「たねの行進」の「たねBOX」が、熊本県の阿蘇へ旅をしてきました! |
OKシードプロジェクトの「たねBOX」と過ごした3日間 ~『たねの行進』は続く~
1 「希望のキャラバン」と旅した「たねBOX」
2024年、OKシードプロジェクトが企画した『たねの行進』。ナマケモノ倶楽部25周年記念イベント『希望のキャラバン』とOKシードプロジェクトがコラボして「たねBOX」が誕生。Seedおじさん(富士宮山麓シードバンク 鈴木正一さん)が中心となり計画を練って、Share Seedsに製作していただいた「たねBOX」は、『希望のキャラバン』(https://www.facebook.com/caravanofhop3)でアンニャ・ファミリーと共に2024年5月22日、千葉をスタート。関東、四国、九州、そして関西の各地を巡り、6月28日ラストの横浜まで、西日本あちこちを旅した。
Seedおじさんが準備した在来種・固定種の種が入った「たねBOX」は、訪れた各地で種の交換やシードシェアで賑わい、各地の在来種や自慢の自家採種のタネが次々加わりながら旅を終え、富士宮に戻ることができた。
6月9日ローカリゼーションデイ日本2024の分科会2「たねのローカリゼーション~たねから持続可能な地域づくり」には、私も熊本からオンラインで参加して、奥深いタネの話しから、タネに関わって暮らしているスピーカーたちのお話が、とっても楽しかった。
2 「たねBOX」、熊本(阿蘇・上色見)へ。
7月、私の住む熊本市内から車で2時間ほど離れた阿蘇郡高森町上色見(かみしきみ)で、タネを自分で採り・繋いでいく活動について話した際、OKシードプロジェクトの「たねBOX・タネの行進」を紹介すると、一度「たねBOX」を実際に見たいと強い関心を寄せられた。
この日集まっていたのは、「上色見プロジェクト」のメンバー。彼らは、上色見地域で、地域外の人にも参加してもらい、一緒に伝統的な暮らしに学びながら、畑で自分たちの食べものを育てて料理や加工をしたり、身体を動かしながら伝えて行きたいと、これからの暮らしのあり方についておしゃべりできる場を作ることを目的とした仲間たち。「みんなの菜園」づくりで、何のタネを蒔いて育てたいか話し合うなか、在来種・固定種の話題から「たねBOX」が上色見に来て、たくさんの人にタネの活動を知ってもらえるとよいね、と盛り上がった。ほとんどが、旧上色見小学校の木造校舎を地域の記憶として大切に思い、長く守って来た方たちで、その場所が会場となる10月の阿蘇アート&クラフトフェアに「たねBOX」の展示ブースが作ることとなった。それやこれやで「たねBOX」は、再び熊本へやって来ることになった。
3 「たねBOX」、何が入っている?
10月10日 静岡県富士宮からはるばる、「たねBOX」が熊本にやって来た。
早速、荷ほどきして蓋を開けたら、賑やかにいろいろなタネの袋が並んでいて、タネを持ち帰るための小袋や、持ち込まれたタネの情報を書くタネカード付き封筒、筆記具まで準備万端。いつでもシードシェアを始められるよう整えられていて感激。
4 「たねBOX」、上色見で、どんな人と出会ったか
10月12日(土)~14日(月・祝)阿蘇アート&クラフトフェアにて、活動を始めたばかりの「みんなの菜園プロジェクト」を知らせるブース「タネの駅」オープン。
ハイビスカスローゼルの鮮やかな紅い色が目を引くようふるまいのお茶も準備して、ブース近くに来た人に声をかけては「タネBOX」の旅の話、自分でタネ採りしてタネをシェアする活動について伝える。何人と話したのか、記憶にないほど話し続けて、3日間でいろいろな人と会って話すことができた。
5 タネの駅 タネをシェアするってどういうこと?
阿蘇アート&クラフトフェアは、旧上色見小学校の木造校舎を守り、ハンドメードのクラフト作家の交流の拠点、地域の人びとの交流の拠点とする活動を続けてこられた団体「阿蘇フォークスクール」が主催するもので、木造校舎や体育館、屋外テント等に、こだわりのハンドメイド作品や工芸作家による140あまりのブースが並ぶ大規模なイベント。
生活スタイルにこだわりを持っていそうな人が、たくさん来場されていた。それにしても、アート&クラフトフェアとタネではちょっと遠い印象もあり、タネの駅ブースに来る人はいるのか、初日は心配した。
ブーステント前の掲示パネルを読む人が現れ、「タネ」という言葉に反応する人が確実にいることが分かる。このタネは販売しているものなのか?と思う人もいて、タネをシェアする活動について、何回も繰り返し話しをする。もちろん、こんなブースがあることは知らずに来た人が大半で、交換するタネは持参されていない。
「今回は、タネを持ってきていなくても大丈夫。今日、タネを持ち帰り、蒔いて育ててください。自分でタネを採ることができたら、タネを他の人にもシェアしてください」「ここにあるタネは、すべて自分でタネ採りして、人に分けてあげることができるタネばかりです」と説明する。聞いた人は納得して、「たねBOX」に入っているたくさんの袋を手に取ってみて、袋に書かれているタネの種類や採種地、メッセージなど読んで気になるタネを選んでいかれた。
6 タネに興味がある人が、やっぱりいる!と分かった
1~2種類だけを持ち帰る方が多く、タネを蒔く時期や育て方など聞かれることも多い。
「たねBOX」のタネには、私もまったく見たことも育てたこともない品種がいくつも入っていて、タネ袋に書かれた名前から想像してどんな姿形の野菜なのか、相手の方と一緒になって、あれこれと話すのも楽しかった。育てたことのある品種でも、住んでいる地域によっては蒔き時期が違うことや、食べ方などの情報交換もできた。タネを間に、話しは次々拡がる。この先、また、こんなタネの交換会はあるかと聞く人。菜園プロジェクトにかなりの興味を持って詳しく尋ねる人もいて、「たねBOX」を挟んでなんだかいろいろなことが話せてしまった。
OKシードプロジェクトで取り組んでいる「あきたこまちR問題」も、できたばかりのチラシを手渡しながらスムーズに話せたし、よく聞いてくれる。なかには、情報をしっかりキャッチしていて、自分の考えを話しくれる人もいた。
「タネの駅」のブースにいて、タネのこと、農や食べものに関心がありいろいろ考えている人と出会って、話すことができた。タネのことはあまり知らなかったという人とも、「たねBOX」に興味を持ってもらえて話しが拡がり、タネ採りとタネのシェアのことをちょっと知ってもらえたと思う。
7 タネの駅 3日目(最終日) 小雨、時々、雨が止む
朝からあいにくの霧雨、この時期の高森の雨は冷たくて、昨日までとは打って変わり半袖Tシャツではかなり肌寒い。出展中のモンゴルグッズブースで、ヤクのレッグウォーマーを購入。一息着いて、人が来るのをブースで待つ。悪天候のため閑古鳥が鳴くばかりかと思っていたが、美味しい食ブースを覗きに来た人が、ついでにタネの駅の掲示物を眺めていく。声をかけると、寄って話す人がけっこう続いて来る。
耕作放棄地を借りて野菜を作り、米を育てていると話す若い人がけっこういる。そんな人は喜んで「たねBOX」で良さそうなタネを探して見ていく。10種類以上持ち帰っていく人もいて、頑張ってタネを採ってくださいねとエールをおくった。若い人のなかに野稲(陸稲)をやりたいが上手くいかないと、上色見プロジェクトメンバーに育て方を教えてほしいと相談する人がいて、私も、いつか「みんなの菜園」でいっしょに習えるとよいなと思う。
この日の11時から予定していたタネ交換会は流れてしまったけれど、間に合わなかったという人が、遅れましたがと言いながら、遠くから尋ねて来てくれた。
8 自分で採ったタネを持ってきてくれた人
「タネの駅」ブースに「たねBOX」が来ることを、上色見プロジェクトメンバーでタネの会もしている人がSNSでシェアしてくれた。私も、「くまもとのタネと食を守る会(くまたね)」で告知させてもらったことで、県内でも遠方から、「タネの駅」ブースを目指して来てくれた。
赤カブのタネを持参して「たねBOX」に入れてくれた方がいて、聞くと、くまたね/タネと未来くまもとから貸し出しされたタネを育てて、自分で育てた赤カブからタネが採れたから持ってきたという。そして、交換で「たねBOX」からタネを2種類、持ち帰っていかれた。
9「たねBOX」の旅が続くよう、タネを採り、タネのシェアを広げよう。
タネを蒔いてから、時間をかけて植物が育ち、花が咲いたり実をつけたり、食べてしまわずに、ほんの一株でも残して、大切に見守り続けてタネになるまで待つということ。これはけっこう大変なことのようだが、やってみると楽しいことが多い。
待つ時間を受け入れる気持ちが、タネを自分で採ることを繰り返すうち、人の心の中に育っていくといいなと思う。
これから先、在来種・固定種のタネを採る人達がOKシードプロジェクトのタネの行進に参加して、新たなタネ達が「たねBOX」の仲間に加わっていったら、次に熊本に旅して来たとき、さらに多くの地域のタネと出会えるかと思うと、今からもうワクワクしている。
OKシードプロジェクト運営委員 國本聡子