【NEWS!!】「あきたこまちR」問題院内集会 署名提出と7つの問題を指摘

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秋田県の代表的なお米の品種「あきたこまち」が2025年から新品種「あきたこまちR」に全面的に切り替えられる問題で、2024年9月30日、「『あきたこまちR』問題院内集会」を衆議院第2議員会館で開催し、会場とオンラインで約200名が参加しました。参加者のみなさん、ありがとうございました。

「あきたこまちR」問題院内集会
日時:2024年9月30日(月) 15:00-17:00
場所:衆議院第2議員会館第1会議室
主催:2025年「あきたこまちR」問題全国ネットワーク

 「あきたこまちR」の表示問題、つまり秋田県産の2025年産米からはスーパーに並ぶ米袋や広告で「あきたこまち」と表示してあっても、実際の中身のほとんどは新品種「あきたこまちR」に切り替えられます。この不当表示と考えられる問題に対しては、すでに6月14日に院内集会を開き、消費者庁に対して全国42団体が措置要求の要請書を提出しています。

 しかし、「あきたこまちR」をめぐる問題は表示問題だけでなく、ほかにも多くの問題があります。今回の集会に合わせ、問題点を7つの側面から簡潔に述べた「重イオンビーム放射線育種米『あきたこまちR』なにが問題?」という啓発チラシをつくりました。

7つの側面とは次のとおりです。
①お米を選べない、②遺伝子を改変、③自家採種禁止・特許つき、④マンガンが低下、⑤学校給食にも「あきたこまちR」?、⑥有機認証も可?、⑦なぜ?全面転換

署名6134筆を消費者庁・農林水産省に提出

 このように多くの問題を抱えている「あきたこまちR」について、「これまでどおりの『あきたこまち』を食べたい」「『あきたこまちR』は食べたくない」という声がきかれるようになったことから、OKシードプロジェクトでは、「わたしは遺伝子を改変された『あきたこまちR』を食べたくありません」に賛同する署名を集めました。

 第一次集約(2024年7月22日〜9月27日)では、オンラインと紙による署名、合計6134筆が集まりました。署名は秋田県をはじめ全国から寄せられ、メッセージも添えられています。それらを一覧表に印刷したところ、600枚を超える分厚いものになりました。

 院内集会ではこの署名一覧を、参加者を代表して中村陽子さん(OKシードプロジェクト共同代表)が消費者庁と農林水産省の代表者に手渡し、多くの生の声の訴えを汲み取るよう申し入れました。

主な論点について概要報告

1.「有機」を付した「あきたこまちR」は景品表示法の観点から「誤認の恐れ」に相当

 前回(6月14日)の院内集会では、景品表示法は消費者の選択する権利を擁護する法律として、優先的な高い地位を与えられている法律であることを指摘しました。したがって、農林水産省の「品種群設定」にしても、景品表示法上の問題を引き起こすとすれば、事前に行政内での調整が行われてしかるべきだと指摘しました。

 そして今回は、農林水産省が「あきたこまちR」は有機JAS認証できるとしていることから、もしも、有機JASマーク付きの「あきたこまち」(2025年産米以降)の実際の中身が「あきたこまちR」であれば、これは二重に消費者をあざむく表示になることを指摘しました。

 事前に質問していたこの問題に対し、消費者庁の回答は、「農林水産庁において、品種間の品質の評価に差がないとされ」ているから「著しく優良」とはいえない、「有機」については、農林水産省が「有機JASのルールに則って『有機』表示を行っている」ので、「著しい乖離」があるとするのは難しいと、あいかわらず後退した回答でした。

 この回答に対し、まず、この件は、「著しい乖離」という「優良誤認」としての問題ではなく、景品表示法第5条3号の「誤認の恐れがある」という点からの問題提起であること、また、前回指摘のように、不当表示については、まず何よりも消費者がどう受け取るかが重要なのであり、農林水産省の見解等は「参考」にはなるが、それを「尊重」して優先させるべきではないと批判しました。

 消費者庁発行の『Q&A』においても「著しく優良」については、「当該表示の誇張の程度が社会一般に許容される程度を超えて、一般消費者による品質商品サービスの選択に影響を与える場合」とあります。まさに今回提出した署名「わたしは遺伝子を改変された『あきたこまちR』を食べたくありません」にみられるように、消費者の声が上がっているのです。

 景品表示法は、消費者の選択の権利を擁護するもので、もともと消費者基本法に明記されているのですから、行政内事前調整で不当表示を回避すべきことが再び明らかになりました。

2.「有機JAS」で重イオンビーム育種を「可」とするのは法解釈の間違い

 農林水産省は2024年7月1日の「有機JAS」の告示改正に伴う『Q&A』の改訂で、問10-10を新設し、「有機農産物のJASにおいて放射線照射を利用して改良された品種やこれらを祖先に持つ品種の種苗を使用することは問題ありません」と、放射線育種による種子(品種)の使用を認める見解を述べました。これに対して、TBT協定で参照すべきとされているコーデックスの有機ガイドライン(「有機的に生産される食品の生産、加工、表示及び販売に係るガイドラインCAC/GL 32-1999」)における「遺伝子組換え技術の種子を禁止する理由」を参照したのかという事前質問に対し、農林水産省(大臣官房新事業・食品産業部 食品製造課 基準認証室)の回答は明らかに間違った法解釈を示すものでした。

 コーデックス有機ガイドラインでは、「遺伝子操作/遺伝子組換え生物」は有機農業の原則に適合しないので、有機生産では除外する(「適用の範囲」で除外)と、使用禁止技術としています。そして「解説と定義」において、「遺伝子操作/遺伝子組換え生物」の「定義」で、「交配または自然な組換えによって自然に生じることのない方法で遺伝物質を変化させる操作技術を用いて生産される」から禁止するのだと、と説明しています。

 回答は、定義部分の引用は同文ですが、その解釈は、「放射線育種によって生じる遺伝物質の変化は自然に生じることもある」、だから、放射線育種は、コーデックスガイドラインにおいても禁止されていないものと承知している」という、不正確な間違った解釈をしたものでした。

 コーデックス有機ガイドラインの定義の内容は、わかりやすくいえば、品種改称は通常、同じ種の壁の内部でA品種とB品種を掛け合わせて、目的の有用な品種に育成する「交配」(交雑育種)、および自然界で自然に起きる突然変異(たとえば特に粒の大きな株が出現したとか、枝変わり等)を活用して新品種に育成する品種改良ということです。このコーデックス有機ガイドラインでは、このような伝統的に行われてきた品種改良の方法ではない方法・技術で、遺伝子を改変させた種子(品種)は「有機」の原則に適合しないので禁止する、というのが「定義」の意味するところです。

 要するに、人が人為的に、組換えDNA技術であっても、ゲノム編集技術でも、そしてまた、放射線照射によって遺伝子に変化を与えても、いずれにしても人が手を下して遺伝子を改変させて開発した新品種(新生物)は、「有機」の生産では使用を除外する(禁止技術とする)と規定しているのです。そうした禁止技術の例示には、「遺伝子の欠失」も明記されています。ゲノム編集技術でも重イオンビーム育種でも遺伝子欠失が起こされています。

 ところが、農林水産省の回答は、「放射線照射を利用して改良された品種」と、人の手を介していると自ら明言していることを棚に上げて、突然変異は自然界でも起きるなどと、はぐらかしのしらばっくれたものでした。

 突然変異は自然界でも起きますが、それを品種改良に利用するのはまさに伝統的な品種改良の手法です。他方、放射線育種とは、突然変異を人為的に誘発させる育種の技術です。「定義」では人為的な放射線育種はだめと、言っているのです。農林水産省の「読み方」は明らかに法解釈の間違いです。

 このように、問10-10は、間違った法解釈により記述されていることが明らかになりました。これはいわば行政指導に当たるので、間違った法解釈による行政指導が行われている、ということになり、これは看過できない法令違反に相当する問題です。今後さらに追及が必要です。

3.「重イオンビーム照射はガンマ線照射に比べて高頻度にDNA損傷を生じさせる」と、両者の違いを確認

 これまで放射線育種で使用されてきたガンマ線照射と重イオンビーム照射による育種は分けて考えるべきという質問に対し、農林水産省(農林水産技術会議事務局)の回答は重イオンビームでは「高頻度にDNA損傷を生じさせる」と、その違いがあることを認めました。なぜ高頻度になるか、その違いについては突き詰めていませんが、「高頻度に」ということはDNA損傷が激しく起きることであり、より科学的に解釈すれば、DNA二本鎖を一挙に二本とも損傷させるから高頻度に突然変異を誘発するのです。

 農林水産省の回答は、これに続けて「しかしその植物におけるDNA損傷を修復して突然変異が生じるという仕組みは同じです」とありますが、上述のように、この文章は竹に木を接ぐはぐらかしです。

 コーデックス有機ガイドラインの定義が問題にしているのは、DNAの改変が、自然突然変異で起きたものか、それとも人為突然変異かという違いです。ガンマ線照射も重イオンビーム照射もいずれも人為突然変異にほかなりません。その中で、さらに、「高頻度」という特徴により(科学的には、DNA二本鎖を同時に損傷)区別できるということになります。

 なお、回答の後段に、的外れな「しくみは同じ」と従来からの安全論をもってきていますが、この文脈では意味をなさないことは明らかです。

4.「有機JAS」は、自然と共生する有機農業の原則を尊重し人々の期待と信頼に応えるものにすべき

 コーデックス有機ガイドラインは自然の摂理を尊重する有機農業の原則にのっとって作られたものであり、したがって、「有機JAS」もそうした理念に基づくものでなければなりません。農林水産省の回答は、5年に一度の見直しとパブコメを行っているとしていますが、より広く国民一般が関わり、有機農業の原則が損なわれないようにする必要があります。

 特に、今回の放射線育種(特に重イオンビーム利用)について、消費者の「有機JAS」に対する認識や期待と信頼を裏切るものであってはなりません。今後とも追及が必要です。

5.「全面切り替え」による「3つのリスク」はすべて生産者が負うという不条理

 この問題については、秋田在住の谷口吉光さん(秋田県立大学名誉教授)が、「全面切り替え」によって生じる「生産者の3つのリスク」として、(1)減収リスク、(2)食味リスク、(3)売れ残りリスクがあることを指摘し、その責任と補償を質問しました。

 「全面切り替え」は生産者の選択肢をなくしているので、好むと好まないとかかかわらず生産者は新品種「あきたこまちR」の栽培をしなければなりません。「あきたこまちR」の栽培経験がまったくないところで、「あきたこまちR」は植物の生長に欠かせないマンガン吸収が低下し、ゴマ葉枯病が出ることは農研機構でも秋田県でもわかっています。また、ある論文では同じ遺伝子を欠失させた品種では、出穂期(開花期)に高温であると収量がかなり低下することも指摘されています。つまり、減収リスクがあるのです。

 第2の「食味リスク」については、大潟村で食味会があり、参加した農家2人の感想は、「まずい」というものだったということが報告されました。司会の原野好正さん(OKシードプロジェクト副事務局長)からも、「おいしくない」というメールが寄せられたという報告もありました。さまざまな炊飯の状態での食味なので、これから販売されるようになると、「まずい」「味が違う」という声が出てくることは必至です。そうしたことを含め、第3の「売れ残りリスク」も生じることになります。

 農林水産省(農林水産技術会議事務局)の回答は、マンガン肥料の施用で回避する、「あきたこまち」をはじめ多くの従来品種は高温で減収する、昨年は異常高温だったが収量に違いはなかったというもので、どんな栽培品種であっても、「産地の栽培指導に基づき適切な栽培管理をお願いしたい」、また、食味については同等という評価だが、大潟村の話は初めてきくもので把握していなかったというものでした。

 農林水産省の回答は、マンガン肥料の費用の補助、売れ残ったものに対する補償についても、「販売者である農家の方あるいは農協の方が考えること」という返事であり、「農林水産省として何か補償するというようなことは考えてございません」というものでした。

 このように、全面切り替えにより選択肢がない状態で、「あきたこまちR」に関わるすべてのリスクは生産者が負うという不条理なものであり、生産者の利益にならない政策が行われることが明らかになりました。

 また、秋田県に対し全面切り替えを中止するよう指導をしてほしいという意見に対しては、農林水産省の認識は「米のカドミウム低減は以前から大きな課題になっていたものであり、今回の新品種導入は産地としても待ち望まれたもの」(要旨)という一方的なものでした。

 しかも、農林水産省は、2018年改訂の「コメ中のカドミウム低減に関する実施指針」に基づき同様の米を全国に普及させる政策を進めています。これについても、農林水産省は強制しているわけではない、選ぶのは道府県のほうであると、県に責任を転嫁しています。

 国も自治体もそうした政策を進めておきながら、それらのリスクを全部、生産者に負わせていることが明らかになりました。

6.「全面切り替え」は、種子条例の規定を逸脱した行政指導、独占禁止法に抵触するのではないのか

 この問題については、独占禁止法の専門家であり事務経験も長い本城昇さん(埼玉大学名誉教授)から、「全量」を切り換えて、それを販売するということは、その取引形態に着目すると、独占禁止法上問題となりうる点が指摘されています。秋田県内の種もみの取引市場では、県内の種もみ供給が独占的な市場シェアを占めています。従来提供してきたものを、これからは一切供給しないという取引拒絶が生じていますが、これが秋田県の種子条例の規定に基づかない行政指導ということになれば、それに従って種もみの供給者や米の取り扱い業者が「あきたこまちR」でない「あきたこまち」をこぞって取り扱わないという行為をすれば、その行為は、独占禁止法上問題になりえるという点です。

 表示の件のみならず、「全面切り替え」についても、法令を逸脱した行政がおこなわれているとすれば、これは大問題です。今後の追及が必須です。

7. 5割の道府県への導入、その必要性、公正性、妥当性はあるのか

 農林水産省は2024年度予算で3割の都道府県での導入をめざし、「水稲におけるカドミウム・ヒ素濃度低減技術の実証・普及事業」を行い、来年度予算概算要求では、5割の都道府県での導入をめざすとしています。この予算の内容は何かという質問に対する農林水産省(農業環境対策課)の回答は、「カドミウムとヒ素の同時低減対策の確立及びヒ素濃度低減のための水管理等」とのことで、これまでの、2020~2024年の予算を実行したのは、宮城県、秋⽥県、新潟県、⽯川県、滋賀県、京都府、⼤阪府、兵庫県、島根県、⼭⼝県、宮崎県の11道府県であるとのことでした。ヒ素低減の水管理効果実証は宮城県、新潟県、島根県3県ですが、いずれも11道府県に含まれる県です。

 また、このような技術を実際に採用する場合には、生産者や消費者の意思の確認が必要で、その決定権を侵害する進め方に思えますが、農林水産省はこの進め方を変える考えはないのですかという問いに対する回答は、次のようなものです。

 「国として、食品の安全を確保し国民の健康を保護する観点から、低減対策を進める必要があると認識しており、この考えは変わりません」

 回答は、あいかわらず農林水産省の立場からのみの、一方的な聞く耳持たずというものでした。本来、行政に求められるべき、そうした推進政策が及ぼす影響や生産者・消費者の反応に真摯に向き合う姿勢はまったくみられません。

 農研機構が2021年から2024年の間に品種登録出願を公表した品種はお米では重イオンビーム放射線育種ばかりでした。内閣府食品安全委員会の「カドミウム評価書」では現在の日本人の食生活において、カドミウムが過度に摂取されて健康に影響を与える影響は少ないと考えられるという結論になっており、その必要は全体としては低いはずです。

 農林水産省は開発理由を輸出のために海外の低い基準をクリアするためとしていますが、それよりも優先させるべき問題があるはずです。酷暑による高温障害が懸念されており、品種開発について求められているのはそうした品種です。それにもかかわらず、農林水産省はこうした品種開発に躍起になっています。その必要性、公正性、妥当性はあるのか、大きな疑問です。

【今後の活動などについて】

 行政の対応者が退場した後、「2025年『あきたこまちR』問題全国ネットワーク」としての集会が30分ほど行われました。これまでの活動と院内集会を踏まえ、今後の活動としては、次のような発言、提案が出ました。

  • 各地で消費者として秋田県に食味テストのための「あきたこまちR」を請求の上、実施していくこと。
  • お店に「放射線育種米は取り扱っていません」とか、お米に「『あきたこまちR』ではありません」のようなポスターやシールで示して、消費者が声をあげやすくしていく。
  • 自分の住む県に問い合わせるとか、地元のJAなり、子どもが通っている学校の給食会とか各店給食会に問題を知らせ、「あきたこまちR」を扱わないよう申し入れをする。
  • 「あきたこまち」を使ってパックライスを作っているメーカーなどのお客様相談室に意見を送るのもよい。
  • 署名についても今回は第一次集約。これからも署名を集め、それを通して「あきたこまちR」の問題をみなさんに知ってもらいたい。

 また、OKシードプロジェクトからは、このほど作成した啓発チラシ『重イオンビーム放射線育種米「あきたこまちR」なにが問題?』(A4裏表2頁)を活用していこうと呼びかけがありました。

 最後に、中村陽子さん(OKシードプロジェクト共同代表)が、「今日の院内集会では、特に法律関係のことがわかりました。やはり、消費者庁は消費者の味方であってほしいので、消費者の目線から見たときに、こういう表示がいいのか悪いのかということをぜひご判断いただきたい。また、農家が品種を選ぶ時には、自家採種が可能かどうかを重視しています。今、農家も農村の人口も減っています。高齢化もしていて、異常気候にもさらされて非常に苦労されている農家が多い。そういうところに、上から一方的な方針転換を迫られるのは非常に問題が大きい。よく配慮していただければと思います」と締めくくりました。

 以上のように、9月30日に行われた院内集会では、特に「有機」表示の関係では、明らかに法解釈の間違いによる違法ともいえる行政指導が行われていることが明らかにされました。また、全面切り替えという一方的な品種転換によるリスクが、すべて農家の肩に背負わされ、その補償も一切ないという無責任な政策であることも明らかにされました。
 他方、「コシヒカリ環1号」系統の道府県での実証・拡大は、カドミウムとヒ素の同時低減のためとして予算をつけて11道府県で進行しています。この問題は、今後特に、法的観点からの追及も強めていかねばなりません。

 各自の取組みとしては、啓発チラシを組み合わせるなどしてこの「2025年『あきたこまちR』問題」をできるだけ正確に多くの人に伝え、引き続き署名活動と地域での行動を起こしましょう。
(久保田裕子:OKシードプロジェクト共同代表)

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