【たねまきコラム】静岡県議会から国への「ゲノム編集食品等の表示を求める意見書」が採択

たねまきコラム

固定種、在来種の地域に根付いたタネを守ることを目的に、「シードライブラリー(種の図書館)」の活動を静岡県浜松市内で進めている「はままつ種ねっとわーく」代表の川田忍さん。「ヘチマおじさん」としても地元で活躍されています。
【たねまきコラム】第8回は、川田さんの活動の原点や現在までの取り組み、そしてその「きっかけ」について寄稿していただきました。
今、静岡県では「タネを守る動き」が着実に広がっており、9月の県議会では「静岡県議会から国への「ゲノム編集食品等の表示を求める意見書」が採択されました。静岡県で生まれたローカリゼーション。この動きに未来へのヒントがたくさん詰まっています!

「静岡県議会から国への「ゲノム編集食品等の表示を求める意見書」が採択」/川田忍(はままつ種ねっとわーく代表)

はままつ種ねっとわーくは、在来種・固定種の自家採取の種を貸し出して、もしも種が採れたら少し返却してもらう「シードライブラリー(種の図書館)」を浜松市のはまゆう図書館とあいホールの図書スペースに場所を借りて設置と管理をしています。

活動のきっかけは、2019年に日本消費者連盟の呼びかけで行われた「ゲノム編集食品に表示を求める署名」でゲノム編集の食品が規制や表示がなく流通することを知ったことでした。私は自然栽培で農家を営んでいて、農薬や化学肥料を使わない栽培と自家採種をしていましたので、食品に表示がされないのであればきっと種にも表示がされないだろう、種が交雑することや種が自然に拡散することを不安に感じました。大根・小松菜・ブロッコリーのアブラナ科の野菜やカボチャなどのウリ科の野菜は、特に交雑しやすいです。ゲノム編集された種が表示もなく流通したら、私が自家採取した種も知らずにゲノム編集の種と交雑しているかもしれません。

ゲノム編集で遺伝子を操作した種が自然に拡散してしまって大丈夫なんだろうか?そんなことを思いました。

あまりに大きな話なので、不安に感じていても何をしたらよいのかわかりません。わからなければわかる人を見つけよう、そして一緒に考えてもらおうと思い、2019年10月に、私たちの食を守ろう!「種と食と農のお話」と題した学習会を、印鑰智哉氏を講師にお迎えして開催しました。学習会の参加者の内から10名の一緒に考えてくれる人を見つけることができました。種は食の基礎なのでたくさんの人とつながることが出来るだろうとの考えから種の活動をすることになり、現在の「シードライブラリー(種の図書館)」の活動につながりました。

種の活動の先輩の富士山麓有機農家シードバンク(代表 鈴木一正)のシードおじさんの何気ない一言で、ヘチマおじさんとして自家採取のヘチマの種を配布して、ヘチマたわしを作ってマイクロプラスチックを減らす「地元のヘチマでマイクロプラスチックを減らさまいか!」活動が生まれました。
ゲノム編集の不安感が、いつのまにかヘチマの種を配るヘチマおじさんになっていました。その間にも種子法は廃止になって、種苗法は改正になって農家の種にまつわる環境は次々に変化し、ゲノム編集のミニトマトは流通が始まりました。

しかし種の力は凄かった! シードおじさんにNPO法人しずおかオーガニックウェブ(代表 吉田茂)とつなげてもらい、ヘチマの種にプラムフィールド(代表 馬場利子)とつなげてもらって、無力に感じていた署名活動に少し光が見えてきました。
温暖な土地柄のせいなのか動きが鈍いと感じていた静岡県でも、小さな活動は動いていました。

2022年9月3日、「ゲノム編集食品」の勉強会が偶然、静岡県内の2か所で行われました。
午前中には富士市でNPO法人ふじのくに学校給食を考える会が主催する学習会で、講師は天笠啓祐氏(日本消費者連盟顧問・環境ジャーナリスト)、午後には静岡市でプラムフィールドが主催する学習会で、講師は中村陽子氏(OKフードプロジェクト共同代表)でした。
ゲノム編集とはどんな技術か、日本では表示のないまま流通が始まっている、ゲノム編集トマトの苗を教育現場に無料配布する動きがあること等を学びました。

県内の食の安全を志す人たちで、10月に「静岡県オーガニックプロジェクト」が立ち上がりました。まずゲノム編集食品についてより多くの人に関心を持ってもらうために、オーガニック給食を目指す仲間とも連携し、全国の「ゲノム編集トマトの苗を受け取らないで」の動きに合わせて、静岡県内全市町の教育長に要望書を届ける動きが始まり、はままつ種ねっとわーくも参加して浜松市教育委員会に要望書を届けました。
2023年3月に全35市町から回答を得たうち、「受け取らない」が22、「まだ判断できない」などの「その他」が13、「受け取る」はゼロでした。

4月には静岡県議会から国への「ゲノム編集食品等の表示を求める意見書」を提出するよう働きかける活動を、「NPO法人しずおかオーガニックウェブ」のゲノム編集表示プロジェクトとして取り組むことになりました。そして9月には国への意見書が採択されました。これを受けて、地域でも市町議会への働きかけが始まっています。
浜松市でも、浜松市議会から国への「ゲノム編集食品等の表示を求める意見書」が採択されることを目指して動き始めています。浜松市は政令指定都市で広いので、他の区の活動はなかなか伝わりません。こどもたちの食の未来を考えるいろいろな立場の人たちと手をつなぎながら前進しています。

こうした動きを支えたのは、市民への啓発活動として「ゲノム編集食品」の漫画チラシを作成して、映画上映会、学習会等で配布して賛同を広げたことが大きかったです。
「表示を求めることは消費者の知る権利であり、国の方針に対して地方から意見書を出すことができる」と伝えながら、署名活動を進めてきました。
静岡県の「意見書」提出をきっかけに全国で運動が広がり、国が「ゲノム編集食品の届出と表示」を義務付けることを願っています。

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