来年、2025年春から秋田県はこれまでの「あきたこまち」の種籾は一部を除いて供給せず、重イオンビーム放射線によって破壊した遺伝子を持つ「あきたこまちR」に全量切り替えするとしています。
しかし、この「あきたこまちR」は、安全性を裏付ける試験がなされておらず、収量が減る、病気になりやすい、従来の「あきたこまち」と区別できない形で流通されることにされている、本来の有機認証の対象にはしてはならないのに、農水省は有機認証できるとしているなど、多くの問題がすでに指摘されています。
来春から栽培が始まってしまうという状況の中で、特に、マンガンの少ない水田ではごま葉枯れ病が発生しやすく、出穂期に高温が続くと、収穫が2〜3割減る可能性も指摘されており、これは実際に栽培される農家の方たちには切実な問題となることが懸念されます。
そこで、被害が出てからでは遅いということもあり、秋田県に責任ある対応を求めるために、全国でこの「あきたこまちR」問題に関心を寄せる市民が作った2025 年「あきたこまちR」問題全国ネットワークでは4つの項目からなる質問状を秋田県知事、農林水産部長宛てに12月3日に提出しました¹。1月15日までの回答を求めています(質問状は下記をご参照ください)。
また合わせて、8月後半に開始したオンライン署名“わたしは、遺伝子を改変された「あきたこまちR」を食べたくありません!” に寄せられた署名6872通、紙による署名351筆、合計7223筆を秋田県知事に送付しました(農水省・消費者庁あてには9月30日に第1次提出済み。【NEWS!!】「あきたこまちR」問題院内集会 署名提出と7つの問題を指摘参照)。
この「あきたこまちR」「コシヒカリ環1号」には共通するさまざまな問題があります。その要点については「あきたこまちR」、重イオンビーム放射線育種に関するFAQをご覧ください。
わたしたちは秋田県が全量切り替えの方針を撤回し、「あきたこまち」の種籾の供給を一刻も早く再開することを切に求めています。そして、「あきたこまちR」の生産によって被害を受ける農家が出ないよう責任ある対処を秋田県に求めていきます。オンライン署名は今後も継続してまいります。
ぜひ、この問題へのご注目をよろしくお願いいたします。
OKシードプロジェクト
質問状全文
秋田県 農林水産部長 殿
「あきたこまちR」に関する質問について
冠省
私たちは、40 年にわたり人気を保ち続けてきた従来品種「あきたこまち」を食べ続けたい、つくり続けたいという声を受けて、今年 4 月、貴県に対し「あきたこまちR」への全量切替えに反対する要求と質問を行い、5 月末までに回答をいただきました。その節はありがとうございました。
しかしながら、農林水産省の手続きや見解の通りなどとの内実のある回答ではありませんでしたので、その後、私たちは消費者庁及び農林水産省にじかに質問等を行いました。
6月14日には院内集会において、私たちは「2025年『あきたこまちR』問題全国ネットワーク」(事務局 OK シードプロジェクト)として、流通の末端にいる消費者が表示を見て品種を選べないという「不適切で不当な表示」になることに対し、それを未然に防ぐ措置を消費者庁に要請しました(「要請書」は全国42 団体の市民消費者等の連名)。
農林水産省に対しては、「品種群設定」の手続きとされている農産物検査法下の規定はもっぱら目視による検査が行われていた時代のものであり、DNA 鑑定も検査に取り入れられている現在では時代遅れのものであるので、明らかに品種特性が異なる(カドミウム低吸収性で特許も取得している)品種を「品種群」と設定することは妥当ではないことを指摘しました。
また、カドミウム低吸収性品種はマンガンの吸収も抑えられますが、低マンガン土壌の水田での栽培では、ゴマ葉枯病の発生がわかっていますが、それだけでなく、中国の論文では、同等の OsNramp5 が欠失した稲では、低マンガン土壌で出穂期に高温になると収量が 2~3 割低下することが指摘されていることから、その点について検証が行われたのかどうかを質問しました。そしてまた、多くの農家はそうした新品種の試験栽培も実施せずに切り替えられることになるので、それに伴う収量低下等の責任は農家自身が負うことは不合理であることを指摘しました。
さらに、9月30日の院内集会においては、表示問題でも特に「有機JAS」認証を容認する問題について、表示(景品表示法)の観点からと、コーデックス有機ガイドライン(国際標準)との整合性の観点から、消費者庁及び農林水産省と意見交換を行いました。
有機農業は、世界共通の農業運動となっており、その有機農業の原則がコーデックス有機ガイドラインにも反映されています。有機農業は、自然の摂理を逸脱しない農業を旨としており、現代のテクノロジーで生命を人為で操作し遺伝子を改変させる「遺伝子操作」技術を禁止しています。放射線育種のうち、すでにガンマ線利用のものは国は 2022 年度までにすべて終了させていますが、近年使われるようになった重イオンビーム育種は明らかにコーデックス有機ガイドラインの解釈からみても禁止技術とすべきものであることを指摘しました。
これらの院内集会等を通して「あきたこまちR」の導入・全面切替えのもつ問題点はいっそう明らかになっています。同時に、これらの問題を知った人々のあいだで、従来品種「あきたこまち」を食べ続けたい、つくり続けたいという声もさらに大きくなってきました。
そこで、私たちは、オンライン署名「わたしは、遺伝子を改変された『あきたこまちR』を食べたくありません!」を募ったところ、大きな反響がありました。2024年8月17日から開始し、併せて紙による署名も行い、現時点で6800筆を超えております。
まずは、この署名を提出いたします(署名簿は別途に後日送付)。これらの署名は氷山の一角です。これには、署名した人からの短文のメッセージも付けられています。貴県におかれましは、これらの署名に込められた「あきたこまち」を食べ続けたい、「あきたこまちR」は食べたくないという声とその思いを汲み取っていただき、今後の政策に活かせていただきたいと切に希望します。
次に、私たちは、貴県に対し、上述の院内集会等を踏まえて、下記の質問したいと存じます。これにつきましては、2025 年 1 月 15 日までに文書にてご回答くださいますようお願いいたします。
2024年12月3日
2025年「あきたこまちR」問題全国ネットワーク
< 質 問 >
- 年明けから 2025 年産用の種もみの供給(販売)が始まります。全面切替えとのことですが、引き続き従来品種の「あきたこまち」の種もみを希望する農家には、県の関係機関が斡旋等を行うと伺っております。従来品種の種もみを入手する手順や手続きを教えてください。
- 新品種「あきたこまちR」を作付けるに当たって、水田土壌のカドミウム含有濃度及びマンガン濃度の計測が不可欠になると考えますが、そうした土壌の検査について、どのような体制で行うのか、費用負担も含めてその計画をお知らせください。
- 2025 年から初めて新品種「あきたこまちR」の栽培を始める農家が多数います。栽培マニュアルや指導通りに栽培したとしても、通常年(たとえば過去 3 年間平均等)との比較で収量低下や品質低下が起きる可能性があります。そうした被害が起きた場合、全面切替えを遂行する県は、どのように責任をもって対応するのか、お知らせください。
- 県内におけるカドミウム汚染による健康被害について、どのように把握されているか教えてください。また、その被害者および被害地域住民に対してこれまでどのような支援を行ってきたか、また今後、どのように支援を行う計画があるのか、お知らせください。
質問は以上ですが、最後に、貴県と私たちのような、従来品種の「あきたこまち」を食べ続けたい、生産しつづけたいという人々を交えた、話し合いの場をもつことを要望しておきたいと存じます。よろしくおねがいいたします。
お手数をおかけしますが、2025年1月15日までに、下記の連絡先までに回答を文書にて送付してくださいますようお願い申し上げます。
以上
(1) この質問状提出は3月29日「あきたこまちをどう守る」東京集会、集会決議を受けて、申し入れおよび質問状を4月末日に送ったことに続く、第2弾となります。