OKシードプロジェクトの3年を振り返る

OKシードプロジェクトについて

 この7月でOKシードプロジェクトは開始から3年を終え、4年目の挑戦に入ります。OKシードプロジェクトは2020年12月の種苗法改正直後、サナテックシード社(現・サナテックライフサイエンス社)がゲノム編集トマト、シシリアンルージュハイギャバを政府に届け出した事態を受けて、タネの問題に関わってきた人たちによる相談会を開始、半年を経て、2021年7月20日、活動を開始しました。

1. OKシードマークの発行

OKシードマーク申請状況OKシードカード OKシードプロジェクトはこのOKシードマークを食品に表示することで、消費者がゲノム編集など遺伝子操作されていない食品を選ぶ権利を守るために生まれました。
 このマークはタネ、収穫物、加工食品などで無料で使うことができます(使用には申請が必要→詳細)。

 この3年間に北海道から沖縄まで200を越える生産者、食品会社やお店などに使用申請をいただいています(右地図参照。2024年6月21日の状況)。

 今年からは食品を扱う会社の方たちへの働きかけを本格化させ、生産者の方たちが作った成果物により効率的に表示できる方法を開拓しようと検討しています。
 よりOKシードマークを広げられるようにOKシードカードも作成しました(右写真)。
 まだまだ町でOKシードマークをよく見るというところまで実現できていませんが、ゲノム編集食品の問題に一人でも多くの人が気がつけるように、少しでも早くOKシードマークを広げられるように活動を進めていきます。

2. 小学校でのゲノム編集トマト苗無償配布問題

ゲノム編集トマト苗受け取り拒否自治体のある都道府県2024年6月段階 OKシードプロジェクトの活動を始めるやいなや、飛び込んできたニュースは、サナテックシード株式会社(当時)がゲノム編集したトマトの苗を小学校に無償配布するという計画を持っているというものでした。トマトの苗を育てる実習が全国の小学校で広く行われていますが、そのトマトをゲノム編集のものにしてしまう、という計画です。十分な問題も知らせずに、半ば強制で広められたら大変だということで、オンラインでの全国交流会などの開催を通じて、全国に対策を呼びかけました。
 「北海道食といのちの会」は北海道全自治体179に要望書を送り、54の自治体がサナテックシード株式会社からのゲノム編集トマトは受け取らないという返答を得るという成果をあげました。この経験はたちまち全国で共有され、全国各地の自治体に働きかけが始まって、その結果、全国で352の自治体が受け取らないことを表明するまでになりました。実質的にこの計画はほぼ挫折したと考えられます。詳細
 もっともこれで問題は解決したわけではなく、最近では一部のスーパーでゲノム編集された「シシリアンルージュハイギャバ」の販売が始まってしまいました。1パック500円を超し、とても高価なので買う人は少ないと思われますが、高級な有機トマトと勘違いして購入する人もいると思われます。決して、それは有機トマトなどではなく、多くの市民が望まないトマトであることを売る側にも買う側にも知らせていく必要があります。

3. 京都府宮津市でのゲノム編集養殖場とふるさと納税返礼品採用について

【中央から右にかけて奥に見える養殖場の前で、静かにスタンディングアピールを行うツアー参加者たち】
宮津市リージョナルフィッシュ社養殖場前で
【宮津市の幹部(左奥)に市長宛要望書を手渡し、意見交換するツアーメンバーたち
宮津市の幹部(左奥)に市長宛要望書を提出

 天橋立など美しい海岸で有名な宮津市でリージョナルフィッシュ社によって、ゲノム編集されたマダイやトラフグが養殖されており、宮津市のふるさと納税の返礼品にも採用されていることがわかりました。ゲノム編集は魚の正常な生育を阻んでしまうため、この養殖は海外の団体から拷問養殖であると非難されており、健康や生態系への影響も懸念されます。それにも関わらず、国は公金を注ぎ込み、宮津市はふるさと納税の返礼品に採用することで、国や市をあげて、リージョナルフィッシュ社を支えています。この問題に宮津市の市民が声をあげました。OKシードプロジェクトは市民グループ「麦のね宙ふねっとワーク」と協力しながらその問題を追及しています。
 しかし、リージョナルフィッシュ社はまったく市民からの声に応えることはなく、情報は開示せず、宮津市も国も動こうとしません。昨年は東京の新宿高島屋でリージョナルフィッシュ社の製品が販売されることもありました。
 リージョナルフィッシュ社のゲノム編集養殖魚はオンラインショップなどで販売されていますが、値段は極めて高く、ほとんど売れていないと思われます。それでもリージョナルフィッシュ社はどんどん事業を拡大する姿勢を見せています。事業は赤字のはずなのになぜ拡大できるのか、とても疑問になると思いますが、そこには巨額の公金が流れ込んでいるからだと考えられます。
 この問題を引き続き、広く全国の市民と連携しながら、取り組んでいく予定です。ゲノム編集魚問題に関する投稿

4. 重イオンビーム放射線育種米「あきたこまちR」の問題への取り組み

消費者庁へ要望書提出 ゲノム編集ではありませんが、重イオンビーム放射線を使って遺伝子の一部を破壊することで作られた稲が登場することを私たちは知りました。重イオンビーム放射線によってもゲノム編集と同じ問題が生まれるという指摘を受けて、調べを進めたところ、全国でこの稲に転換する計画があり、中でも秋田県は県の7割の生産を占める「あきたこまち」をこの重イオンビーム放射線育種によって作られた「コシヒカリ環1号」を利用して作った「あきたこまちR」に2025年から全量転換することがわかりました。
 ゲノム編集と同様この重イオンビーム放射線育種による品種の安全性が確認されていないだけでなく、この遺伝子操作によって、このお米は稲が生育する上でも、人が生きる上でも不可欠なマンガンが3分の1未満になってしまうことがわかっています。
 しかも、表示せずに、従来と同じ「あきたこまち」として販売されるということで、消費者は何を食べるか知る権利が奪われてしまいます。また、穂が出る時に高温でマンガンの不足した水田では収穫が激減し、農家にとっても大きな打撃となる可能性が指摘されており、このまま、全国で重イオンビーム放射線育種品種に転換されることを傍観しているわけにはいきません。
 これは、日本の食の根本を揺さぶる問題になりますので、昨年からたびたび秋田など各地で開かれた学習会を通して、詳しく問題をお伝えするだけでなく、農水省、消費者庁、秋田県に対しても働きかけを進めています(写真は2024年6月14日要望書を消費者庁に提出したところ。参議院議員会館にて)。重イオンビーム放射線育種問題特集ページ重イオンビーム放射線育種問題の記事一覧

5. タネの権利の問題(UPOV問題)

STOP UPOVキャンペーン 今、世界で農民のタネの権利を奪うとして、大きな問題になっているものがあります。それがUPOV条約という国際条約なのですが、公的な条約ではなく、大きな国際種子メジャーとも呼ぶべき、大企業主導で作られたルールです。これが世界各国に押しつけられることで、種子のグローバリゼーションが進み、農家の在来種のタネが使えなくなったり、地域の種苗会社が潰れたりする問題が世界中で生まれています。
 実は日本で改正された種苗法もこのUPOVと密接に関わりがあります。日本を含む世界でわたしたちが安全な食を取り戻すためには、タネの権利を確保しなければなりません。それを脅かすUPOVは大きな問題があります。
 昨年から世界の市民団体とOKシードプロジェクトは協力して、UPOV問題にも取り組んでいます。日本でタネを守るためにも、このUPOV問題がどんな問題なのか、しっかり伝えていきます。UPOVに関する記事一覧

6.オンライン学習会の開催

『ゲノム編集ー神話と現実』 活動開始して、すぐにサポーター登録された方への無料のオンライン学習会を開始しました。ほぼ1月1度の割合で開催しています。昨年度開催した学習会のリストは末尾に掲げます。
 ゲノム編集生物・食品の問題点の基礎から、種採りの方法や有機学校給食など関連するテーマについて学習会を開いています。
 最近、フードテックと称して細胞培養や合成生物学の技術も出てきました。後で触れますが、重イオンビーム放射線育種米も登場しています。しかし、これらとゲノム編集は密接に関わっています。すべて自然とは言い難く、また消費者や農家の権利が損なわれ、健康や環境への影響も懸念されるものです。その問題を深めていくための学習会を今後も開催していきます。
 ゲノム編集生物・食品にどんな問題が起こりうるか、科学的な研究に基づき、議論するために欧州議会でも活用されたガイドブックの日本語版『ゲノム編集ー神話と現実』も無償PDFで提供しています。

7. みなさんへの感謝とお願い

 OKシードプロジェクトの活動はすべて市民のみなさんの寄付によって支えられています。開始以来、1500人を超える方たちから1200万円を超えるご寄付をいただきました。
 メールニュースの講読者は1万2000人を超しました。でも、ゲノム編集食品が未来の食であるかのような根拠のない情報が溢れている中、まだまだOKシードマークは見る機会がない、ゲノム編集食品の問題を知らない人ばかり、という状況はまだまだ変わっていません。
 さらに多くの人にこの問題を知らせていくために、みなさんのご支援が必要です。たとえば、以下のことでご協力いただけないでしょうか?
 ・ OKシードプロジェクトに寄付をする
 ・ みなさんの地域で学習会を企画する
 ・ みなさんのご友人をOKシードプロジェクトのサポーターに誘う

・ OKシードプロジェクトに寄付をする
 すべての活動資金はみなさんからの寄付でまかなっています。寄付が可能な方は、無理のない範囲でぜひ、お願いいたします。
 OKシードプロジェクト・ご支援のお願い

・ みなさんの地域で学習会を企画する
 オンラインではなく、みなさんの地域で学習会を企画しませんか? オンラインでは地域の人たちの参加を得ることは難しいかもしれませんが、地域の会場で学習会を企画することで、地域の方たちと問題を共有する機会を作ることができるはずです。もしやってみたいという場合、ご相談可能ですので、ご連絡をお待ちします。連絡する

・ みなさんのご友人をOKシードプロジェクトのサポーターに誘う
 もし、ご友人にOKシードプロジェクトを紹介いただければ幸いです。言うまでもなく、OKシードプロジェクトのサポーターにはお金は一切必要ありません。以下のページをお知らせいただければ幸いです。
 サポーター登録

 ぜひ、今後ともOKシードプロジェクトをどうぞよろしくお願いいたします。

OKシードプロジェクト事務局

2023年度(2023年4月〜2024年3月)の主な活動日誌(敬称略)

2023年4月 宮津市に全国から集まり、市との交渉、プレスリリース発表。リポート
4月27日 OKシードプロジェクト学習会: フードテックの戦略を読み解く―細胞培養の「母乳」をめぐって(講師:安田節子)
5月9日 OKシードプロジェクト学習会「放射線による突然変異育種って何?」(講師:河田昌東)
5月22日から6月5日 ブラジルでの遺伝子組み換えユーカリ植林問題のキャンペーン(調査・行動・交渉)に印鑰が参加
6月5日 OKシードプロジェクト学習会「遺伝子組み換えとゲノム編集食品問題の基礎」(講師:天笠啓祐)
6月10日 北海道食といのちの会総会(北海道札幌市)でゲノム編集の講演(講師:印鑰智哉)
7月16日〜17日 OKシードプロジェクト総会(東京都高尾)
7月19日〜25日 新宿高島屋EAT2033でリージョナルフィッシュ社の製品販売問題
7月27日 OKシードプロジェクト上映会「映画『種とゲノム編集の話』オンライン上映会 & 教えて!河田昌東さん」
7月28日〜9月2日 秋田で重イオンビーム放射線育種米問題の3つの学習会(講師:印鑰智哉)
8月8日 オンライン学習会:基本的人権としてのタネが奪われる~改正種苗法で加速するUPOV体制強化への懸念~(講師:印鑰智哉)
9月1日 OKシードカード登場
9月12日 オンライン学習会:遺伝子操作植林が生態系をぶち壊す−遺伝子組み換えユーカリに反対する世界の運動に参加して》(講師:印鑰智哉)
9月23日 「ゲノム編集魚を考える市民集会 in 京都 〜未来の食卓はどうなるの?〜」開催
10月3日〜8日 マレーシアで開かれたUPOV問題の国際ワークショップに参加
10月17日 オンライン学習会:有機農業の歴史・法制化の過程(講師:久保田裕子)
11月7日〜9日 ムソー展示商談会にOKシードプロジェクトがブース参加(OKシードマークの利用を訴える)
11月8日 GMOフリーゾーン・プレイベント学習会(講師:印鑰智哉)
11月5日 種子を守る会香川(香川県高松)で講演(講師:印鑰智哉)
11月14日 あきたこまちR問題院内集会(秋田から加藤麻里議員参加)
12月1日 オンライン学習会:ゲノム編集とエピゲノム編集など新技術について(講師:天笠啓祐)
12月7日 コープ自然派(兵庫県神戸市)で重イオンビーム放射線育種に関する講演(講師:河田昌東、谷口吉光、印鑰智哉)
12月12日 重イオンビーム放射線育種に関するOKシードプロジェクトの見解発表
12月20日 オンライン学習会:「放射線育種問題」(講師:印鑰智哉)
1月22日 オンライン学習会:ゲノム編集食品問題基礎講座(講師:印鑰智哉)
1月30日 アイチョイス・コープ自然派生産者消費者討論会基調講演(講師:印鑰智哉)
2月13日 オンライン学習会:日本のタネの未来を考える〜種苗法改正の背後にあるUPOV(ユポフ)の実態〜(講師:廣内かおり、岡崎衆史、印鑰智哉)
2月20日 よい食品を作る会講演(講師:印鑰智哉)
2月26日 生協ネットワーク21定例会講演(講師:印鑰智哉)
2月27日 パルシステム東京組合員学習会「あきたこまちR問題」(講師:印鑰智哉)
2月24日 今、いまを大切に未来につなぐ imaima・学習会(石川県白山市)(講師:印鑰智哉)
3月8日 オンライン学習会:「生命特許と倫理」(講師:天笠啓祐)
3月25日 「あきたこまちR」を「あきたこまち」と表示する問題に対する消費者庁への要請書、賛同募集開始
3月27日 主婦連合会「あきたこまちR」問題を考える学習会(講師:印鑰智哉)
3月29日 「あきたこまち」をどう守る? 3月29日東京集会 
講師:相馬喜久男(秋田県有機農業推進協議会会長)、谷口吉光(秋田県立大学教授)、河田昌東(分子生物学者、遺伝子操作食品を考える中部の会代表)、久保田裕子(日本有機農業研究会副理事長 OKシードプロジェクト共同代表)、印鑰 智哉(OKシードプロジェクト事務局長)
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