【たねまきコラム】種苗交換会でOKシードマーク付のタネを出品しました

たねまきコラム

【たねまきコラム】第4回目は、OKシードプロジェクト共同代表で、日本有機農業研究会副理事長でもある久保田裕子さんからコラムが届きました!
日本有機農業研究会(日有研)全国大会の中で行われた「種苗交換会」の様子をレポートしていただきましたが、タネにOKシードマークを付ける手順や、交換会の様子など、集まったタネに「物語」があることを感じます。
タネの交換でその物語は更に広がり、命がつながっていきます。各地でタネの交換会をこれから予定されている方、タネにOKシードマークを付けたい方なども、ぜひ当コラムを参考にしてくださいね!

種苗交換会でOKシードマーク付のタネを出品しました / 久保田裕子(OKシードプロジェクト共同代表、日本有機農業研究会副理事)

2023年2月、3年ぶりにリアルで日本有機農業研究会(日有研)全国大会が福島県二本松市で開かれました(全国有機農業の集い in 福島)。大会2日目の朝7:30から恒例の「種苗交換会」が始まりました。現地見学会を控えていたのでふだんの大会よりやや少なめの約30人がそれぞれタネを持参して集まり、タネも持ってこない人もカンパ(主催する日本有機農業研究会種苗ネットワークの活動に寄付)でタネを入手できるので、朝食後に三々五々集まってきました。
「有機農業の成否は『タネ』(種子と品種)にある」、「有機農業に向くタネを持ち寄り交換しよう」と、品種に目を向けたのは1978年頃の幹事会(日有研創立は1971年)。有機農業の先駆者たちが第一回「種苗交換会」を金子美登さん(昨年急逝)の霜里農場(埼玉県小川町)を会場にして、それぞれ代々各農家に伝わってきた「秘伝の種」や「自慢のタネ」を持ち寄り開いたのは1982年3月のことでした。以来、毎年、あるいは全国大会、種苗研修会などで「種苗交換会」を開いています。

❖「種苗交換会」の方法と手順
①受付、②事前に「種苗繁殖カード」に持参したタネの情報を書き込んでおく、会場では、まず、③各自が持ち寄ったタネを机の上に並べます。並べ終わったら、④司会により、持ち寄ったタネについて持参者が自分のタネの説明を順番にしていきます。今回、司会は林重孝(しげのり)さん(日有研副理事長、種苗部・種苗熱地ワーク担当理事)でした。
持参したタネの説明では、作物や品種の特徴、栽培方法の要点、食べ方などを簡単に話します(時間があれば、詳しい説明になり、技術情報の交換の場にもなります)。ひととおり説明が終わったら、⑤司会の合図で、持参者はもらいたいタネを「種苗繁殖カード」の「頒布先」の名前記入欄に名前を書き込んだ上で、「一袋」をもらいます。
この種苗交換会は「自家採種運動」の一環として行っているので、交換して入手するタネは、少量の子袋であり、いわば「元種」です。もらい受けたタネを自分の畑で栽培し、増やしていきます。そうすることで、タネが自分の畑(環境条件、土壌条件等)になじむことにもなります。
⑥持参者の交換が一通り終わったら、持参しなかった人のもらい受けの時間になります(かなりのタネの袋は残っています)。ほしいタネを、自分の名前を「種子繁殖カード」に書き込んだ上で一袋ずつ取ります。取り終わったら、⑦後かたづけをして終了です。

❖OKシードマークを付けて出品
私は自宅の庭で採種したタネ4種類に「OKシードマーク」を付けて、今回の種苗交換会に出品しました。狭い庭ですが、すでにOKシードマークプロジェクトの「OKシードマーク使用登録」をしています。その「OKシードマーク使用規程」には、OKシードマークをつける際には、「ゲノム編集でない」ということの「合理的根拠」となる資料を保持しなければならないとあります。現在のところ、ゲノム編集かどうかは、作物名、品種名を明記することで判別できます。
そこで、OKシードプロジェクトのウェブサイトから「種子(たね)の記録票(簡易版)」の用紙を印刷し、1品種について1枚ずつ「根拠資料」をつくりました。
記入する項目は、①採種場所(農場名、所在地)、②OKシードマーク使用登録者名、③作物名、④品種名、⑤(種苗法)品種登録の有無、⑥タネの来歴(入手先、入手経路)、特徴、⑦タネの採種年月、その他、栽培過程での農薬等の使用の有無や農法など。

私が用意したタネは、次の4種類です。
小松菜  「城南小松菜」という品種で、有機農業の先駆者的な実践者の一人大平農園・大平博四さん(故人)が1982年の日有研の第1回種苗交換会に持ち込んだ「自慢の種」です。私の庭では10数年前に種苗交換会でいただいたものを栽培し続けています。
コブ高菜  これも、もとは種苗交換会で入手したもので、長崎県の岩崎政利さん(種の自然農園、有機農家)が地元の伝統野菜である「雲仙こぶ高菜」を復活させて種苗交換会で提供してくださった高菜の一種です。
ハブ草   タネをそのまま、あるいは煎って、ハブ茶の原料にします。漢方で使われる決明子(ケツメイシ)とほぼ同種です。
のらぼう菜  「野良にぼうぼうと生えている」から、のらぼう菜と呼ばれたという、関東地方で栽培されている野生味あふれるかき菜の一種。2月から3月の時期に葉物野菜に重宝します。
のらぼう菜は小松菜はいずれもアブラナ科アブラナ属ですが、交雑はしません。また、小松菜とコブ高菜、のらぼう菜は、少しずつ開花時期が違います。ただ、タネの形状は見分けがつかないので、保存時、小分け時には混じらないよう注意が必要です。

❖今年の種苗交換会で紹介されたタネたち
30人近くのタネ持参者からは、それぞれ「自慢のタネ」が出品されました。口々に、「この大豆は最高においしい」、「この大豆は世界一」、「枝豆は死ぬほどおいしい」などの説明が相次ぎ、これは「手前味噌」ならぬ「手前大豆ではないか」などの冗談も。それぞれが地域の気象条件や土壌条件などになじんだものになっているのでしょう。

今回、日有研の林重孝さんは10種類ぐらいのタネを持参し、提供してくださいました。タネの説明の一部を紹介します。
マイクロトマト:正式名はマッツワイルドチェリー  ミニトマトより小粒、甘味は強く、耐病性も強い。耐暑性もあり、35度以上の高温でも花落ちしない。側枝が発生しやすいので、風通しを良くするため、膝くらいの高さまではかくが、それ以上は伸ばして脇芽の一房も収穫する。粒取りは手間がかかるので、房取りしている。
五木の赤大根:これは、鹿児島大会の種苗交換会(2001年)でいただいたものを、自家採種したもの。もともとは皮は綺麗な赤で、中は白いものを母本選別を繰り返しして、中まで赤くしているところです。まだばらつきがあるので、中まで赤いものから採種して下さい。秋蒔き。『現代農業』で紹介されました。
黒種の衣笠インゲン:愛知県の久野さんよりいただいた、やっと見つけた我が家に合うインゲンです。春播き。夏播きの秋どりの両方に使えます。豆の長さは12から13センチくらいで丸莢。枝の繁りは他のインゲンに比べて少ない。栽培法は一般のインゲンに準じます。夏蒔きは7月中下旬。豆なので無肥料で良い。
ルッコラ:サラダやお浸し炒め物などによい。少し辛味があってゴマのような味がする。イタリアン料理によく使われる。冬を除いて一年中播種できるアブラナ科の野菜だが、他のアブラナ科と交雑しません。
バナナウリ:作りやすい、当たり外れが少ない、洋梨のように首が細くなっているバナナのようなにおいと味がする。一般的なマクワウリのようなサクサク感はありません。
落花生ジャワ13号:これは静岡県の高橋久さんからいただいた小粒の落花生。大粒の落花生に比べて放任でも実がつきます。土寄せをすると実がさらに多くつきます。味も良いです。播種期は5月中下旬。渋皮は白です。赤い渋皮が入っていたら別の品種なので、タネに残さないで食べてしまってください。
土用小豆:当地では「照り落花の湿気小豆」という言い伝えがあり、干ばつの年は落花生、雨の多い年は小豆がよくとれると言われています。夏の土用に種まきをするので名前が付けられています。粒は小さいですが、多収で作りやすき味はおいしい。播種期は7月20日前後、あまり早蒔きすると収量が少ない。収穫期は11月の中下旬。

福島で畑で大震災後に和棉を栽培している藤倉紀美子さんは、和棉のタネを持ってきてくださいました。糸車で棉をつむぐところから始めて、自宅には大きな機織り機を何台も置いて、木綿布を制作しておられます。
二本松有機農業研究会の大内信一さんからは、パンダ豆。煮豆で美味しく、花も美しいと説明書きがあります。他にはキビ、これは黄色が鮮やかで餅やご飯に使うと映えるということです。
神奈川県鎌倉市の「NPO鎌倉広町の森市民の会」の管理する都市林公園で子どもたちに田畑の指導をしている森田邦彦さんは、「ひょうたんカボチャ」を持参。これの説明には、「何年か前の種苗交換会で入手したものの何代か後の子孫です。形はかぼちゃらしくありませんが、美味しいかぼちゃです。播種時期は4月にポット仕立て、15センチくらいで定植、堆肥が大好きです。」と書かれていました。
ブドウの穂木(挿し木用の枝)「フレドニア」という澤登晴雄さん(ブドウの育種家、故人)にいただいた無農薬でできる品種やその他めずらしい作物、品種も並び、楽しいひとときでした。

関東地方では毎年、農家持ち回りで「関東たねとりくらぶ」(種苗交換会)を継続的に開いています。各地でさまざまな種苗交換会やタネの交換会、タネの図書館などが活動しています。そしてまた、「富士山麓有機農家シードバンク」の鈴木一正さんが提唱するように、「棚ひとつからのシードバンク」も持ちたいですね。
以上

《参考》
◆【たねまきコラム】第1回:「富士山麓有機農家シードバンク」の鈴木一正さん
シードバンク「命のたねを未来へ繋げよう」(2022年11月)

関連してコチラも参考になります。
◆『種から育てよう―有機のタネの採り方、育て方』
(日本有機農業研究会発行、OKシードプロジェクトオンラインショップで発売中)

◆OKシードマークとは?
https://okseed.jp/okseedmark/

タイトルとURLをコピーしました