った内容の情報をお見かけした際は、拡散されないようお願い申し上げます。

くら寿司のこの状況を、産経新聞は「『一切使用しておりません』くら寿司、SNSで拡散した『ゲノム編集魚』提供の情報を否定」202551日付)と報道。さらに東洋経済ONLINEは「くら寿司『うちはゲノム編集魚は使ってません』声明が話題に。なぜデマは拡散したか? そして、そもそも『ゲノム編集魚』とは何なのか?」という記事を公開しています(202559日付)。

SNS上で「くら寿司がゲノム編集魚を使用している」という情報が拡散したのは、オンライン記事の紛らわしいミダシが原因と思われます。

それがM&A Onlineというオンラインサイトの「『くら寿司』に続き『スシロー』も漁業に参入 ゲノム編集で魚の品種を改良」という記事です。この記事の主旨は、①くら寿司が新会社を立ち上げて養殖事業に乗り出した、②スシローのFOOD&LIFE COMPANIES社はリージョナルフィッシュ社・プラチナバイオ社などゲノム編集ベンチャーと品種改良の共同研究を始める、というものです。つまりミダシの「ゲノム編集で魚の品種を改良」という部分はスシローにだけ関係する文言ですが、見出しだけを読んだ読者が「くら寿司もスシローもゲノム編集魚を利用してるんだ!」と勘違いしたものと思われます。

ここで注目したいのは、なぜこの情報が拡散したのかということです。くら寿司が公式声明を出さざるを得ないほどの問い合わせがにあったことからも、くら寿司がゲノム編集魚を利用することに好意的な反応ではなかったものと思われます。つまり、多くの消費者は回転寿司などでゲノム編集魚が販売されることを許容しておらず、むしろ不安を感じているということではないでしょうか。

なお、現在、市場流通しているゲノム編集魚はリージョナルフィッシュ社のマダイ・トラフグ・ヒラメだけで、リージョナルフィッシュ社のECサイト(オンラインショップ)などで購入できますが、回転寿司などでの提供は確認されていません。

日消連の公開質問状

くら寿司のデマ騒動は、同業他社である回転寿司チェーンや海鮮系居酒屋チェーンなども注目したのではないでしょうか。

そこで日本消費者連盟と遺伝子組み換え食品いらない!キャンペーンは連名で、回転寿司チェーン・海鮮系居酒屋チェーン18社に対してゲノム編集魚や培養魚肉の使用に関する質問状を送付しました(2025620日付)。ウェブサイトで公開された、回答の集計結果を見てみましょう。

回答があったのはたった5社のみ。回答期限内に返信がなかった企業に対して電話などで督促をしたそうですが、くら寿司くら寿司株式会社)・魚べい/元気寿司株式会社 Genki Global Dining Concepts)・がってん寿司株式会社アールディーシー)・回転寿しトリトン北一食品株式会社)・すしざんまい株式会社喜代村)・にぎりの徳兵衛株式会社アトム)・さくら水産株式会社テラケン)・磯丸水産SFPホールディングス株式会社)・庄や株式会社大庄)・魚民株式会社モンテローザ)・丼丸株式会社ササフネ)・笹互株式会社笹互)からは回答がありませんでした。また、かっぱ寿司カッパ・クリエイト)からはメールで回答があったものの「回答の公開は不可」との指定があったので、回答内容については確認することはできません。

それでは回答の内容を見てみましょう。

すし銚子丸株式会社銚子丸)は、ゲノム編集魚と培養魚肉の両方について「使用しない」と回答し、その理由に「安全性への疑問」と「消費者が不安を持たないかの懸念」を挙げています。また、今後、ゲノム編集魚や培養魚肉を使用した場合には「表示する」という方針を示しています。

平禄寿司株式会社焼肉坂井ホールディングス)は、「現時点では使用する予定はないが、今後の方針は決めていない」と回答し、その理由に「消費者が不安を持たないかの懸念」を挙げています。また、今後、ゲノム編集魚や培養魚肉を使用した場合には「表示する」という方針を示しています

はま寿司などを展開する株式会社 ゼンショーホールディングスは、「弊社グループにおきましては、現在、ゲノム編集魚類・培養魚肉は使用しておりません。また現時点において、使用する予定はございません」と表明。一方で今後については、「将来的な使用や表示方針については、国の法令や指針等を遵守し、お客さまと従業員の安全を第一に考えながら、科学的知見に基づき検討してまいります」と回答しています。

スシロー海鮮三崎港を展開する株式会社FOOD&LIFE COMPANIESは、「今回のご質問につきまして、現時点では弊社としましては明確な方針を定めておらず、個別に回答することは差し控えさせていただけますと幸いです」と回答しています。しかし、前述のM&A Onlineの記事にあるように、FOOD&LIFE COMPANIES社はゲノム編集ベンチャーとゲノム編集による品種改良の共同研究を行ったり、リージョナルフィッシュ社と資本提携をしています。また2024619日付朝日新聞の記事「スシロー親会社社長、魚のゲノム編集『広げていくべき』 導入は未定」で、水留浩一社長(当時)は「魚のゲノム編集技術について、『基本的には広げていくべき技術』」と述べています。そのうえで「消費者からの理解が得られるか不透明▽遺伝子組み換え食品と誤解されるリスクがある▽味に改善すべき点がある――などの理由から『我々が使うと決めているわけではない』と」会社の方針を述べています。つまり、消費者がゲノム編集魚や培養魚肉を受け入れると感じた場合は、積極的に導入する可能性は否定できません。

回転寿司チェーンや海鮮系居酒屋チェーンがゲノム編集魚・培養魚肉を使用しないためには、私たち消費者が「いらない!」「食べたくない!」と意思表示をしていくことが重要でしょう。
(原野好正/OKシードプロジェクト副事務局長)

 参照

【回答】ゲノム編集魚類・培養魚肉の使用に関する質問状(回転寿司チェーンなど18社宛)の回答(202584日)

【回答】寿司チェーン等へのゲノム編集魚類の使用に関する質問状の回答(2022119日)

 

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