OKシードプロジェクトの創立メンバーの一人でもあり、富士山麓で有機農家によるシードバンクを創立し活動している鈴木一正さんから、コラムが届きました!
【たねまきコラム】第1回目のテーマは、まさに「たね」です。
なぜ、今「シードバンク」が必要なのでしょうか?
そして、食の危機を迎えた今、わたしたちになにができるのでしょうか?
富士宮市の有機農家が集まり、在来種・伝統野菜を中心にたねを採り、保存し、交換し、未来へつなぐ。鈴木さんの活動は、まさにタネを蒔くように地域全体に広がっています。
みなさんもぜひ、地域でシードバンクの活動をはじめてみませんか?
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シードバンク「命のたねを未来へ繋げよう」
昨日は何を食べましたか?
ご飯ですか?パンですか?パスタ?
お米は稲のたねですよね、パンは小麦のたね、パスタ、ラーメン、うどんも。
日本人のソウルフードの味噌汁は大豆や麦のたね、醤油も。納豆や豆腐も大豆のたね。
私の大好きなお酒も麦や米のたねが無いと飲めません。
そうなんです、私たちは毎日たねを食べて生きているのです。
たねが無ければ私もあなたの命も無いのです。
一杯のお茶碗に何粒のお米のたねが入っていますか?
一杯のお味噌汁に何粒の大豆のたねが使われていますか?
一枚のパンに何粒の小麦のたねが必要ですか?…
考えてみたことがありますか?
この星は一粒万倍の星。
たねは私たちに豊富な恵みを与えてくれる地球からのギフトなのです。
皆さんは野菜はどこで買いますか?
多くの人がスーパーマーケットで買うでしょう。
〇〇産とか県内産とか産地が書いてありますよね。
でもその野菜のたねがほとんど海外産だったらどう思いますか?
産地表示は栽培された場所であって、たねは含まれないのです。
市場に流通する野菜の約90%が海外で採種されたたねで育てられています。
私たちの命はいつの間にか海外依存型になっていたのですね。
しかも、そのほとんどが交配種(F1種)で、メンデルの法則と雑種強勢という自然界の不思議な現象で、1代目は形質が揃い成長も旺盛になりますが、2代目は形質も成長も不揃い(分離の法則)になるのです。 更に雄性不稔性という親株を使うことが主流になり、たねを付けない野菜が増えてきました。たね企業はこの性質を上手に使い、新品種を改良し、企業の権利をつけて販売するのです。
このようなことから農家はたねを採らずにたね企業から買うようになったのです。
そんな中で昔から繋がれてきた日本中の地域のたね(在来種)が姿を消し続けています。
在来種には繋いできてくれた先人の思いや、伝統的な食、農法、文化、祈りの記憶が、その小さく神秘的なタイムカプセルに刻まれているのです。
農家の高齢化が進み、後継者がいないことから、おじいちゃんおばあちゃんが大切にひっそりと 繋いできたたねが凄い速さで消えていっています。一度消えてしまったたねは二度と復活できません。その記憶と共に。
そのたね(命のたね)を食べて生きているから、私たちはこの星の全ての繋がりの中で生きていることをたねと共有できていたのです。それが企業のたね(お金のたね)に置き換わったことで、食と農が分断化し、多様性を喪失し、それが命と社会の繋がりの分断化へと、分かち合いではなく奪い合いの経済システムへと変化した一因ではないかと私は考えています。
さらに、現在私たちは多重化する危機の真っ只中にいます。地球規模の気候危機、経済危機、戦争、コロナ禍、食糧危機。。。
海外依存のたねが輸入されなくなる日も本当に近いかも知れません。
無関心でいられても無関係ではいられないこの時を迎えて私たちには何ができるのでしょうか。
私は、「地域のたねが鍵を握る」と考えています。
私たちは命のたね(在来種)が繋がれてきた過去に戻ることはできませんが、未来へ繋ぐことはできるのです。
在来種は育った環境をその小さなタイムカプセルに記憶し、よりその環境に順応しようと命の多様性を拡げていくのです。その豊富な記憶が織りなすことによって厳しい環境にも耐えうるように変化していくのです。在来種が繋がれてきた、化石燃料や化学肥料、農薬を使わない伝統農法の知恵も記憶しているのです。このたねが、土壌微生物と生物多様性を豊かにし、私たちの生命、社会、文化を健全化し、やがてこの地球を蘇生させてくれるのではないかと考えています。
残念ながら今現在日本には命のたねを守る法律がありません。あるのは企業のお金のたねを守る法律です。命のたねを守る法律が作られることも大切なことです。しかし私は、各地域が現場レベ ルで地域のたねを守ることこそが食と農と命を守る最大の策であると考えます。
そんな、命のたねと共に生きる社会、つまり地域性・多様性豊かな環境を作ることを始めませんか? 各地域で、その地域の命のたねを守り未来へ繋げる小さなシードバンクを仲間と始めるのです。
畑がなくてもプランターで繋いでいる人もいます。その環境や時間も無くても、繋がり合えばできることはたくさんあります。
たねを瓶に入れてラベルや記録を取ったり、SNSで発信しあったり、栽培を手伝ったり、あなた のスキルを生かしあえばいいのです。それが地域性と多様性なのです。
棚一つとリサイクル瓶があれば始められます。私もそこから始めました。冷蔵設備などの特別な保存装置は要りません。大切なのは毎年たねを繋いで循環させることなのです。私たちの命が巡ることと同じです。
私たちはすべての繋がりの中で生きています。シードバンクで大切なのはそれぞれが繋がり合うこと。 全国のシードバンクが繋がり合うことで命とたねの多様性を拡げ深めることが可能になります。
これから私は呼びかけていきます。みなさんも繋がりあって命のたねを未来へ繋げましょう。たねを大切にすることは、自分、家族、地球、子供たちの未来を大切にすることに繋がります。
命のたねを未来へ繋げよう!
富士山麓有機農家シードバンク 鈴木一正
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