プレスリリース:秋田県は「あきたこまちR」土壌のカドミウム・マンガン濃度の測定も健康被害調査もしないまま全面切替え?!

プレスリリース
 2025年産米から秋田県が従来品種「あきたこまち」から放射線育種由来の新品種「あきたこまちR」に全面切替えされる問題で、市民団体「OKシードプロジェクト」等でつくる「2025年『あきたこまちR』問題全国ネットワーク」は、昨年12月に秋田県知事に宛て「質問状」を送りました。その回答が秋田県から届きました。OKシードプロジェクトとして、その全文をコメントと共に発表すると同時に、緊急提案を別途送ることに決めました。以下、秋田県からの質問状への回答とそれへのOKシードプロジェクトのコメントです。

[2025年『あきたこまちR』問題全国ネットワーク(以下、ネットワーク)からの質問]

1.年明けから 2025 年産用の種もみの供給(販売)が始まります。全面切替えとのことですが、引き続き従来品種の「あきたこまち」の種もみを希望する農家には、県の関係機関が斡旋等を行うと伺っております。従来品種の種もみを入手する手順や手続きを教えてください。

[秋田県の回答]
令和7年播種用の「あきたこまち」種子の斡旋について、県では、希望者からの相談を踏まえ、県外の販売先や販売価格を提示した上で、希望者から直接注文していただいております。

[OKシードプロジェクトからのコメント]
最近の秋田魁新報2025年2月21日の記事によると、秋田県が原種を提供して、種籾が県内で作られたのは大潟村だけに留まり、その他から求められた従来の「あきたこまち」の種もみの要望に対しては、秋田県は岩手県の販売団体を紹介するに留めたとあります(秋田魁新報社:従来こまち、一部農家で継続「あきたこまちR」今年作付け開始)。
本来、秋田県内の種もみの提供は秋田県が第一義的な責任を負わなければならないものだと考えます。大潟村のJAに原種を提供したことは評価できますが、県の農家の要望に県自身が対応すべきであり、他から買え、という姿勢は残念なものと言わざるをえません。大潟村への原種の継続的な提供はもちろん、県内農家のための従来の「あきたこまち」の種もみ提供再開を求めます。

[ネットワークからの質問]

2.新品種「あきたこまちR」を作付けるに当たって、水田土壌のカドミウム含有濃度及びマンガン濃度の計測が不可欠になると考えますが、そうした土壌の検査について、どのような体制で行うのか、費用負担も含めてその計画をお知らせください。

[秋田県の回答]
「あきたこまちR」の作付けにあたり、土壌中のカドミウム及びマンガン濃度について計測の必要はなく、調査の予定もありません。

[OKシードプロジェクトからのコメント]
秋田県内でカドミウム基準値を超えるコメが出る可能性があるのは2割弱ほどあると見ていると聞いています。「あきたこまちR」の元となる「コシヒカリ環1号」を開発した農研機構も、マンガン不足の水田であれば、ごま葉枯れ病などの菌病があることを認めていますし、海外の研究では遺伝子OsNramp5を損なった品種がマンガンが不足している水田で、出穂期に高温が続くと、大幅な収穫減になる可能性があるという指摘もあります。
それを防ぐためには、マンガン資材の投入が必要になりますが、一方で過剰なマンガン資材の投入は重金属汚染などの問題にもなりかねません。ですので、水田の土壌中の濃度計測は必要になると考えられます。それにも関わらず、秋田県が計測の必要がないと言い切ることに驚かざるをえません。
従来の「あきたこまち」であれば必要のない対策が「あきたこまちR」の栽培となれば、マンガン不足の水田ではマンガン対策が必要になるので、この負担は県あるいは農水省の負担で行われるべきだと考えます。
農水省はマンガン不足を避けるように、というマニュアルは作ってあるので、もし、その問題で病虫害にやられても、それは農家の責任だと断言しました。製造者責任として農研機構・農水省と秋田県は責任を持つ必要があります。測定もしないのであれば、農家が対策をすることができなくなります。その状況で問題が出たとしても、責任を農家に帰すことはできません。十全な対策をお願いします。

[ネットワークからの質問]

3.2025 年から初めて新品種「あきたこまちR」の栽培を始める農家が多数います。栽培マニュアルや指導通りに栽培したとしても、通常年(たとえば過去 3 年間平均等)との比較で収量低下や品質低下が起きる可能性があります。そうした被害が起きた場合、全面切替えを遂行する県は、どのように責任をもって対応するのか、お知らせください。

[秋田県の回答]
農業試験場及び現地実証ほでの複数年の試験栽培の結果から、「あきたこまちR」と従来の「あきたこまち」の収量、品質は同等であり、この度のご指摘には当たらないものと考えております。

[OKシードプロジェクトからのコメント]
「あきたこまちR」でカドミウムと一緒に吸収が悪くなるマンガンは、植物の「光合成反応」で中核的な役割を果たすため、マンガン不足が起きれば、問題が発生することは当然のことながら想定できます。これまでの原原種、原種、種もみの栽培は条件のよい圃場で行われていたから、マンガン不足に陥らずに大きな問題がでなかっただけという可能性もあります。しかし、今後、マンガンが不足気味の水田では問題が現れることは十分考えられます。
ほとんどの農家は、このように特性の異なる「あきたこまちR」を実際に栽培するのは初めてでしょう。栽培方法も収量も食味も「同等」として、その責任、リスクを全部、農家自身に押しつけてよいとは思われません。
病虫害の発生や収穫減などの問題が出た場合の責任を秋田県は負うべきです。

[ネットワークからの質問]

4.県内におけるカドミウム汚染による健康被害について、どのように把握されているか教えてください。また、その被害者および被害地域住民に対してこれまでどのような支援を行ってきたか、また今後、どのように支援を行う計画があるのか、お知らせください。

[秋田県の回答]
県では、カドミウムに由来する健康被害調査は行っていないことから、健康被害の有無は不明です。

[OKシードプロジェクトからのコメント]
そもそも「あきたこまちR」の導入はカドミウム汚染対策のために行われる、汚染地域の住民でも安心してお米が作れるようにすることが目的であると理解してきましたが、根本の問題であるカドミウムに由来する健康被害調査は一切行われていない、健康被害の有無は不明であると断言され、対策しようとする姿勢すら示されなかったことに衝撃を受けております。
北里大学堀口兵輔教授は予備的調査研究で、カドミウムに由来する健康被害は、カドミウム高濃度含有の自家米を食べ続けたことにより発生している可能性を指摘し(カドミウムが0.4ppm以上含まれるお米は流通からは排除される)、また、そうした健康被害は調査もされずに放置されていることを指摘し、全県域に対する調査に取り組んでいます。
憲法第25条では「すべて国民は健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」と規定されており、すべての住民に安全な食を県は保障する義務があるはずです。県としても調査を行い、カドミウム低減対策を積極的に行うことは責務であるはずです。

質問と回答は以上です。

2025年『あきたこまちR』問題全国ネットワークでは2月26日、秋田県に種もみの供給の再開を求めるなどの緊急申し入れを送りました。秋田県への緊急申し入れ(PDFファイル224KB)

なお、質問状と共に送った署名では、県当局と広範な市民との対話、意見交換を実施するよう要望しています。

来る3月2日には、秋田県の農家の方々がよびかけて、秋田県庁の関係部署の方も招いた県民集会が秋田テルサを会場で計画されています。ぜひご注目ください。
「こまちR全面切替に不安や疑問がある」「あきたこまちを食べ続けたい、作り続けたい」人のための県民集会
https://akitakomachi.peatix.com/view
日 時  2025年3月2日(日)13時~17時
場 所  秋田テルサ 5階第1会議室(秋田市御所野地蔵田3-1-1)  ※オンライン併用

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