2026年9月5日、OKシードプロジェクトはそうした問題にどう対応するか、問題提起を行いました。ここでは超加工食品に絞り、事務局長の印鑰 智哉が問題提起します。
多重危機の同時進行と食の危機
先日起きたネパールの氷河崩壊により、多くの犠牲が出ました。先進国が排出する気候温暖化効果ガスのために、多くの命が犠牲となりました。東電原発事故でもそうであったように、それが起きる前から問題は多くの人たちが知っていたはずです。でも、変えようとしなかった。そのために犠牲が強いられたと言えるでしょう。このことが起きることによって、前と同じような生き方はもう続けられない、今、そんな時代になっていると思います。
今、日本は大変な食の危機に直面しつつあります。専業農家の数は激減し、このままでは日本はお米すら満足に作れない国となり、食料危機に直面する可能性があります。日本は世界で「ゲノム編集」食品がスーパーで売られている先行国となっていて、また消費する遺伝子組み換え作物も高い水準にありますが、そのことを日本社会は気にしようとしていないように見えます。
しかし、そんな中、日本はすでに満足に食べられない国になりつつあります。国連FAOは日本で食料へのアクセスに不安を抱える層がこの10年で2.3倍と急増しているとしており、その数は750万人近くになっていると考えられます(右グラフ参照)。栄養に問題がある子どもたちの数も増えています。
政府はフードテック推進一本槍
そんな中、現在の政府は現在日本が抱える食の問題に向き合うどころか、それと真反対の方向に進もうとしています。高市政権が定めた戦略17分野の中で食に直接関わるものはフードテック分野(植物工場、陸上養殖、食品機械、新規食品)であり、関連する合成生物学・バイオも推進されています。
新規食品とは代替肉、発酵菌食品(代替タンパクとしての微生物発酵)、植物分子農業や「ゲノム編集」を使った従来とは異なる食品です。要するにフードテックを使って工場で作るものばかりです。そこには農家や農村は一切出てきません。健康や環境に問題ない食をどう、社会全体に行き渡らせるか、ということはそっちのけで、企業の利益のためだけの新技術に固執していると言わざるをえません。その姿はあまりに異様であり、驚くべきことですが、問題視するマスメディアは残念ながら存在しないようです。
植物工場や陸上養殖による食の生産は環境にいいような宣伝がなされていますが、確実に生態系への負荷を押し上げることは明らかといわざるをえません。なぜなら、工場の中で食の生産は完結できないからです。その栄養を支える「外部」を必要とします。植物工場は膨大な電力消費を外部のエネルギーインフラに依存しており、陸上養殖場にはその栄養確保のために、膨大な遺伝子組み換え作物を作る畑が必要となったり、またチリや西アフリカなどで大量の小魚が乱獲されたりしています。
こうした食の生産は環境をさらに破壊し、人や生態系すべての命の維持をさらに危機に追いやるでしょう。
現在、世界で人びとの健康を破壊しているとして、大きな懸念の焦点となっているものがあります。それが超加工食品です。
超加工食品による健康被害
近年、世界中で超加工食品(Ultra Processed Foods)が大量に消費されるようにともない、糖尿病など深刻な慢性疾患が急増しました。糖尿病患者の数は25年の間に世界で4倍になっています(右グラフ参照)。その健康被害の範囲は広範に及んでおり、腸内疾患、アレルギー、糖尿病、肝臓・腎臓に関する病、心血管疾患、特定のがん、メンタルヘルスへの悪影響、早期の死など、多くの学者がその関連について研究を発表しています。
透析患者の急増などによる医療コストの膨大化がさらに大きな社会問題になることが懸念されています。小児肥満の爆発的増加や2型糖尿病・心血管疾患の増加を受け、多くの政府が超加工食品の規制に動き出す事態になっています。
どのようなものが超加工食品なのでしょうか? 複数の食材を工業的な高度な加工をして、家庭の台所では決して使われない工業的成分や食品添加物(果糖ブドウ糖液糖、水素添加油、乳化剤、香料など)を加えて、食に仕立てた飲料や食料と定義することができるでしょう。インスタントラーメンやソフトドリンクはその典型例ですが、それに留まるものではありません。現在、多くの食にはさまざまな食品添加物が加えられており、それがこれまでの食とは異なる存在、超加工食品にしてしまうのです。現在のわたしたちの食のかなりの割合が超加工食品になりつつあるのが実際なのです。
超加工食品の何が問題なのか?
それではこの超加工食品は通常の食品とはどう異なり、なぜ、人の健康に大きな影響を与えてしまうのでしょう?
たとえばお米があります。お米は食物繊維の中に栄養が閉じ込められています。この構造のことを食品マトリクスといいます。超加工食品は工業的な加工によって、この構造を破壊してしまいます。構造を失えば食品としてのまとまりがなくなってしまいますので、人工的な糊(増粘剤など)を使って、形を作り上げます。また、その加工によって、元の食物が持っていた風味や味わいが失われてしまうため、人工的な甘味料や香料、酸味料などを使わざるをえなくなります。本来の食材を多く使うよりも、人工的に作り上げる添加物の方が安価に作れるため、安くあげるために、添加物の含まれる量の割合が増えていきます。
このような性格を持った超加工食品を食べることはどのような影響を健康に与えるでしょうか? 従来のお米を食べる時は食物繊維が徐々に消化されて、ゆっくりと消化されていきます。しかし、食品マトリクスを失った超加工食品は消化が一気に進み、その結果、血糖値スパイクといって、血糖値が一気に上昇してしまいます。血糖値が上昇してしまうと臓器が壊れてしまいますので、血糖値が上がるとすぐにインスリンが分泌されますが、あまりの上昇のため、大量のインスリンが分泌されることになり、血糖値はその結果、一気に下げられます。つまり血糖値が短時間に乱高下します。この血糖値の乱高下により、ブレインフォグや急速な眠気に襲われたり、イライラや不安、動悸の原因になることがあります。そればかりか、この変化は身体にとっても負荷が大きく、動脈硬化、心筋梗塞などの心血管疾患、インスリン分泌能力の喪失、血管性認知症、腎症、網膜症、神経障害など深刻な疾患につながる可能性があります。
また超加工食品の場合、大腸には腸内細菌の餌となる食物繊維などの成分がほとんど届かなくなってしまいます。大腸では、人間の体を調整するさまざまな物質が腸内細菌の力を得て作り出されています。その大事な腸内細菌が飢餓状態に陥ってしまいますので、そうした重要な物質が作り出せなくなってしまいます。そのため人は体内の調整が困難になっていくのです。たとえば、腸内細菌が食物繊維から作り出す代謝産物(短鎖脂肪酸など)が不足すると、自律神経や脳の機能バランスが崩れ、睡眠障害や抑うつ症状など、体の調整やメンタルの維持が困難になっていきます。
さらに飢餓状態になった腸内細菌は腸の粘膜バリアを分解し始めてしまいます。その結果、腸壁が荒らされ、未消化のたんぱく質や、本来血流に入ってはならない毒素などが血流に入り込み、消化器の炎症から、アレルギー、自己免疫疾患、皮膚炎、さらには大腸がんの可能性が高まります。
超加工食品に多用される甘味料の問題
上記の問題にさらに超加工食品で多用される甘味料の問題が加わります。その1つが果糖ブドウ糖液糖(異性化糖、HFCS)があります。これを多く摂取すると、脂肪肝やインスリン抵抗性を引き起こします。また、人工甘味料としてアスパルテーム、スクラロース、アセスルファムKなどがよく使われます。これらは砂糖の200〜600倍の甘さがありますが、腸内細菌叢のバランスを壊すことが指摘されており、これが原因となって、糖尿病につながるインスリン抵抗性を引き出してしまうことが指摘されています。
そのため超加工食品の摂取に伴い、不要な糖分が脂肪として蓄えられ、肥満の原因となり、さらに内臓脂肪の増加から脂肪肝、肝臓の機能障害、さらには腎臓の機能障害へと問題が悪化していくことがわかっています。
このような深刻な健康被害をもたらすことを世界の科学者が警鐘をならし、後で見るように世界で超加工食品を規制する動きがここ10数年、急速に高まってきたのです。
「肥満が少ない日本人は関係ない」?
もし、超加工食品による健康被害がまず肥満に現れるとしたら、日本ではまだ極端な肥満の割合は極めて小さいまま。それならば、日本ではこの超加工食品の問題は深刻な問題になっていないのではないか、と思われるかもしれません。しかし、それはまったくそうではないのです。逆に日本ではもっと深刻な状況になっていると言わざるを得ないのです。
なぜ、日本には目に見える肥満は現れていないのに、深刻なのでしょうか? それは日本人を含む東アジアに住む人びとは遺伝的にインスリン分泌能力が低く、皮下脂肪に蓄えることができる許容量が小さいため、外見上に肥満になることは少ないのです。つまりわたしたちは他の地域の人たちと違って、皮膚の下のタンクが小さいのです。そのため脂肪は皮下脂肪として蓄えることができないので、内臓脂肪として蓄えられてしまうことになります。そして、それが肝臓に流入し、脂肪肝となってしまいます。
脂肪肝に比べれば皮下脂肪は安全です。脂肪肝は肝臓細胞を死に追いやり、肝臓を線維化して、肝硬変が進み、肝臓の機能が失われ、発がんする可能性が高まります。さらに、脂肪肝は腎臓にも甚大な影響を与え、慢性腎疾患の原因となります。
日本はすでに危険状態
日本ではすでに糖尿病が疑われる人は1100万人にのぼります。さらに慢性腎臓病の推定患者数は1300万人以上ともいわれ、MASLD(代謝不全関連脂肪性肝疾患)推定患者数は3000万人を超え、すでに4人に1人に及んでいるのです。MASLD由来の肝がんはこの10年で倍増したといいます。
これは異常事態と言わなければならない状況です。さらに世界ではこの10数年、超加工食品の規制が急速に進んでいるのですが、日本では政府はまったく動いていません。「日本では肥満など増えていないから問題ない」という認識のまま、規制は進んでいません。しかし、それは外見からは見えない「隠れた肥満」であり、実際には、多くの人が肝臓や腎臓に問題を抱えています。でも、それはその人の「生活習慣病」であるとして、自己責任にされ、人びとは分断されて、規制の実現に向けた動きになっていないのです。
日本ではどれくらい食べている?
この超加工食品を日本ではどれくらい食べているのでしょうか? すでに欧米では6割から7割を占めていると言われています。日本で東京大学の研究で調査が行われました。そのデータによると、日本では摂取カロリーの3割から5割が超加工食品となっています。すでにかなりの量を取っていることがわかります。
今、世界ではこの超加工食品を規制する動きが本格化しており、特に子どもたちへの広告が禁止されたり、学校給食での利用が禁止されたりしています。そしてラテンアメリカを筆頭に多くの国が砂糖税を採用し、人工甘味料や多すぎるカロリーなどを含む食品への表示義務制度が始まっています。しかし、日本ではそのような規制は残念ながら一切ありません。
そればかりか、日本では、最近、超加工食品を「健康にいい栄養素がバランス良く含まれる完全栄養食」などという広告文句や機能性食品として宣伝することが、頻繁になっています。世界が規制する超加工食品は日本では毎日大セールになっていると言わざるをえません。これからの若い世代は危険を知らずに、こうした食品をどんどん食べてしまうのではないか、と大変強い懸念を持たざるをえません。
若い頃は多少の内臓脂肪があっても、新陳代謝が活発なので、肝臓に影響を与えること少なく、問題を感じにくいかもしれませんが、同じ食生活を続けていけば、歳を取るに従って、それは確実に肝臓や腎臓などの機能を損なっていくことでしょう。むしろ、日本こそ、この超加工食品が大問題になる国と言わざるを得ないのではないかと思います。
日本で超加工食品を避ける方法
食品表示の例
日本では超加工食品に対する食品表示義務がありません。そのため、消費者が問題ある食品であることを知ることは容易ではないのですが、方法はあります。
生の材料から料理をすればもちろん、避けられますが、どうしてもすぐ食べられる食品を買わざるをえない時に、超加工食品を避ける方法があります。その食品の原材料名の表示で「/(スラッシュ)」を探します(右の例では赤く表示しました)。このスラッシュの後に、表示されるのが食品添加物です。ここにたくさんの添加物が並んでいれば、それは超加工食品の可能性が極めて高いと言うことができます。ただし、超加工食品ではない、たとえば伝統的な豆腐であっても、豆腐を作るにがりは添加物扱いになりますので、このスラッシュの後に「凝固剤(粗製海水塩化マグネシウム[にがり])」などと書かれます。にがりは自然な海水から作ったものであれば、まったく問題ある添加物ではないので、このスラッシュの後に来るものはすべてが悪いものであるということではありません。しかし、やはりたくさんの添加物が続く食品は避けるべきでしょう。
また、果糖ブドウ糖液糖(異性化糖)は食料添加物ではなく、原材料に分類されるので、注意が必要です。また、食品添加物の中に人工甘味料があれば、それは表示されますので、それが入っているものは避けるべきです。問題ある人工甘味料の名前(アスパルテーム、スクラロース、アセスルファムK)は覚えておくことをお薦めします。
異性化糖や人工甘味料は、ソフトドリンク、カロリーゼロをうたったアルコール、めんつゆやインスタントラーメンなど日本ではとても多くの食品に使われています。一方、米国では医学会などが異性化糖がもたらす健康被害を2004年頃から告発したことを受けて、その利用が急激に減っています。人工甘味料も健康懸念などから消費者が忌避したため、天然甘味料の使用に変わりつつあります。それに対して、日本では異性化糖の使用は高止まりしており、さらに「糖質ゼロ」「カロリーオフ」を売り文句に人工甘味料の利用が増えているのが実態です。日本の状況は実に由々しき状態にあると言えます。
遺伝子組み換え作物から作られる食品添加物
食品添加物は何から作られているでしょうか? その多くは遺伝子組み換え作物から作られています。調味料(MSG・アミノ酸等)、増粘剤(加工でん粉)、デキストリン、乳化剤(大豆レシチン)、甘味料、酸味料、ビタミン類(ビタミンC、Eなど)、増粘多糖類、クエン酸/クエン酸Na、キモシン(凝乳酵素)、各種加工用酵素(アミラーゼ、プロテアーゼなど)などの場合、遺伝子組み換えトウモロコシや大豆を原料として精製されたり、遺伝子組み換え微生物を用いて工業的に生産されたりしているケースが極めて多いのが実態です。
実際にこうしたものがたくさん超加工食品には使われています。遺伝子組み換え原料から作られていたら、当然、それは表示されるだろう、と思うかもしれませんが、食品添加物に関しては日本政府は食品表示義務を免除しており、表示義務はありません。加工プロセスの中で遺伝子の検出が困難になるから、表示義務は課せないのだと消費者庁は説明しています。ですので、遺伝子組み換え原料をいっぱい使っている超加工食品には、そのことが何も書かれていないのです。
世界は超加工食品の規制に動く
世界で超加工食品の規制の動きはラテンアメリカから始まりました。ブラジル・サンパウロ大学のカルロス・モンテイロ教授が食品の新たな分類方法として加工度によって食品を分類するNOVA分類を提唱し、超加工食品の規制の必要性を訴えました。チリは2012年に塩分、糖分などの警告表示の義務化を決定し、子ども向けの超加工食品の広告を禁止しました。メキシコは2014年に砂糖税を導入して世界的な注目を集め、この砂糖税はその後世界50カ国以上が導入するに至っています。2026年からはメキシコは人工甘味料に対しても規制をスタートしています。アジア、アフリカでも学校給食から超加工食品を排除する動きが進み、米国でも学校給食での超加工食品を使用禁止する州が続出しています。ヨーロッパでも学校給食からの排除と広告規制が進んでいます。
この動きは国連でも顕著です。FAO(国連食料農業機関)は2019年にNOVA分類を採用し、超加工食品の規制に向けて動き出しています。UNICEFでは子どもたちを超加工食品のマーケティングから守るため、広告の法的規制を実現するためのツールキットを公開し、各国の市民が規制を進めるための活動を支援していますし、WHOはガイドラインを近日中に発表し、その規制に向けた具体策を進めつつあります。
食品表示は今、変わる時!
超加工食品に対する食品表示義務が世界で進む中、超加工食品で使われる割合の大きな遺伝子組み換え原料についても、世界の姿勢は大きく変わりつつあります。これまで日本だけでなく、米国や韓国でも加工過程の中で、遺伝子が検出できなくなってしまう場合は、遺伝子組み換え原料を使っていても食品表示義務を免除するとしていました。
韓国は2026年、醤油や食用油、異性化糖などに使われる遺伝子組み換え原料の表示を義務化することを決定しました(醤油は2026年12月末、食用油や糖類などは2027年12月末から)。
米国では2026年8月3日に裁判所が米国政府の遺伝子組み換え食品表示の見直しを命じる判決を出しています。そこで、検出できないから表示義務を課さなくていい、という言い訳は許されないことが明言されています。その結果、超加工食品で使われる遺伝子組み換え原料も表示しなければならないことになります。2028年1月1日までに米国政府はこうした抜本的な食品表示義務を作り直すことが求められています。
他の国、たとえばEU(2004年から)、台湾(2015年から)はすでに以前からすでに表示義務を課しており、中国でも油の表示は2002年から義務化されており、この中では、日本だけが表示義務を課していない状態になっています。「加工してしまえばDNAは検出できないから表示しなくていい」という言い訳は今や通用しない時代に入っています。日本が取り残されているのです。
日本の食品表示は世界とは逆コース
世界では超加工食品への規制が始まり、その中で重要な位置を占める遺伝子組み換え食品表示もより厳しくなっているのに対して、日本だけはその真逆に進んでいます。
日本は遺伝子組み換え作物の世界のトップクラスの輸入国ですが、それは超加工食品の原料や家畜の飼料にほとんどが使われます。ほとんどのケースで日本では遺伝子組み換え原料が使われていても表示義務は免除されています。唯一、頼りにできるのが、一切そのような原料を使わない「遺伝子組換えでない」、Non-GMOという表示でしたが、その表示も2023年4月からほとんどできなくされてしまいました。遺伝子組み換え表示義務は相変わらず緩いままで、それを使わずに食品を作ることで消費者に遺伝子組み換え原料を使わないものを選んでもらえるための表示を利用困難にしてしまったのです。このようなケースは世界の動向から見る時、真逆の方向であるといわざるをえません。
食品添加物を使わない「無添加」表示も2024年4月から規制が厳しくなり、表示することが難しくなっています。
世界とはまったく真逆で、超加工食品企業を利する表示へと日本政府は変えてしまっているのです。
農家がコカ・コーラと政府を変えた!(フィリピン・ネグロス)
超加工食品が私たちの食の大部分を覆うようになりつつあります。超加工食品は従来の農業を大きく変えてしまいます。それまでは農家が作る農作物が私たちの食となってきました。しかし、超加工食品においては食は工場で作られるものとなり、農作物はその工場の原料にしかなりません。農家は工場の原料生産者に格下げされてしまいます。個性を失った農作物は世界でもっとも安く作るものが選ばれ、農家の所得は切り詰められます。そうなればグローバルな競争を強いられる中で、多くの農家が離農を余儀なくされるでしょう。
ソフトドリンクを作る食品企業は従来のサトウキビから作った砂糖を工業的に作った異性化糖に置き換え、費用を安く、利益を最大にしようとします。買い手を失ったサトウキビ価格は暴落してしまいます。しかし、フィリピン・ネグロス島のサトウキビ農家はコカ・コーラの工場を包囲して、異性化糖の採用に抗議し、従来の砂糖に戻すことを要求します。この動きはフィリピン中から支持され、コカ・コーラはその要求を呑み、異性化糖の使用を止めました。
この抗議行動によって、サトウキビ農家は自分たちの農業を守っただけでなく、消費者の健康を守ることにも貴重な貢献をしたことになります。この後、フィリピン政府は異性化糖に対して、砂糖の倍の税金をかけることを決めました。
残念ながら日本で売られているコカ・コーラには異性化糖が使われています。コカ・コーラ ゼロなどには人工甘味料が使われています。詳しくはコカ・コーラ製品情報をご覧ください。
食を選べない人たちを守る
超加工食品の消費が増える背景に、人びとが生きる余裕を失っていることがあります。極端なケースとして、もしホームレスになってしまえば、台所がなくなってしまいますから、すぐに食べられる超加工食品を食べるしかなくなってしまうでしょう。だから超加工食品を食べる人を責めることは何の役にも立ちません。どんな人でも安全な食を食べられる社会に変えていくことが重要だと考えます。
学校給食で超加工食品を使わないようにすることは、まずまっ先に実現しなければならないことです。たとえば、異性化糖が入ったタレやめんつゆを使った食品は学校給食で、現在も使われていると考えられます。そうしたもの含めて、超加工食品を学校給食で使わせないようにしていくことが何より重要です。
ブラジルでは新型コロナウイルスが蔓延した2021年、失業が広がり、ホームレスや貧困層の人たちの栄養状況が厳しい状況になりましたが、ホームレス労働運動がアグロエコロジーを実践する小規模農家が作った食材を使った無償の食事を提供する「連帯キッチン(Cozinha Solidária)」というプロジェクトを開始しました。
市民から寄付を募り、安全な食材でホームレスや貧困層で十分に食べられない人たちに食がサンパウロ市で提供されました。新型コロナウイルスが落ち着いた後も、このプロジェクトはブラジルの主要都市に広がっていき、ブラジル政府がこのプロジェクトを支援することを決定しました。食べる人びとの健康を守ることは同時にその食材を作る農家をも守ることにつながります。
リアルフードを求める連携を
上の図は世界の超加工食品企業とそれを支える企業群の関わりを視覚化したものです。超加工食品企業は種子・農薬企業、流通企業、穀物メジャー、広告企業など多くの巨大企業群によって支えられていることがわかると思います。この大きな力によって、政府の政策や市場に大きな力を及ぼしています。消費者の心理もコントロールして、超加工食品を知らない間に摂取させるようにしむけられています。
日本政府の政策もまた、こうした企業群によって大きく左右されていることは明らかです。農水省の2027年度の概算要求ではフードテック推進の予算が926億6400万円となっており、昨年とは比較にならない増額になっています。一方、有機農家への支払い予算は今年度で28億円。フードテックのための予算の33分の1しかありません。この額はEUと比べても桁違いに低いのです。33倍もフェイクフードにつぎ込み、リアルフードを作る農業にはほとんどお金を使わないという姿勢が見て取れます。こんな予算ではわたしたちの食は今以上に超加工食品のフェイクフードだらけになっていってしまうでしょう。こんな予算を許していいのでしょうか?
超加工食品を代表とするフェイクフードの消費と生産が増えれば増えるほど、人びとの健康は傷つき、農家の存在は切り売られていきます。健康被害を抱えた人びとは人知れず医療費の増額に恐れながらひっそり暮らさざるを得なくなっていくでしょう。
しかし、この超加工食品、フェイクフードが私たちの社会に何をもたらしているか、人びとがますますその事実を知っていき、そして、フェイクフードではない食、つまりリアルフードを守る連携を作り出すことができれば、この流れを変えることができるはずです。タネ採りから始まり、生産・加工・流通・消費にわたってリアルフードの人びとの連携を作ることが鍵になります。
リアルフードで人と人をつなぐ目印として、OKシードマークを普及させていきたいと思います。










