今年から秋田県が提供する「あきたこまち」の種もみは従来の「あきたこまち」に変わり、重イオンビームによって一部を損なった遺伝子を持つ「あきたこまちR」に全量転換されました。重イオンビームによる遺伝子損傷はゲノム編集による遺伝子損傷と通底する問題があると考えられることから、OKシードプロジェクトではこの問題に2023年から取り組んできました。
秋田県は「あきたこまちR」は「あきたこまち」と同等であるとして、同じ銘柄として扱う品種群設定を申請し、農林水産庁(農水省)はそれを認めました。しかし、「あきたこまちR」は「あきたこまち」に対して含まれるマンガンの量がきわめて低いことが確認されており¹、「あきたこまちR」の元となった「コシヒカリ環1号」系品種では収量が減ること、病虫害にも弱いことがすでに指摘されており²、また、「あきたこまちR」を試食した少なからぬ人が「あきたこまち」とは違うという印象を持っていることがすでにわかっており、それは県が発表した食味データからも裏付けられています³。
そのような品種の区別をなくして同じ扱いにする品種群設定は消費者の知る権利を侵害するものであり、従来の「あきたこまち」の生産をする生産者の権利も踏みにじるものであるので、農水省に撤回することを求める要望書を「2025年あきたこまちR問題全国ネットワーク」⁴として7月15日に提出しました。
また、同時に食品表示を管轄する消費者庁に対しても、消費者の知る権利を妨げるものであり、不適正で不当な表示にあたるとして、必要な措置をすることを消費者庁に求める要望書を同ネットワークから同日に提出しました。
また農水省は「あきたこまちR」であっても有機認証できるとしています。有機農業にあっては遺伝子操作された種苗の利用は禁止されています。
農水省はガンマ線による放射線育種が世界各地で行われてきたことをもって、重イオンビームによる育種も同様に認められるとしていますが、しかし、重イオンビームによる育種は現在は実質的に日本でしか行われておらず、ゲノム編集と同様に遺伝子を損なう重イオンビームも種苗の育種(品種改良)に使うことは認められません。このような状況で、日本の有機認証基準では重イオンビームによる品種も認めてしまうというのは日本の有機認証に対する信頼を損なうだけであり、認めることはできません。
そこで農水省に対しては「有機 JAS」における重イオンビーム使用の育種技術の禁止措置を求める要望も含めています。
農水省や消費者庁がこれらの問題に早急に対応することを私たちは望みます。
![]() 農水省への要望書 |
![]() 消費者庁への要望書 |
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*1 秋田県の配布資料から
*2 農研機構による資料から
*3 秋田県のウェブサイト上のデータおよび「あきたこまちを守る会」6月28日県民集会での発言から
*4 2025 年「あきたこまちR」問題全国ネットワーク:2024年3月19日に「『あきたこまちを守ろう』 東京集会」に参集した全国の市民、消費者、農業、環境団体等で結成。連絡先・事務局OK シードプロジェクト