【たねまきコラム】第3回全国オーガニック給食フォーラムin小山を終えて

学校給食

「全国オーガニック給食フォーラム」とは、学校給食の有機化に関して、地域及び全国の関係者の情報交換や議論を通じ、全国的な機運の醸成を図るとともに、新たな先進地域の創出や持続可能な農業への転換を促進するため、隔年で開催しているものです。

第3回となる今回は「こどもたちの未来をひらくオーガニック給食 えがおでつなぐ食・農・環境・まちづくり」をテーマに、栃木県小山市で開催されました。小山市は2023(令和5)年3月に県内初のオーガニックビレッジを宣言し、生産者から消費者までが一体となった有機農産物等の生産拡大や学校給食への導入などに取り組んでいます。

全国オーガニック給食フォーラムin小山実務者会議メンバーであり、分科会運営委員としてこのフォーラムを裏方で支えたNPO法人メダカのがっこう理事長の中村陽子さんからの報告をたねまきコラムでお届けします。


 第3回全国オーガニック給食フォーラムin小山が、2026年7月25-26日に開催されました。

 2022年以来、3回のフォーラム、2回の研修会を経て見えてきた流れを整理しながら、報告をしてみたいと思います。

 今回のフォーラムで私が最も心に残ったのは、「有機農業を広げること」が目的ではなく、その先にある「生命を大切にする社会」をどう築くか、という問いでした。その視点で読み進めていただければ幸いです。

この4年間で見えてきたこと

 2022年の第1回フォーラムでは、国の「みどりの食料システム戦略」が示され、有機農産物の出口として学校給食という公共調達の大きな可能性が共有されました。それを受け、多くの自治体の首長が「今がその時だ」と判断し、オーガニック給食へと舵を切りました。同時に、その給食を支える生産基盤づくりとして、オーガニックビレッジ宣言に踏み出す自治体も数多く生まれました。

 2024年の第2回フォーラムでは、その実現の道筋がより具体的に示されました。首長とJA組合長が協力すれば、組合員や地域の支援者が動きます。これまで慣行農業を担ってきた農家さんが本気で有機農業の技術を学び、取り組めば、米だけでなく野菜や畜産まで地域で育て、学校給食に必要な食材を100%有機で供給することも決して夢ではない。その実践への最短コースが共有されました。

 そして2026年の第3回フォーラムでは、その先の未来が語られました。私たちの活動は、給食を有機にすることや、有機農業を広げること自体が最終目的ではありません。その先にあるのは、気候変動の時代に地域の農業をどう未来へつないでいくのか、生きものと共に豊かな農地をどう次世代へ引き継いでいくのかという、より大きな問いです。

小山市開催で感じたこと

 第2回以降は、それぞれ有機農業や給食の先進事例を持つ自治体が選ばれ、開催をすることで、更に地元を巻き込んで、道を拓く展開が見られます。第3回小山市においても、オープニングセレモニーの開会がJA小山の渡邉文雄組合長、主催の浅野正富市長のあいさつ、衆参の国会議員、農林省福島一審議官、全国農業会議所・栃木県農業会議会 國井正幸会長、栃木県中村千浩教育長、栃木県議会議員、小山市議会議長、など 自治体や県を動かす地固めをしている人選だと思いました。

 今回も、文部科学省と、農林水産省の後援がとれ、文部科学省はビデオメッセージでの参加となりました。学校給食を所管する省庁として、今後さらに現場との連携が深まることを期待しています。農林水産省からは、葛原祐介有機農業推進調査官が農林水産省の取り組みについて報告がありました。

 政治つながりで少し脱線しますが、この2日間、「オーガニック給食を全国に実現する議員連盟」の共同代表をされていた川田龍平氏が会場に来てくれていました。農林水産省のある官僚の方のお話によると、業界からのお金が動く政策の推進ですと働く議員が出てくるのですが、オーガニック給食や有機農業は推進しても全くお金にならないので本気になってくれる議員が出てこないのだそうです。川田龍平さんは前回の選挙で落選してしまいましたが、彼のように、利益だけでは動かない政策を支える政治家の存在の大切さを、改めて考えさせられました。

基調報告・基調講演から見えた未来

 フォーラムトップは基調報告「ここまで進んだオーガニック給食の取り組み」で、遠藤菜美恵さん、杉山敦子さん、野々山理恵子さんがこの4年の経過を発表しました。「オーガニック給食マップ」の存在は、全国各自治体のオーガニック給食の進捗状況を日本地図に落とし込み、どこでどんな方法で、どんな方たちが始め、形にしていったのかが、みんなに分かるプラットフォームとして貴重です。
 ひとつの食材でも有機になれば登録でき、励みになります。発表時点で328市町村ですが、全国約1,700自治体ですので、これからです。まずはお米から、調味料から、基本野菜1種類、そのまた一部からでいいので、みんなで力を合わせましょう。

 基調講演は2つあり、1つ目は、「日本農業の未来は有機農業にあり」と題して、民間稲作研究所の舘野廣幸理事長でした。舘野さんは、農家の長男に生まれ、始めは農薬を使っていましたが、足尾銅山の鉱毒が自然を壊し人を殺したと訴えて問題解決に奔走した田中正造に出合い、自分も生命を尊重する農業をしたいと、有機農業を始めた方です。有機農業とは生きものを味方にする農業で、舘野さんは草を秋から冬から春に思い切り生やし、稲を育てているときには草が生えないような土づくりをしています。彼は、「カエルはオタマジャクシの時は草取りし、カエルになると害虫を食べてくれるので、私の仕事はカエルが住みやすい環境を整え自然の生態系を邪魔しないことです」と言っています。そこで彼の農場は、「舘野かえる農場」という名前です。彼の自然感、生命観は筋金入りで、分科会1の時にバトルになるのですが、感動したので後で報告します。

 基調講演の2つ目は、「食・農・環境・まちづくりと世界の潮流」と題して国学院大学客員教授、NPO法人「環境・持続社会」研究センター代表理事の古沢広祐氏でした。今世界は、気候変動、生物多様性の喪失、食糧危機、など複数の危機が連鎖する複合危機(ポリクライシス)の時代に入ったこと。この事態に必要なのは「効率・成長の実を追求する社会」から「生命・循環を基礎とする社会」への移行であること。人間は大地・自然生態系の中で生かされている存在であり、「内なる環境」(体内環境・健康)と「外なる環境」(自然環境・地球環境)は、「ワンヘルス」や「プラネタリー・ヘルス・ダイエット」の視点に繋がっていること。生きている地球の存続も、生かされている人間の存続も、アグロエコロジー的転換、オーガニック給食の展開、地域循環型社会の実現にかかっていること。地球の複合的危機だからこそ、地球を高い視点からとらえた本当の解決策が、世界の潮流のようです。

韓国の取り組みから学ぶこと

 次に韓国からの報告として、韓国でのオーガニック無償給食の取り組みが、韓国草の根熟の田中博代表、希望の食べものネットワークのパクミジン共同代表、京畿道ウ新環境農業連合のキムジュホン青年委員長、コチャクドク事務局からありました。

 韓国では現在小中高等学校の100%で、米も野菜もすべて無農薬以上の給食が無償で提供されています。契約栽培で作物の価格と買取りが決まっているので、有機農家も増えています。農家が困る問題である収穫時期のズレや、収穫量の変動も、学校給食支援センターという集荷、カット、パック、保冷管理できて、出荷する流通センターが解決しています。日本でオーガニック給食にするときの課題が、韓国ではすべて解決されています。
知りたいのはなぜできたかなのですが、基本は市民運動の選挙による政権交代であり、無償化も日本では福祉政策になるのですが、韓国では義務教育で給食は教材であり、教科書の無償配布と同じ意味なのです。子どもの健康と次世代の国民の育成のための投資ととらえ、最高に良い給食を提供するという考え方に立っています。
 とてもうらやましい限りですが、日本ではなぜか国レベルでなく自治体レベルで実現していく方が堅実でよい気がします。しかし、次世代の国民を立派に育成するための投資、という考え方は、浸透させたいと思いました。

 事例発表の最後、「エディブル・スクールヤードで変わる学校風土」は、(一財)エディブル・スクール・ジャパンの堀口博子代表、風景者の菰田理香さん、小山市立豊田中学校の柏崎清美PTA会長、木こり農園の市川哲也園長、the cosmic farmの篠崎尊久代表が自分のところで行っている農業体験の発表がありました。ただ良いものを給食で提供するだけでは伝わらない、土と触れ、作物を育て、味わい、五感で感じたことを言葉で表現するところまでゆっくり時間を使って導くことで、大事な感性が育つのだと思いました。

分科会1「有機農法」の議論

 ここから、8つの分科会に移ります。
分科会1【有機農法】は、「有機農法の現実と未来~いきものと共に乗り越える気候変動~で座長は舘野廣幸さん 
分科会2【給食体制】は、「有機農産物や地場農産物を本格的に使用する学校給食の体制について考える」で座長はいすみ市の鮫田晋さん 
分科会3【エディブル・スクールヤード】は、「子どもたちと食・農・環境の学びをどうつくる?で座長はエディブル・スクールヤード・ジャパンの堀口博子さん 
分科会4【意識と政策】は「現場の意識を政策のチカラに~オーガニック給食がひらく「食と農」の架け橋~ 
分科会5【生物多様性】は、「生物多様性を育む農業国際会議(ICEBA)7.5で座長はNPO法人ラムサール・ネットワーク日本の呉地正行理事 
分科会6【韓国】「韓国オーガニック学校給食20年の成果~日本の仕組みに生かすためには~で座長は韓国草の根熟の田中博さん 
分科会7【アグロエコロジー】は「アグロエコロジーが目指すもの~こどもたちが幸せに暮らせる社会~で座長は吉田太郎さん 
分科会8【生産・流通・消費】は「地域の未来がひらくオーガニック給食の”その先“~生産・流通・消費の拡大~で座長は兵庫県豊岡市ウノトリ共生課 宮垣 均課長。

それぞれの分科会の構成メンバーは農家、自治体の首長 担当者、校長、JA組合長、市民団体の代表、というそうそうたるメンバーで実行性のある中身の濃い議論がなされたようです。

ですが、私は分科会1の担当だったため、この報告をします。

小松先生

 今回の分科会では、明治大学研究・知財戦略機構 環境法センター専門研究員の小松英司氏から、「気候変動下における適応と自然共生型有機農業~ワイズな農業、気候スマート農業の可能性~と題して、話題提供がありました。
 彼は、気温上昇や、地面の水分量の変化などのデータを示し、今加速度的に起きている気候変動を見える化し、それに対する有効な対策を40項目以上上げ、その効果を数量化しています。結論として、2030年初頭までに起こる水不足と食糧危機に適応する農業は、土を健全化する有機農業しかありません。慣行農業は気候変動でできなくなるからです。欧州委員会は、公平で、健康的で、環境にやさしい食のシステムを構築するために、2030年までに欧州の全農地の25%を有機農業とするとの目標を持っています。土づくりの大切さを分かっている有機農家の方には自明のことと思いますが、土壌の健全化を向上する手法が列挙され整理されており、これを実行することで、土の健全化が早く達成するので、一般の農家の方にはとても有意義な研究だと思いました。最後に有機農業への転換を推進するため、欧州での収益モデルが紹介され、炭素固定クレジットを導入すると、作物の2倍くらいの収益が得られるとのことです。

農家の発表

 次に小山市の有機給食を支えている農家の方たちの発表がありましたが、土建業者からの参入、有機農家の農業体験への貢献、農家の長男に生まれ、紆余曲折を経て舘野さんの数十年間分の栽培技術を身に着け、右腕となるであろう優秀な有機米農家の発表がありました。幅ひろい方たちが有機農業に移行していることは、小山市の手厚い有機農業推進政策の賜物だと思います。

カーボンクレジットの議論

 大変面白いと思ったので、最後に分科会1で起こったカーボンクレジットに対するバトルを紹介します。分科会1に参加していた農家から、CO2を悪者にしたり、取引するのに疑問を感じるが、舘野さんの見解を聞きたいという質問が出ました。舘野さんは、炭素は生命の体を作る主原料であり、草はCO2が吸って成長するので、自分はカーボンクレジットはやらない、と答えました。小松先生が有機農業への移行を進めるための政策であることや、受け入れやすい考え方をいくつか提案してくれましたが、舘野さんは、炭素を取引の道具にすること、炭素が市場経済に巻き込まれること自体が、命が取引に使われることになり、認められないのでした、私も副座長として、それでも有機農業に移行する時の収入アップにつながれば、有機農業推進になるのでは、とまとめようとしたのですが、やはり、彼にとって炭素は命そのものと同じ尊厳がある存在であることが分かり、バトルは止まりました。
 この議論は翌日の分科会報告の時間に再燃し、それを受けて、実行委員長の浅野市長は、「えがおでつなぐ食・農・環境・まちづくり」宣言の最終案から、脱炭素という言葉を取り除き、書き直すことを約束したうえで、参加者全員の承認を得たのでした。

 欧州が有機農業推進策として進めているカーボンクレジット、日本もこの後に続き、有機農家の収入アップを実現しようと考えていた私たちですが、炭素を命そのものと意識したとき、市場経済に入れることを躊躇する有機の魂に感応した人が浅野市長はじめ参加者の中にかなりいたと思います。日本人が古くから持ってきた自然感や生命観に通じるものを感じました。

 フォーラム参加者は、会場約750名、オンライン約650名で約1,400名でしたが、分科会で1日目が終わり、夜の交流会には定員いっぱいの250名ほどの方が参加され、活発な交流がありました。

エクスカーションで感じたこと

 2日目は、早朝からエクスカーションが2か所で行われ、舘野かえる農場で「かえるが語る田んぼの未来~自然と共生する有機稲作を訪ねて~」が、蒼水ファームでは、「益虫、害虫、ただの虫~学校給食用米の栽培圃場での生きもの調査~」が、NPO法人リザネットの指導で行われました。私は、蒼水ファームの生きもの調査に参加したのですが、直径30㎝の虫取り網を20回田んぼの上で左右に振り、虫を掬い取る調査を体験し、とてもたくさんの虫たちが生きていることが分かりました。害虫3種(ツマグロヨコバイ、ヒメトビウンカ、イナゴ) 益虫4種(アシナガグモ、クサカゲロウ、アジアイトトンボ、ドヨウオニグモ) ただの虫4種(マメハンミョウ、ショウリョウバッタ、ハエ類、ヒゲナガセチバエ)です。実際に体験することは、本当に心に残りますね。73歳のわたしでもこんなにうれしいのですから、この田んぼのお米お食べている子どもたちが体験したら、どれほど素晴らしいことになるかと思いました。

次回は亀岡市へ

クロージングセレモニーでは、今回の開催地である小山市の浅野市長から、次回2028年の開催地である亀岡市の桂川市長に、バトンが渡されました。

これで報告を終わります。 

メダカのがっこう 中村陽子

資料集のご案内

今回の『第3回全国オーガニック給食フォーラムin小山』資料集は、メダカのがっこうが編集・制作を担当しました。

OKシード会員の皆さまには特別価格で頒布いたします。

  • 1冊200円 
  • 送料:5冊まで200円、6冊以上792円 (関東、南東北、信越、北陸)あとは実費
  • 到着後、納品書記載の振込先へお振込みください。 

勉強会や自治体への説明資料としてもご活用いただけます。
お申し込みはメールでお願いいたします。

申込み先:npomedaka.tokyou★gmail.com
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お名前・ご住所・電話番号・ご希望冊数をご記入ください。

※オンラインショップ経由では1冊300円となります。

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