「あきたこまちR」で揺れる秋田県に、今全国から注目が集まっています。
パブリックコメントには過去最多の6000件もの意見が寄せられ、計画の延期と見直しを求める署名8038筆が県に提出されました。
さて、その後秋田県は全国からの声をどのように受け取っているのでしょうか??最新情報をお伝えします。
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【イオンビーム(放射線)育種米「あきたこまちR」に関するアップデート】
OKシードプロジェクトではイオンビーム(放射線)によって育種(品種改良)されたコシヒカリ環1号の問題について、学習会を5月9日に開催しました。
◆報告 https://okseed.jp/news/radiation/entry-179.html
イオンビームという放射線をあててカドミウムを吸収しにくい品種を作った、それが「コシヒカリ環1号」になります。イオンビームによって、コシヒカリが持つOsNramp5という遺伝子の1塩基が壊されており、その遺伝子が壊れることによって、カドミウムをほとんど吸収しにくくなったというものです。同時に稲の生長にも人の生育にも不可欠なマンガンが吸収しにくくなってしまった品種です。
農水省はこの壊れた遺伝子を全国で生産されている主要な品種に入れていくということで現在、203品種もの品種が現在、開発中です(情報公開請求で判明)。そして、その一つ「あきたこまち」が作られ、「あきたこまちR」と命名されました。
秋田県では「あきたこまち」は県産米の73%ほどを占めていますが、秋田県は2025年からこれを「あきたこまちR」に全量代えることを決め、今年2月に議会に通告しました。しかし、この県の説明では一方的な通告に留まったため、「あきたこまちR」が持つ問題については十分知られず、6月の県議会で初めて問題になりました。その後、開始された県議会へのご意見(パブリックコメント)では秋田県始まって以来の6000件近いコメントが県議会に寄せられて、その反応を受けて、佐竹敬久秋田県知事も全量切り替えは時期の再考もありうる、と9月4日の記者会見で答弁しました。
カドミウムが十分低い地域なのに、なぜ「あきたこまちR」を栽培しなければならないのか、という疑問も秋田県で吹き出しており、従来の「あきたこまち」を作りたい/食べたいという声も多く寄せられています。その一方、カドミウム汚染を減らす政策は語られません。秋田県の対応は十分な情報開示がないまま拙速ではないか、という声は高まっています。
しかし、佐竹知事は9月15日県議会で質問に答えて、記者会見での答弁をひっくり返し、予定通り、2025年から全量切り替えする方針であると述べました。もし、このままの方針であれば、従来の「あきたこまち」は来年が最後になってしまいます。問題は「あきたこまち」に留まりません。「あきたこまち」以外の品種も「めんこいな」「サキホコレ」など秋田県が提供する品種はすべてカドミウム低吸収性品種(「コシヒカリ環1号」との交配種)にする計画が現在進められており、それが完了すればイオンビーム育種米は秋田県で生産される96%ほどを占めることになってしまうでしょう。残りの数パーセントを占めるのは民間企業が作ったF1品種(ハイブリッドとうごう)などになります。
そして秋田県だけに留まる問題ではなく、他の県でも「コシヒカリ環1号」系の品種の採用が進められる可能性があります。また「あきたこまち」は全国さまざまなところで学校給食でも食べられています。
「あきたこまちR」への全量転換には少なくとも以下の問題があります。
・ 従来の「あきたこまち」を栽培したくても選択できない。
・ 流通する際には「あきたこまち」とだけ表示するので、消費者は知らないうちに食べることになる。選択することができない。
・ 「あきたこまちR」に関する情報は不十分であり、社会がどう受け止めるか、合意は形成されていない。
放射線育種の問題をどう考えていくべきか、そしてカドミウム・ヒ素汚染などにどう向き合うべきかについて、OKシードプロジェクトは議論と対話を続けていく予定です。