【FUKA BOTTE】消費者の6割はゲノム編集食品の表示を求めている 〜消費者庁「食品表示に関する消費者意向調査」を読む〜

FUKA BOTTE

消費者の半数以上が、「ゲノム編集食品を聞いたこともない」

消費者庁「令和6年度食品表示に関する消費者意向調査」より

消費者庁が公開した「令和6年度食品表示に関する消費者意向調査」によると、ゲノム編集食品とは「どのようなものか知っている」と回答した人はたった7.3%。「聞いたことはあるが、どのようなものか知らない」が41.1%、「聞いたこともなく、どのようなものかも知らない」が51.5%。つまり、国民の半数以上はゲノム編集食品について聞いたこともなく、どのようなものかも知らないのです。

その原因の1つは、消費者がゲノム編集食品に出会う機会が少ないためでしょう。ゲノム編集食品の届出制度が始まったのが2019年で、実際にゲノム編集トマトのオンライン販売が始まったのは2021年。関東圏の一部のスーパーでの販売が始まったのが2023年ごろからで、関東圏以外の地域ではほとんど目にすることがありません。そのため「見たことも、聞いたこともない」消費者は少なくないのでしょう。

もう1つの原因は、表示義務がないことだと思われます。たとえば、遺伝子組み換え食品の場合は表示義務があり、遺伝子組み換え作物を使用していない食品には「遺伝子組み換えではない」などの表示が可能です。豆腐や納豆を購入するときに、この「遺伝子組み換えでない」の表示を目にした消費者は少なくないでしょう。その結果、遺伝子組み換え食品に関心を持つ消費者が増えたと推測できます。

現行の制度ではゲノム編集食品には表示義務がありませんが、「令和6年度食品表示に関する消費者意向調査」では「表示はいらない」と答えた人は13.9%。一方、表示を求める声は58.4%でした。つまり国民の約6割は、ゲノム編集食品を求めていることになります。なお、この設問の文言は、「表示はいらない」という回答を引き出すために作為的な医師が読み取れますが、このことについてはこの記事の後半で検証したいと思います。

「食品表示に関する消費者意向調査」とは

「食品表示に関する消費者意向調査」は、消費者庁が2016(平成28)年度から毎年実施している調査です。これは2015年に閣議決定した第3期消費者基本計画で、食品表示法に基づく食品表示制度について消費者や事業者などへの普及啓発とともに、食品表示制度の「個別課題について順次実態を踏まえた検討を行う」ために行われるようになったものです。

調査対象は国勢調査の性別・年代・地域の比率を考慮してサンプリングされていて、2024(令和6)年度の調査では有効回答数43,247件から無作為に10,000万件を抽出してデータを求めています。設問項目は、アレルゲン表示や原材料・添加物表示など食品表示制度の理解・活用に関することや、現行の表示の課題や要望に関することです。設問は数年間共通の項目もあれば、年ごとに追加されたり、削除されるものもあります。

都合よく変遷する設問

ゲノム編集食品に関する設問は、2021(令和3)年度の調査から追加されました。

2021年から2024年までの4回の調査で共通する設問は、「あなたは、ゲノム編集技術応用食品とはどのようなものか知っていますか。」の1問のみです。

この設問に「どのようなものか知っている」と回答したのは、2021年は5.7%。翌2022年には7.3%とわずかに上昇したかに思えましたが、2023年は6.1%と下降し、2024年は7.3%と、ほぼ横ばい状態です。

あなたは、ゲノム編集技術応用食品とはどのようなものか知っていますか。
2021(令和3年) 2022(令和4年) 2023(令和5年) 2024(令和6年)
どのようなものか知っている 5.7% 7.3% 6.1% 7.3%
聞いたことはあるが、どのようなものか知らない 43.0% 43.5% 43.1% 41.1%
聞いたこともなく、どのようなものかも知らない 51.3% 49.2% 50.8% 51.5%

さて、ゲノム編集食品に関する設問は、2021年と2022年はすべて同じ設問でした。しかし、2023年以降はゲノム編集食品に対する印象や表示への意識についての設問に変化が見られます。

まずは表示に関する設問を見てみましょう。 

2021年〜2023年版
(ゲノム編集技術応用食品について「どのようなものか知っている」、「聞いたことはあるが、どのようなものか知らない」と回答された方にお伺いします。)あなたは、ゲノム編集技術応用食品(遺伝子組換え食品に該当するものを除く)又はそれを原材料とする食品を販売する際の表示について、どのように考えますか。

 2024年版
ゲノム編集技術応用食品については、ゲノム編集技術を用いたものか、従来の品種改良技術を用いたものかを判別するための実効的な検査法が確立されていません。そのため、表示違反かどうかの科学的な検証が困難であること等の課題があり、罰則を伴う表示の義務付けは行っていません。一方、事業者において、任意でゲノム編集技術応用食品に関する表示が行われています。このことを踏まえて、あなたは、ゲノム編集技術応用食品又はそれを原材料とする食品を販売する際の表示について、どのように思いますか。

消費者庁「令和6年度食品表示に関する消費者意向調査」より

2023年までは表示に関する質問を、ゲノム編集食品について「どのようなものか知っている」、「聞いたことはあるが、どのようなものか知らない」と回答した人だけを対象としていました。つまり、「聞いたこともなく、どのようなものかも知らない」と回答した人は対象としていません。知らないと回答した人を対象から外した理由についてはわかりませんが、知らない人は表示の必要性について判断できないと考えたのでしょうか。

2024年版では回答対象者は、全員となります。その一方で、「ゲノム編集技術応用食品については、ゲノム編集技術を用いたものか、従来の品種改良技術を用いたものかを判別するための実効的な検査法が確立されていません。そのため、表示違反かどうかの科学的な検証が困難であること等の課題があり、罰則を伴う表示の義務付けは行っていません。一方、事業者において、任意でゲノム編集技術応用食品に関する表示が行われています。」と長い前置きが記載されました。まるで「ゲノム編集かどうかを判別する検査法が確立されていないけど、それでもあなたは表示を求めますか?」と訊いているように読めます。そのためなのか、「表示はいらない」年代別の回答を見ると10代男性=26.0%、10代女性=19.0%が突出して多いことがわかります(この調査の「10代」とは15歳〜19歳が対象)。

しかし全体としては、このような前置きをしたにもかかわらず、「表示はいらない」と回答した人はわずか13.9%で、58.4%の人は表示を求めています。

あなたは、ゲノム編集技術応用食品(遺伝子組換え食品に該当するものを除く)又はそれを原材料とする食品を販売する際の表示について、どのように考えますか。
2021(令和3年) 2022(令和4年) 2023(令和5年) 2024(令和6年)
ゲノム編集技術応用食品は、通常の育種と変わらず、使用した旨の表示はいらない 8.1% 8.9% 10.5%
ゲノム編集技術応用食品であることを表示してほしいが、表示しなかった場合の罰則(懲役又は罰金)までは求めない 14.1% 15.4% 15.7%
ゲノム編集技術応用食品が食品の原材料に占める重量割合上位1位などの場合は、使用した旨を表示してほしい 13.9% 13.1% 13.0%
ゲノム編集技術応用食品を使用した場合は、必ずすべて表示してほしい 31.9% 33.0% 27.0%
特段、意見はない 32.1% 29.6% 33.9%

「ゲノム編集は安全」と刷り込む設問も

2023年から追加された設問に、次のようなものがあります。

2023年〜2024年版
ゲノム編集技術応用食品について「どのようなものか知っている」、「聞いたことはあるが、どのようなものか知らない」と回答された方にお伺いします。あなたは、遺伝子組換え食品に該当しないゲノム編集技術応用食品は、自然界で起こる範囲内の変異を起こしたものであり、その安全性も従来の育種技術を用いたものと同程度であると整理されていることを知っていますか。

この設問に対して「はい」と回答した人は、2023年では22.0%、2024年は26.9%でした。この数字だけを見ると、ゲノム編集食品について「知っている」「聞いたことがある」と回答した人でも、ゲノム編集食品についての正しい知識を持っている人は3割に満たないと読めます。しかし、その解釈は正しいのでしょうか。

あなたは、遺伝子組換え食品に該当しないゲノム編集技術応用食品は、自然界で起こる範囲内の変異を起こしたものであり、その安全性も従来の育種技術を用いたものと同程度であると整理されていることを知っていますか。
2021(令和3年) 2022(令和4年) 2023(令和5年) 2024(令和6年)
はい 22.0% 26.9%
いいえ 78.0% 73.1%

もし私がこのアンケートの回答者であった場合、どのように回答すべきか迷ってしまいます。確かに日本政府は「ゲノム編集は自然突然変異と同じ」「ゲノム編集による育種(品種改良)」は自然交配や選抜による品種改良と同じ」と主張しています。その意味では「整理されていることを知っていますか」と問われれば、「はい」と回答してもよいかもしれません。しかし私は「ゲノム編集による遺伝子操作と自然突然変異は異なる」ことを知っていますし、「ゲノム編集による品種改良と同じことを、従来の育種で再現することは不可能に近い」ことを知っています。そのため、この設問に素直に「はい」と回答できるのか悩ましいところです。

いずれにしろ、この設問からは「ゲノム編集食品は安全です」となんとか伝えたいという思惑が見え隠れしています。しかし、前述したとおり、消費者の約6割はゲノム編集食品の表示を求めているのは事実です。消費者庁はこの事実を真摯に受け止め、ゲノム編集食品表示の義務化を進めるべきではないでしょうか。

原野好正(OKシードプロジェクト副事務局長)

参考リンク

令和3年度食品表示に関する消費者意向調査
令和4年度食品表示に関する消費者意向調査
令和5年度食品表示に関する消費者意向調査
令和6年度食品表示に関する消費者意向調査

 

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